東北の観光、施設復旧の遅れが課題、夏祭りは回復傾向

さまざまな分野に多大な影響を及ぼした東日本大震災。復興への努力が続けられるなか、2年以上経過した今でも、東北地域における観光業は、まだまだ回復途上にあるようだ。日本銀行仙台支店が2013年9月17日に発表した「東北地域における観光の現状に関する調査」からは、現在の観光業における厳しい状況が垣間見える。


▼観光目的の旅行者割合は4割に落込み(2012年)

東北地域への観光客入込客数は、震災直後に大きく落ち込んだ後、2012年にかけて持ち直してきているものの、震災前の水準に復していない。また、宿泊施設への宿泊者数をみると、宿泊者数全体としては震災以前の水準を上回っているものの、増えたのはビジネス客で、観光客は減少している。2012年度の東北地域の宿泊者数は4015.5万人で、このうちビジネスは2237.4万人、観光は1778.1万人。震災以前の10年と比べると、観光客の割合は7割から4割に落ち込んでいる。さらに、2012年度の観光を主体とした宿泊施設への宿泊者数は、震災前の2010年度に比べ1割以上減少している。


▼ハードの復旧遅れが影響、宮城県は宿泊施設数が半減

ハード面の復旧の遅れも、客足に影響を与えている。宮城県、岩手県沿岸部の宿泊施設の復旧状況をみると、震災に伴って営業停止を余儀なくされた宿泊施設では、営業を再開できていないところが過半数を超えた。宿泊施設を新設する動きもみられるものの、震災前に比べ施設数は大幅に少なくなっており、被災県における宿泊客減少の一因になっているとみられる。宮城県の宿泊施設数は、震災前の407軒から2013年7月時点で221軒にまで減少。震災後も営業継続しているのが159軒、震災後営業停止したのが248軒だったが、これまでに営業再開したのが45軒、新設したのは17軒で、震災前営業施設率は54.3%、営業再開率は18.1%にとどまっている。これらの数字から、沿岸部観光地の復興、誘客を図るうえで、「沿岸部観光地における宿泊客の収容能力の早期復元」が重要なことがうかがえる。


▼外国人宿泊客の影響は限定的、夏祭りの客足は回復傾向

一方、東北地域への外国人宿泊客は、震災後の大幅な落ち込みから持ち直しつつあるが、他地域に比べて宿泊客における外国人の割合が大幅に少なく、宿泊客全体の回復への寄与は限定的なものにとどまっているようだ。


ただし、集客力の高い夏祭りなどの客足は回復傾向にあるなど、今後を見通す明るい材料はある。東北地域の主要な夏祭りの入込客数をみると、2011年は6.5%減の1459万人まで落ち込んだものの、東北六魂祭をはじとしたPR効果もあってか、13年度は1495.5万人にまで回復。2010年度比では4.2%下回ったが、12年度比では0.9%増加した。


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