ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)は、美団グループが運営する中国最大級の生活情報プラットフォーム「大衆点評」と業務提携を結んだ。本格的な回復が期待される訪日中国人を対象に、百貨店を含めた全国の小売店、DMO、観光協会、地方自治体向けにマーケティング施策を支援していく。
大衆点評のユーザー数は約6.9億人。さまざまな生活カテゴリーをカバーしている。そのなかで、旅行・観光サービスでも多くの中国人が利用しており、食、宿泊、買い物、アクティビティなどの店舗情報やクチコミが充実している。訪日中国人の2人に1以上が日本滞在中に使用しているという。
業務提携を通じて、JSTOは、大衆点評のビッグデータ解析結果を共有するセミナーを年2~4回実施するほか、定期的にデータの共有などを進めていく。JSTO代表理事の新津研一氏は、「大衆点評のデータからは、訪日中国人がどこに行ったのか、何を検索したのか、どんなクチコミを投稿して、どのような評価をしているのかが分かる。具体的なデータに基づいて、訪日客に選ばれる”まち”になりたい自治体や、選ばれる”お店”になりたい店舗に向けたマーケティングサービスを提供していく」と提携の意図を説明した。
両者の業務提携発表に合わせて、第1回目となるセミナーが実施され、2024年上半期と10月1日~7日の国慶節での中国人訪日客データが共有された。次回は、来年2月の春節終了後に、その期間のデータを共有するセミナーを開催する予定だ。
また、大衆点評は、日本の店舗に向けて、アプリ上の店舗情報の開設や充実をサポートする支援パッケージを提供していく。美団日本支社統括責任者の草刈美香氏は、「アプリ地図上の店舗情報が間違っていたり、古くなっていたりする場合がある。店舗にとっては機会喪失になってしまう」と話し、支援パッケージに取り組む背景を説明した。特に店舗情報が乏しい地方での支援に力を入れていく考え。
第一弾として、2024年末~2025年年始にかけて、日本独自の買い物文化の一つである百貨店の「初売り福袋」の情報を大衆点評内のPRコーナーに設置する。日本百貨店協会と共催し、加盟百貨店は無料で参加することができるようにする。
支援パッケージでは、店舗向けに住所、店舗名、GPSなどのPOI(Point of Interest)を無料で整理するほか、大衆点評との半年以上の契約でクーポン配信手数料を初月無料とする。また、百貨店向けには、旧正月までに「スーパー公式登録」とクーポン配信契約を行うと、旧正月期間プラットフォームでの露出枠を確約する。
さらに高まる食への関心、店舗名の指名検索も増加
セミナーでは美団の草刈氏が大衆点評のデータから見えてきた2024年国慶節の訪日中国人の動向を説明した。
それによると、訪問先エリアのトップ3には東京、大阪、京都が入るものの、6位には神戸がランクイン。草刈氏は「中国での神戸ビーフの人気が反映されている」と分析した。また、国慶節前週と比較して伸び率が高かったエリアには、高知、岩手、熊本、由布、宮城などの地方が上位を占めた。この傾向については「何度も訪日する中国人が、もっと深いところまで日本を知りたいと考えている」とした。
また、2024年上半期の検索キーワードから見た訪日中国人の需要についても説明。ボリュームが大きいのはラーメン、寿司、焼肉などの食で、そのなかでコロナ後に目立つようになったのは、焼き鳥、すき焼き、コーヒー、お好み焼き、朝ごはんなどであることも分かった。草刈氏によると、飲食店の予約は、予定日の3~5日前が半数以上を占めているという。
食以外でコロナ後に特に目立つようになったカテゴリーは、百貨店や高級ブランドの店舗。最近増加しているのはドラッグストア、コンビニ、スーパーなど日本人の日常生活に関連する場所が多く、中国で認知されている日本ブランドも増えていることから店舗名(ブランド)の指名検索も増加しているという。
大衆点評のユーザーは、出発の1~2週間前にアプリ上で情報収集し、タビナカ中でフル活用。体験や食については、タビマエの閲覧が42%以上を占めている。こうしたデータを踏まえて、草刈氏は大衆点評アプリでのPOI(店舗情報)を正しく充実させる重要性を指摘した。