円安は旅行頻度や行き先選択よりも現地消費額に影響? ー海外ショッピングの最新動向

JTB総合研究所は近頃、「海外ショッピングレポート 〜日本人海外旅行者の動向と購買行動〜」の調査結果をまとめた。この調査は世界免税品協会(Tax Free World Association)と共同で 2002 年より継続的に行っているもの。それによると、2012 年の海外旅行者数は、1849 万人と過去最高を記録したなか、海外旅行先での平均買い物費用は、円高により697US ドルと 2010 年を上回る結果となったものの、日本円に換算すると、2010 年の 56,750 円から 2012 年 55,620 円となり、実質的な本人の消費額は減少した。行き先別の平均買い物費用では、アメリカ本土、ハワイと US ドル圏が 1 位、2位を占め、アメリカ本土で9万円、ハワイで8万7000円だった。以下、フランス(8万3000円)、イタリア(7万7000円)、ドイツ(7万4000円)、グアム(7万円)と続き、中国は3万円となった。

商品カテゴリー別では、平均購入額が多いカテゴリーは、1位が服飾品、バッグ、アクセサリーなどのファッシ ョン雑貨で 841US ドル(約 67,000 円)。次いで単価の高い宝飾品、時計の 731US ドル(約 58,000 円)となった。 また、2010 年からの伸び率をみると、現地の高級特産品(230%)、菓子(146%)、香水/フレグランス/化粧品(123%) が増加。JTB総研では、これらのカテゴリーの平均購入額が増加した要因として、菓子や化粧品を購入する頻度の高い韓国への渡航者数が伸びた影響が大きいとしている。タバコも128%と平均購入額が増加。これは、 2010 年 10 月から実施されたタバコ税増税によるタバコ価格の上昇により、免税で自分用のタバコを購入する人が増えたためと分析している。

旅行先での買い物費用の内訳を聞いたところ、自分のための買い物費の割合は男性で 58.3%、女性では 65.4%と、いずれも土産物費用を上回る結果となった。JTB総研は、海外旅行へ行くことが珍しかった時代には、親戚や友人、近所の人たちなどにお土産を購入することが一般的だったが、国内旅行感覚で旅行ができるようになった現在では、土産物より自分の好きなものを自分のために購入する傾向に海外での消費行動も変わってきていると分析している。

商品のカテゴリー別に「好きなブランド」を聞いたところ、「電気製品・携帯電話」カテゴリーで大きく順位が入れ替わり、なかでも注目すべき動きは、ipad や iphone などのヒットを受け、Apple が2010年の5位から2012年には1位と大きくランクを上げた。

このほか、この調査では円高が海外旅行への意欲に与えた影響についても質問。「海外旅行へ行く回数を増やそうと思う」(18.9%)や「より遠方へ旅行しようという気持ちになる」(13.1%)など、海外旅行の頻度や行き先選びに与える影響はそれほど高くないと結果となり、一方、最も影響が大きかったのは、「現地での買い物が増える」(28.0%)で、特に20 代女性は 50%近くが現地での買い物が増えると回答した。この結果から、JTB総研では、円安が進行している中では旅行先での購入額が減少する危険性があると指摘している。

「免税店にあったらよいと思うもの」の質問に対しては、「地域の特産品」や「地域や店だけの特典が付いたお菓子」なとの回答が多かかったことから、円安の影響を最小限にとどめるためには、免税店でもグローバルブランドだけでなく、その店やその土地らしい魅力を出した商品展開をしていくこと、加えて「円高は海外旅行や国内での買い物には影響しない」と回答した割合が高かったシニア層へのアプローチを強化するなど、性別や年代に合わせた取り組みが必要と指摘している。

さらに、消費税がもし増税された場合に、海外での買い物にどのような影響があるかについても質問したところ、全体では 31%の回答者が「海外に行ったときに、もっと免税店を利用するようになると思う」と答え、男女別では女性の方がより「免税店を利用するようになると思う」 割合が高く、特に20 代女性ではほぼ半数の49.5%に達した。このことから、JTB総研では、海外旅行先での消費を動かすカギは女性にあると分析している。

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