富裕層旅行コンソーシアム「セレンディピアンス」とは? 日本政府観光局が連携強化、会長が語った日本の潜在力を聞いてきた

日本政府観光局(JNTO)は、欧州を中心に高付加価値旅行を取扱う旅行会社が加盟するコンソーシアム「Serandipians(セレンディピアンス)」と連携し、同団体に加盟する旅行会社向けに訪日旅行の視察・体験ツアーを企画した。富裕層を顧客に持つ5カ国5社を招聘。観光庁の高付加価値旅行のモデル観光地でもある「北陸」と「瀬戸内」を視察する。

観光庁では、地方での高付加価値なインバウンド観光地づくりの取り組みとして、また、2030年の政府目標である訪日消費額15兆円に向けて、着地消費額100万円以上/人の高付加価値旅行者の誘致を推進しているところ。現在、モデル観光地として全国14地域を指定し、集中的な支援を実施している。

JNTOは、セレンディピアンスと2018年にパートナーシップを締結。これまで連携を深めてきた。今回の視察ツアーに合わせて来日したクエンティン・ドゥシューモン会長は、「加盟旅行会社にアンケートをとると、日本は必ずトップ5のデスティネーションに入る」と明かし、日本の重要性を指摘した。日本は、同団体が主催するアワード「Most Desired Preferred Destination 2024」を2019年、2020年に続いて受賞している。

セレンディピアンスは、富裕層旅行を取り扱う小規模な旅行会社や宿泊施設のコミュニティ。2013年に「Traveller Made」として設立され、2021年にリブランドした。また、2024年には新たなコミュニティとして「Takumians(タクミアンズ)」を立ち上げた。

ドゥシューモン会長によると、セレンディピアンスがエモーショナルな旅を訴求するのに対して、タクミアンズは旅先で出会う職人気質の良さを追求しているという。タクミアンズの「タクミ」は、日本の「匠」から名付けられた。

当初、同組織を構成するメンバーは、欧州が中心だったが、現在は国際的なネットワークに発展。セレンディピアンスには全世界で約570社の旅行会社、約930軒の宿泊施設、タクミアンズには約90社の旅行会社、約120軒の宿泊施設、DMCやバケーションレンタル施設などが加盟する。そのうち、日本では旅行会社は8社、宿泊施設は16軒、タクミアンズ旅行会社は1社、宿泊施設は3軒が加盟している。

ドゥシューモン会長は、「加盟事業者を拡大させていくことではなく、その質を保っていくことが大切」と強調。セレンディピアンスでは、加盟旅行会社が最大600社までとなるように制限をかけているという。また、加盟審査については、事前審査を受けたうえで、加盟事業者からの推薦が必要になる。さらに、加盟事業者の間で、相互推薦の仕組みを取り入れて、クオリティを担保。「クオリティが明らかに低下した場合は、除名もあり得る」という。

ドゥシューモン会長自身も旅行会社を持ち、視察ツアーに参加。

会長が語る、「日本」の潜在力と課題とは?

ドゥシューモン会長によると、セレンディピアンス加盟の旅行会社が抱える顧客層には、企業のオーナーや著名人が多く、経済的に余裕があり、教育レベルも高く、「個人的な嗜好性を満たすために、あるいは、仕事に活かす見聞を広めるために、旅行先を選ぶ傾向がある」という。そのうえで、「日本は色々なインスピレーションの源泉となり得る国」と評価した。

一方で、ドゥシューモン会長は日本の富裕層旅行者受け入れの課題も指摘。その一つとして、言語の壁を挙げ、「日本で、特に地方では、世界の共通言語である英語での直接的なコミュニケーションに課題があると思う」と話した。

また、日本の強みであるオーガナイズ力が、逆に富裕層旅行者にとってはストレスになる面もあるようだ。ドゥシューモン会長は、「日本では、早い段階から準備を周到に行うが、富裕層旅行者は必ずしもそれが好きではない。彼らの希望や予定は、旅行中にも変わる」と明かし、富裕層旅行ではタビナカの臨機応変な対応も求められると指摘した。

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