出張・経費管理のコンカー社、申請の不正検知に高精度のAI活用、承認手続き不要な世界の実現へ

出張・経費管理クラウドサービスを提供するコンカー社は、AIサービスの展開を加速する。2025年春には、従業員の立替経費精算サービス「Concur Expense」にAI不正検知機能「Verify」を追加し、承認レスを実現する。発表の記者会見で、コンカー代表取締役社長の橋本祥生氏は「経費精算業務は、あらゆるビジネスパーソンにとって、最も付加価値のない業務。コンカーは今後、経費精算のない世界をつくり上げていく」と意欲を示した。

写真:(左から)コンカー代表取締役社長の橋本氏、SAPコンカー プロダクトマーケティング最高責任者のジュノー氏、コンカー ソリューションマーケティング部部長の舟本氏

コンカーは、経費精算業務で、キャッシュレス、入力レス、ペーパーレス、運用レス(高度化)、承認レスの実現に向けてサービスを拡充を進めてきたが、その中で承認レスだけが未完成だった。米国に続き、日本でもAI不正検知サービス「Verify」を追加することで、5つのレスを完成させる。

Verifyは、従業員の経費精算申請後、AIが申請内容を自動チェックするサービス。AIによって高い精度と速度での確認に対応する。具体的には、申請内容と領収書の内容の整合性、領収書の画像の使い回しの有無、ウェブで作成された領収書の整合性、市場平均価格との比較、私的利用の有無、不適切な加盟店の使用、グリーン車利用の有無、ホテルでのオプションの利用など約30種類以上のチェック機能を持つ。

ワークフロー上でAIが自動チェックすることで業務工数を削減するとともに、AIでは判断できない項目は人の目でもチェックをおこない、精度の高い監査を実現する。同社ソリューション統括本部ソリューションマーケティング部部長の舟本憲政氏によると、米国ではすでに全てのチェック機能に対応しているが、日本ではどの機能まで導入が可能か検討していくという。そのうえで、目標として、サービス開始後の3年間で既存ユーザーも含めて、200社ほどの導入を掲げた。

Concur Travelでは対話型AI、フライトをパーソナライズ

また、Concur Expesneでは、出張事前申請の際の概算金額の見積もりをAIが自動算出する「Request Assistant」で、2025年には会社の規定や過去の履歴を反映した見積もりを可能にするなど機能のアップデートを実施する予定。領収書の情報が自動入力される「ホテル領収書明細化機能」でも、領収書の入力自動化で経費精算レポートを自動作成する機能などを追加する予定だ。

海外出張費を管理する「Concur Travel」では、同社の対話型AI「Co-Pilot Joule」が、個人の嗜好に合ったフライトを提案し、社内規定との整合性の確認も実施。2025年内にはリリースされる予定だ。

さらに、会社払い経費を管理する「Concur Invoice」では、請求書のAI-OCR(AI光学文字認識)入力に対応。現在は、パートナー企業との連携では実現しているが、新たに2024年中にConcur Invoiceの標準機能として提供する。

このほか、2024年秋以降に管理者が利用するサポートポータルにも生成AIを搭載。実際の解決手順をリアルタイムに作成し、管理者の負担をこれまで以上に軽減させる。

コンカーが目指す「AI×ビッグデータ」

橋本氏は、コンカーが見据えるAI×データの進化について説明。2019年からAI-OCRサービスを日本で提供を開始したが、画像認識というAI技術のデータは限定的だったという。今回、大規模データと異常検知のAI技術を組み合わせることで、AI不正検知機能を実現した。

今後は、言語理解のAI技術を活用することで、自律運用のサービスを日本でもリリースしていく。さらに、最終的には、大規模知識理解というAI技術を活用し、文脈に沿ったデータと組み合わせることで、AIが購買や業務改善の提案をおこなうなど、いわゆるインサイトを提供していく計画だ。

SAPコンカー・プロダクトマーケティング最高責任者のクリストファー・ジュノー氏は、AIへの投資動向について、AIに投資していると回答した企業CFOの割合は2023年の33%から2024年には63%のほぼ倍になっていると説明。また、生成AIを社内業務で活用している割合が2023年の5%から2026年には80%になるとのガートナーの予測から、企業のAI活用は「2024年が転換点」と見通しを示した。

橋本氏は「ビッグデータあってのAI。コンカーは経費にかかるビッグデータを一番持っているベンダー。そうした蓄積されたデータを活用し、全く新しい顧客定見価値を提供していく」と強調した。

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