ハワイ州観光局が仕掛ける新たな姉妹都市のカタチ、渋谷区とホノルル市が目指す「次世代の文化交流モデル」とは?(PR)

2024年5月31日、ハワイ州ホノルル市と東京都渋谷区が姉妹都市提携を締結した。世界を代表する二都市は、今後、観光や教育・スポーツをとおした相互交流から経済・産業活動の促進、知識・経験の共有まで、あらゆる分野で協働していく予定だ。この姉妹都市提携の実現に向けて様々な働きかけをおこなってきたのが、ハワイ州観光局日本支局(HTJ)。HTJのミツエ・ヴァーレイ局長に、その背景や経緯、姉妹都市交流でめざす未来について話を聞いた。

観光局の声がけで姉妹都市提携が実現

姉妹提携以前から、様々な面で接点を築いてきたハワイと渋谷区。その象徴的なもののひとつが、HTJが2015年から開催してきた消費者向けイベント「HAWAI'I EXPO(ハワイエキスポ)」だ。2017年までは毎年渋谷区で開催され、その後、他都市での開催やコロナ禍での中止を経て、2023年からはふたたび渋谷区で開催している。先ごろ2024年6月に開催されたHAWAI'I EXPOの会場で、この姉妹都市提携の締結式がおこなわれた。

この姉妹都市提携に向けて、HTJは積極的な働きかけをおこなってきた。その理由について、ヴァーレイ氏は「渋谷とホノルルは世界を代表する観光地であり、文化の発信地。またダイバーシティへの考え方、スタートアップを積極的に支援する施策など類似点も多く、さらに渋谷区の長谷部区長とホノルル市のリック・ブランジアーディ市長はいずれも民間企業出身であり、強いパッションを持つ人物である点も良く似ている。2人のリーダーの元で、親和性の高い両都市が姉妹都市提携を締結すれば、ユニークで活発な交流が生まれるのでは、と考えていた」と話す。

HAWAI'I EXPO2024会場の様子

また、渋谷区では、かねてからハロウィンになると人が押し寄せるという問題があり、「ハワイが取り組んできたオーバーツーリズム対策の知見を共有し、一緒に問題解決に取り組むことができるのでは」と考えたことも、姉妹都市提携を提案するきっかけになったという。

具体的に姉妹都市提携に向けて動き出したのは、2023年10月のこと。渋谷区長の旗振りで、渋谷区議会議員に対してHTJから直接、姉妹都市提携の意義をプレゼンテーションする機会を得た。その後、議員の賛同が得られ、姉妹都市提携に向けて大きく前進した。

締結式の翌週から交流事業がスタート

ヴァーレイ氏は、「今回の提携を含め、日本とハワイの間には州や郡、市、都道府県、市区町村など様々なレベルで33組の姉妹都市があるが、HTJから自治体に直接働きかけて調印が実現したのは初めてのケース」と明かす。

両都市がめざすのは、ヒト、モノ、コトが活発に行き交う「次世代の文化交流モデル」だ。姉妹都市提携を結んだものの具体的な交流に発展しないケースはよくあることだが、「今回の提携を、かたちだけで終わらせないために、入念に準備を整えてきた」(ヴァーレイ氏)という。

両都市が力を入れる分野のひとつが、教育・スポーツをとおした交流だ。締結直後の同年6月には早速、ハワイ大学の女子バスケットボール部の選手・コーチが渋谷区を訪れ、地元の小学生約80人に向けたワークショップや大学生チームとの交流試合を実施。また、2024年秋には渋谷区立の小中学校25校でHTJ監修のハワイアンメニューの給食を提供することも決まっており、7月にはそのモデルケースとして、渋谷区立のある中学校でフライドライスやロミロミサラダなどの給食を4日間にわたって提供した。その際、同校校長のリクエストにより、当初予定になかったハワイの中学生3人との交流も実現。全校生徒の前でハワイアンメニューの紹介や質問に応えたほか、授業や部活動への参加、同校の生徒の家にホームステイするなど、内容の濃い交流がおこなわれたという。

「学校側も非常に積極的に取り組まれ、同校からは、定期的にハワイの生徒を連れて来てほしいというリクエストも上がっている。一方で渋谷区では、区民23万人に向けたハワイ渡航支援の予算化、あるいは留学プロジェクトや少人数でも実施できる相互交流プロジェクトを立ち上げる案も出ていると聞いている。今後はますますおもしろい相互交流の試みが増えていくのではないか」とヴァーレイ氏も期待を寄せる。

教育やスポーツのほかにも、区議会と市議会、商工会議所、日米協会など、様々なレベルでの交流が検討されており、今年12月には渋谷区議会、観光協会、商工会議所などが訪問団を組織してホノルルを訪ねる予定だ。

ハワイ州観光局日本支局 局長 ミツエ・ヴァーレイ氏

ヒト、モノ、コトが行き交う関係に

姉妹都市としての長期的な関係構築を前提に、両都市では今後もさまざまな取り組みを構想している。その中でも特徴的なもののひとつが、お互いの都市に「リトルシブヤ」、「リトルホノルル」を作るアイデアだ。

ヴァーレイ氏によると、自分の街のブランドや飲食店、あるいはビジネスが集まる場所を相手の街に常設したいという考えが両都市の間にあるという。「例えば、双方の都市でメイドインハワイの商品が購入できる、渋谷発のブランドやアートに触れられる。あるいはスタートアップが海外進出の足掛かりにテストマーケティングをおこなう、ポップアップストアをオープンするなど、相互の貿易やビジネス、投資を支援しながら、カルチャーの発信もできる場所として話が進められている。うまくいけば、ローカルに夢を与える場にもなるのではないかと期待している」。

互いの都市の得意分野に関する知識や経験の共有も、姉妹都市として活性化させたいことのひとつだ。たとえば、スカイラインの延伸を目指すホノルル市としては、鉄道を絡めたまちづくりを渋谷から学ぶことに期待を寄せる。渋谷駅前は「100年に1度」と称される再開発の真っ最中だが、それ以外にも、駅と商業施設のコンプレックスの広がりや沿線のビジネス拠点への誘致、住宅地の開発などまちづくりの参考になる点は多い。実際にホノルル市の訪問団が渋谷を訪れた際は、電車に乗っての沿線視察もおこなわれている。

渋谷がハワイから学ぶべき分野には、オーバーツーリズムへの対策がある。ハワイでは2016年頃からオーバーツーリズムが社会問題化し、コロナ禍以降は「マラマハワイ(ハワイを思いやる心)」のスローガンと共に、現地の住民と旅行者が共存共栄するための法整備、仕組み作りに注力してきた。例えば、ビーチや国立公園の事前予約制の導入、ローカルの人はID提示で入場料金を無料とし、旅行者からは徴収する取り組みはその一例だ。観光地への人の流入と滞在時間をコントロールすることで地元住民の生活を守り、旅行者には一定の制限を課しながらも価値ある体験を提供することをめざしている。

「特に、現地のコミュニティを巻き込みながら法案を作ること、観光客がもたらす経済効果やレスポンシブルツーリズムの考え方を地元住人に認知してもらうためのノウハウは、渋谷区に限らず、多くの自治体とも共有できる部分だ。オーバーツーリズム対策に関しては他の自治体からもよく質問を受けているため、それぞれの都市との学び合いが今後も継続していくだろう」とヴァーレイ氏は話す。

ホノルルと渋谷がもたらす波及効果

長年に渡って積み上げられてきたハワイと日本の各自治体との姉妹都市提携を最大限に活かすため、2023年7月にはホノルルで姉妹都市サミットが開催された。姉妹都市が一堂に介することでハワイをきっかけとした自治体同士の横連携をつくることを目的としたもので、期間中は姉妹都市同士で新たな取り組みができないか話し合われたという。こうした流れの中、今回の渋谷区とホノルル市の姉妹都市提携が注目を集め、非常に多くのメディアで報じられたことは、ハワイと姉妹都市提携を結ぶ他の自治体にとっても良い刺激となったようだ。

HTJとしては、渋谷とホノルルの先進的な取り組みが他の姉妹都市のロールモデルになることも期待している。「渋谷区とホノルル市の活発な交流が刺激となり、ぜひうちもやりたい、という都市が出てくることを願っている。新しい取り組みのノウハウを知りたいということで現地視察団の形成につながれば、各都市間の旅行需要も創出でき、さらなる交流促進につながる。その意味でも渋谷とホノルルの提携がもたらす波及効果は非常に大きい」(ヴァーレイ氏)。

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記事:トラベルボイス企画部

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