ウィラー、2024年は増収増益、「推し活」ライブの移動需要で、乗車率と平均単価が上昇

WILLER EXPRESSウ(ウィラーエクスプレス)は、2024年の事業を総括するとともに、2025年の事業戦略を明らかにした。

同社代表取締役の平山幸司氏は、2024年について「いわゆる2024年問題の影響による人手不足で減便運休を余儀なくされたが、それ以外は順調に推移した」と振り返った。販売席数は、2019年比で16%減、2023年比で2%減となる見込みだが、乗車率は2023年の81.2%から85.0%に上昇。平均単価も2023年の4920円を上回る5334円と増加した。

この結果、年間では2019年の売上には及ばないものの、一部の月では2019年を超え、最終的には2023年で増収増益を達成する見込みだ。

酷暑対策やリピート減退など新たな課題も

その外部要因として、平山氏はライブ・イベントの動員数の増加とホテル代高騰による夜行バスへの移行が進んだことを挙げる。平山氏は、ライブ・イベントについて、終了時間が夜になること、交通費を安く抑えてその分をグッズ購入に充てる”推し活”などに触れ、「ライブユーザーにとって、バスは親和性が高い」と説明した。

また、内部要因として、BIツールを活用し、ダイナミックプライシングの精度を向上させたことで、平均単価を引き上げたことを挙げるとともに、QR乗車受付、新シートの配備拡大などサービス改善を継続したことも売上増につながったの見方を示した。

一方で、2025年に向けた課題にも言及。まず、酷暑による夏休み期間の需要減退を挙げた。8~9月にかけては、稼ぎ所のテーマパーク便が不調で、売上は前年割れになったという。平山氏は「今後も、夏は同じ状況が続くと考えられる。その対策をしっかりと考えなければならない」と危機感を示した。

また、サービスの改善によって満足度は上昇傾向である一方、平均単価を引き上げたことで、負担感が増し、リピート意向が微減しているという。同社の調査によると、「WILLERを優先して利用する」との回答は2023年の83.2%から2024年は80.9%に減少。反対に、他社利用の意向は2%ほど上昇した。

平山氏は「メインの顧客である10代や20代の利用者が、WILLERはバスに求めている値段よりも高いと思っているのは事実」としながらも、「人件費や燃料費の高騰を考えると、安易な値下げは困難。現在の平均価格を維持しつつ、サービス品質を向上していくことが必要」との認識を示した。

「移動を通じて社会に感動を提供していく」と平山氏このほか、今後も2024年問題による供給不足も続くと見ている。人材不足対策として、経由地削減による乗務時間の短縮などで運行ダイヤを見直すほか、今後2年間でバス運転手の年収を600万円まで引き上げる。

同社では、今春、バス運転手の職名について、運転手という仕事をブランド化する目的で、「ハイウェイパイロット」に変更した。平山氏は「名称一つ変えただけで、若い人に響いている」と手応えを示す。若手新人パイロットの育成では、2024年5月に新たに未経験者を育成するためのプログラム「WILLER LABO」を開設。約3ヶ月にわたる泊まり込み研修による育成の強化を始めた。

平山氏は、2018年から通年運行を始めた「東京レストランバス」についても説明。「春の桜シーズンの乗車率は高いものの、課題は認知度」との認識を示した。「都内周遊コース」や川崎の「工場夜景コース」などに加えて、インバウンド向けに新橋でのスナック体験を組み合わせたツアーや座禅体験と組み合わせたツアーなども販売。平山氏は、インバウンド向けについて、「付加価値を加えて価格を上げ、国内との差別化を図る価格設定を模索中」と明かした。

開閉式オープンルーフの2階建て「東京レストランバス」2025年は採用・人材育成の強化、安全品質の底上げに注力

2025年の事業戦略では、採用・人材育成の強化と安全品質の底上げを進める。採用では、減少の一途の大型2種免許保有者を奪い合うのではなく、他業種からの成り手を増やしていく。平山氏は「バスはサービス業。運転が上手いだけでなく、サービス精神も必要」として、サービス業に従事している若い方への呼びかけを強化していく考え。その効果として、2024年のWILLER LABOの応募総数は472件にも及んだことから、2025年は採用活動の受け皿を増やしていく計画だ。

同時に、大型車経験者に向けて教育プログラムとして「LABO EXPERT」コースを設立。運転以外の接客技術を中心に教育を進めていく。こうした取り組みを通じて、パイロット30人の純増を目指す。さらに、高校生や外国人の採用にも取り組んでいく考えだ。

安全品質の底上げでは、独自開発した営業所業務システム「RootS」をバージョンアップ。従業員・車両の管理台帳機能に加えて、事故・故障、教育・指導、健康情報などの情報を一元管理し、安全管理の透明化と効率化を進めていく。

平山氏は、RootSの強みとして、情報のフォーマット化、情報同士の連携、組織全員による情報の共有を挙げたうえで、「運行管理者がパイロットに対して健康状態に応じた助言をすることができ、トラブルの原因分析から再発防止まで速やかに実行できる」と説明した。2025年からは、RootSを他運輸事業者向けに外販も強化していく。平山氏は「バス事業、物流事業、タクシー事業などを含めた運送事業全体で10%のシェアを取りたい」と意欲を示した。

平山氏は「バス事業者が抱える様々な課題に対して、課題解決のモデルを提示していきたい」と話したうえで、利用者と社会に優しい移動サービスの実現をビジョンとして掲げた。

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