過去最高の更新が続く訪日インバウンド市場だが、アジア圏でも個人旅行化が進むなど、旅行形態やタビナカの行動は多様化が進んでいる。こうした中、訪日客獲得を狙う事業者は、変わる旅行者にあわせた販促手法のアップデートが欠かせない。
効率的にアジアの高単価客層にリーチする手法を探す日本国内の事業者にとって、即効性ある解決策となっているのが、香港拠点のキャセイパシフィック航空の会員プログラム「キャセイ」だ。キャセイとの連携により、北東アジアから購買意欲の高い個人旅行者を集客できるようになったという三井アウトレットパークの運営会社、三井不動産商業マネジメントの海外企画・観光統括部部長 中谷昭子氏に話を聞いた。
個人旅行客を誘致するためのパートナーが不可欠な時代に
2024年11月、日本国内で13軒目となる「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」を兵庫県神戸市にリニューアルオープンした三井アウトレットパーク。人気のラグジュアリーブランドを中心に、多彩なショップが一カ所に集まり、日本での買い物や様々な体験を楽しみたい海外からのインバウンド旅行者も多く訪れている。同社が提携している唯一の航空会社系マイレージプログラムであり、ポイント付与施策のパートナーが「キャセイ」だ。
三井アウトレットパークでは、2008年頃からアジア圏の訪日旅行者誘致に本格的に取り組み始めた。当初は、団体旅行を主なターゲットに据えていたという。
インバウンド市場の中でも、圧倒的なシェアを誇るのが北東アジア圏であり、日本滞在中の消費意欲も高い。海外とはいえ、距離的に近いため、年に複数回やってくるヘビーリピーターの取り込みも期待できるマーケットだ。
だがここ数年は、「訪日旅行マーケット自体が、団体旅行から個人旅行へとシフトしており、個人旅行客をいかに集客するかが課題になっていた」と中谷氏は振り返る。「日本を訪れるお客様に、我々の運営する三井アウトレットパークなどの商業施設を知ってもらうための共創パートナーが必要」(同氏)と考え、航空事業者や宿泊事業者など、海外からの訪日旅行に必ず必要となる旅行関連サービスを提供する企業との連携強化を模索していたという。
キャセイパシフィック航空に目を向けたきっかけは、「訪日客が多い香港で唯一のフラッグシップキャリアであること。そのキャセイパシフィック航空が展開しているマイルを活用したスキームという点に興味を持ち、声をかけた」(中谷氏)。
三井アウトレットパークでは、コロナ前からキャセイとの販促キャンペーンをスタートした。通年で展開しているのは、ショッピングなどでの利用額に応じてキャセイのマイル「アジア・マイル」を付与するもので、100円につき1アジア・マイルをプレゼントしている。さらに夏休みやクリスマスなどの季節イベント、訪日客が多くなる時期などに合わせた特別キャンペーンも随時、企画している。
購買意欲の高いアジア圏旅行者に手応え
三井アウトレットパークで買い物し、アジア・マイルを貯めるキャセイ会員には、どんな特徴があるのか?
中谷氏がまず挙げたのは、高い購買意欲だ。三井アウトレットパークにやってくるキャセイ会員には「購買モチベーションが非常に高い利用者が多く、多数の店舗を巡りながら、買い物を楽しんでいただいている。他の一般的な利用者と比較して2倍以上と高単価の利用者が多い」。香港や台湾のキャセイ会員の中には、繰り返し来訪する利用者も散見されるという。
キャセイ会員に向けた販促キャンペーンのもう一つの特徴は、販促施策を打ってから効果が表れるまでの時間が短く、スピーディに実績へとつなげられることだ。三井アウトレットパークがキャセイと実施してきたこれまでのキャンペーン結果から、「直ぐに実績につながることは、すでに実証済み」と中谷氏は信頼を寄せている。
特に効果が大きいのは、特別ポイントを付与するキャンペーン施策で、「キャンペーンをすると買上単価があがり、高額消費もみられる」(同氏)と手応えを感じている。
訪日客へのアピール、なかでも富裕層に刺さるように、どのように訴求するべきか、多くのインバウンド事業者が試行錯誤するところだ。その点について中谷氏は、「キャセイに会員登録しているアジア圏の質の高い旅行者層に、三井アウトレットパークなど、当社の運営施設を知っていただく機会を得られることが最大のメリット」と話す。
現在、三井不動産商業マネジメントが手掛ける施設の中で、キャセイのアジア・マイル付与の対象となっているのは三井アウトレットパークのみだが、今後、三井ショッピングパークららぽーとなど、同社が全国で展開している他の商業施設にも、キャセイとのマイル提携を広げていきたい考えだ。
キャセイの自社メディアから広告、インフルエンサーまで活用
三井アウトレットパークの場合、キャセイを活用したマイレージキャンペーンの準備は、ターゲット期間の3カ月ほど前からスタートしている。2024年下期は、クリスマスまでアジア・マイルが2倍貯まるハッピーホリデー・キャンペーン、その後は、春に向けて特別キャンペーンを実施。「販促クリエイティブの制作は、ほぼキャセイ側が担当する」とキャセイ日本地区ライフスタイル事業部長の川元眞澄氏は説明する。
「当社から要望を出すだけでなく、キャセイ側からも、ポイントプログラム参加会社への送客効果を考えたクリエイティブな販促提案や、より多くのキャセイ会員の目に触れる告知方法などを親身に考えていただいている。取り組みやすく、我々に寄り添った提案をいただけるのでありがたい」(中谷氏)。
提携キャンペーンが最大限の効果を発揮するように、キャセイでは「キャンペーン開始と同時に、各種メディアを活用した会員向け告知や広告を展開している」(キャセイ川元氏)。もちろんキャンペーン終了後には効果測定をおこない、三井アウトレットパークを訪れたキャセイ会員の属性などを含むデータを提供、次の戦略づくりに活かしている。
なかでもキャセイ会員が多く、日本路線が充実している香港と台湾市場向けには、日本への関心が高い旅行者向けのメディアやオンライン・サイトを選んで広告を打っている。一方、中国本土向けには、キャセイのSNSを中心にキャンペーンを告知。そのほか、台湾から日本へ旅行するインフルエンサーやメディアに、三井アウトレットパークの店舗を訪れてもらい、その体験を台湾で紹介してもらうなど、様々な形でのコンテンツ発信に取り組んでいく。
会員1100万人超のキャセイを味方に
三井アウトレットパークでは、引き続き、インバウンド旅行者のシェア拡大と、より幅広い市場からの誘致に力を入れていく方針だ。同時に「日本からアジア圏へ出かけるアウトバウンド旅行市場向けの施策でも、キャセイとのつながりをより深めていきたい」と中谷氏は付け加える。
北東アジアを中心に、全世界で1100万人以上のアクティブ会員数を誇るキャセイは、すでに世界800社超の企業から提携パートナーに選ばれており、様々な商品やサービスの販促キャンペーンで成果を出している。キャセイを味方につけることで、ますます多様化するアジアからの訪日インバウンド旅行者の上位階層に、即リーチできるようになり、より精度の高いインバウンド戦略のサイクルが回り出す。
※三井アウトレットパーク マリンピア神戸のマイル付与は2025年1月14日から開始
広告:キャセイパシフィック航空
問い合わせ:JP_Lifestyle@cathaypacific.com
記事:トラベルボイス企画部