地域一体でのタビナカDXをすべき理由とは? NECが支援する観光地域づくりと成功事例を聞いた -トラベルボイスLIVEレポート(PR) 

NECソリューションイノベータ(NEC)はタビナカの観光事業者に「NECガイド予約支援サービス」を提供し、自社サイトでの直接販売を支援してきた。この数年は、地域全体での導入促進を強化。地域の取りまとめ役となる組織や事業者とともに、観光事業者のデジタル化を進め、地域一体となったタビナカDXと観光地域づくりの支援に取り組んでいる。

なぜNECは、地域一体でのデジタル化を提案するのか。2024年5月に開催された国際ツーリズムトレードショー(iTT)の特別版「トラベルボイスLIVE in iTT」で、同社の川村武人氏が語った地域一体でのデジタル化の必要性や、取り組み事例などをレポートする。

地域が主役の観光地域づくりへ

NECガイド予約支援サービスは、タビナカ事業者の販売サイトを構築し、観光事業者と観光客が直接つながることができる販売管理システムを運用できるサービスだ。NECが、このサービスを活用して地域一体となったタビナカDXの推進に力を入れる背景には、大きく2つの観点がある。

1つは、観光庁の方針に合致していること。「観光DX推進のあり方に関する検討会」の最終取りまとめ(2023年3月)で、2027年度末までにすべての登録DMOが、地域全体を包括する情報発信・予約・決済機能をシームレスに提供できるサイトを設置することをKPIとして設定している。

もう1つは「持論だが、観光によって地域が活性化し、文化、自然等の観光資源や経済が緩やかに成長し続ける持続可能な観光地経営をするためには、他の地域にはない独自の“売り”を提供することが必要」(川村氏)。その実現のために、地域のタビナカDXが不可欠であると考えている。

他の地域にはない独自の“売り”は、マーケティングでいうUSP(ユニークセリングプロポジション)にあたる。川村氏は「観光地経営では、観光客が求める価値に対し、地域が提供できる価値と他の地域では提供しにくいような価値が重なるところを提供していくこと」と整理。その要素はやはり、地域ならではの自然や文化、人。つまり、それらに触れる体験を提供している、地域の観光事業者の商品やサービスだ。

地域ならではの価値は、地域事業者

「私は、地域の事業者がデジタル化して自ら情報発信と直接販売をすることで、地域が活性化し、地域ならではの価値を提供できるようになると考えていた。しかし、中・大規模の事業者のデジタル化は進んでも、小規模事業者や個人事業者が取り残されると、特定の同じような場所に観光客が集中し、結果、観光客の満足度も下がる。地域の事業者が同じ仕組みを使ってデジタル化し、地域一体で展開することで地域独自の価値を提供していくことが大切だと学んだ」(川村氏)。

そこで、NECの観光地域づくり支援として、NECガイド予約支援サービスをプラットフォームとし、各事業者が面でつながる産業スキームの構築と、そのための支援を始めた。

具体的には、地域のとりまとめ役が運営する観光サイトに、各事業者のタビナカ商品を紹介。観光客が、地域が勧める観光情報や体験商品を知り、各事業者から直接、予約購入ができるようにする。川村氏は「観光事業者に限らず、地域住民向けのサービスを提供する事業者も参画している。そこが地域の魅力。こうした事業者も含め、地域と観光客をより強く、つなげていく」と話した。

NECガイド予約支援サービスで地域の事業者をつなげる新たな産業スキームを構築し、持続可能な観光まちづくりを実現

観光効果が地域に広がり始めた、ひがし北海道の事例

川村氏は、NECガイド予約支援サービスを活用し、地域が一体となった観光地域づくりに取り組んでいる事例を紹介した。

その一つ、ひがし北海道では、地域交通の阿寒バスが取りまとめ役となり、釧路観光コンベンション協会や釧路市の後押しを受けながら、地域の事業者にプラットフォームへの参加を促進。カヌー体験やキャンプ場、プライベートガイドツアーなど様々な事業者が、地域の体験商品を掲載している。

阿寒バスではOTAや旅行会社での販売をしていたが、3年前にNECガイド予約支援サービスを導入。順調に直接販売の件数を伸ばし、昨年末には直販比率が4割を超えた。川村氏はその理由を「SNSや空港バスの座席などのチラシに、商品販売ページへのリンクやQRコードを付与した。情報発信時に商品をしっかり見せて購入までできるシームレスな導線を入れ込めるようになったことが大きい。予約や販売データも手元に残るので、それらを活用してさらに集客を増やした」と説明した。

直接販売で得たデータは新たな発見をもたらし、地域観光の可能性を広げた。例えば、新商品の予約は直接販売が圧倒的に多い。「直接販売では顧客の反応をリアルタイムで見ながら改善ができる。販売のしやすさがデータで見えた」(川村氏)。

また、地域の事業者の商品をまとめて掲載することで、初日は観光バスツアー、翌日はカヌーとバーベキューといったように、地域への滞在時間が伸びた。日本語表記のサイトにも関わらず、インバウンド集客の効果もあり、日本マーケットではオフシーズンとなる冬季の集客に一役買ったという。

取りまとめ役の阿寒バスが地域の観光サイトを運営し、地域の経済循環を活性化。地域の事業者が主役になった観光地づくりへ

そして今、新たに取り組んでいるのが地元の飲食店×観光の取り組み。川村氏によると、釧路市は飲食店の数が多く、地域に根付く食文化の1つに炉端焼きがある。一見だと入店に勇気がいるが「地域が運営するサイトの強みで、観光客に売っていく」と川村氏。「観光と食は関係が深いはずなのに、これまでデジタル上で紐づいていなかった。観光客へのその地域ならではの食体験の提供に挑戦する取り組みでもある」と、その重要性を強調した。

そこで、現地の「炉端焼き学会」に加盟する13の飲食店と、ドリンクと料理をあわせた共通食事券を発売。飲食店の食体験を観光商品化するには、安定した在庫設定が課題であったが「13店舗で相互送客をすることで解決した」(川村氏)。地元客で混雑する18時頃の時間帯以外に予約枠を設けることで、観光客と飲食店の双方にメリットがある。

現在、ひがし北海道では、阿寒・釧路地域での取り組みがその他の地域にも伝播し、根室や網走、知床、帯広まで同様の取り組みが広がっている。ひがし北海道全体で送客しあい、面で地域観光を盛り上げるべく、各地域同士をつなげる調整が始まっているという。

NECソリューションイノベータ イノベーション推進本部 シニアプロフェッショナルの川村武人氏

地域や事業者に寄り添ったDXで稼ぐ地域を支援

川村氏は、地域の観光組織が取りまとめ役となっている事例として、茨城県の大洗観光協会の取り組みも紹介した。事業者がオンラインの直販によって稼ぎ、地域が自走できるよう、大洗観光協会が取りまとめをおこなっている。そのなかで、観光協会も手数料を収受し、それを観光情報サイトのプロモーションや商品企画、販売支援に生かしていくというもの。「観光組織が地域事業者のDXを支援し、経済を循環させ、地域全体で稼いでいくモデルに挑戦している」と説明する。

地域一体でのDXで最大の課題は、いかに多くの事業者がプラットフォームに参加するか。現実問題として、地域の事業者は規模やデジタル化に対するスキル、温度感も異なり、歩調を合わせるのは一筋縄ではいかない。

川村氏は、この課題への対応も、観光地域づくりにおいて重要だと話した。NECでは各地域での説明会の実施はもちろん、地域の事業者を訪問し、NECガイド支援サービスの使い方からオンライン販売にあう商品開発の相談にも対応。地域や事業者の状況に寄り添った支援を重視する。

大洗観光協会との取り組みでは、地域の事業者の規模やデジタルに対するスキル、温度感を踏まえて事業者を4つのタイプに分け、それぞれに沿ったアプローチをおこなうことで、地域の事業者の導入が円滑に進んでいるという。

また、NECでは日本観光振興協会(日観振)と包括連携協定を結び、デジタル技術やデータ活用はもちろん、地域の観光組織との連携強化や、観光人材のDXに向けた育成などにも取り組んでいることも説明した。

進行役を務めたトラベルボイス代表の鶴本浩司は、川村氏の講演のポイントとして、地域が優位に立てるポジションを作る大切さや、個別ではなく地域一体でのデジタル化とそのための地域や事業者に寄り添った支援の重要性をあげた。また、地域ならではの強みとなる付加価値の作り方については、「代替性がないことと希少性。この2つを要素として組み立てると、付加価値の高い商品になる」とアドバイスした。

当日の進行を務めた、トラベルボイス代表取締役社長の鶴本浩司

広告:NECソリューションイノベータ  

商品:NECガイド予約支援サービス 

本記事で紹介したNECガイド予約支援サービスでの販売の例:

記事:トラベルボイス企画部

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