配車アプリ「スマホdeタッくん」が東京全域に拡大、異業種連携も積極化で観光も視野に

東京ハイヤー・タクシー協会は、共通配車アプリ「スマホdeタッくん」で多摩地区に対応し、サービス対象を東京都全域に広げた。参加事業社数は20社・車両台数は1万2412台となり、東京23区では55%、多摩地区では31%を占める東京最大の配車アプリと強調した。

記者発表会で会長の川鍋一朗氏は、「少子高齢化や訪日観光客の増加によってタクシーの需要が再び伸びる」とした上で、「スマートフォンでできることはたくさんある」と強調。「タクシーの飛躍的な進化に期待してほしい。その中心に『スマホdeタッくん』がある」とアピールし、サービスをマクロからミクロへ、公共交通輸送から総合生活移動産業へと転換していく方針を示した。

続いて副会長の樽澤功氏が、拡充したアプリ機能の内容を紹介。配車要請時に従来の車体の色やエコカーなどの車両選択に加え、新たにタクシー会社の選択が可能となった。アプリ配車でもタクシーチケット利用を希望する需要に対応したもので、今後も細かなニーズに対応する。

また、総合生活移動産業としての第一弾として、住宅向けインターホンを提供するアイホン社との連携も発表。自宅のインターホンを通じて、気軽に配車要請ができるようにした。今後は集合住宅や病院、ビジネスホテルなどのコンシェルサービスとも連携し、タクシーを素早く呼び出すためのサービスや方法も多様化していく。


time walletのホームページより

さらに、店舗や施設などでの滞在時間を単位とする共通ポイントサービス「time wallet」とも連携。タクシーの乗車時間をポイント化するサービスを多摩地区から順次開始する。“時間通貨”のような新しい概念の取り組みも積極的に取り入れ、利用客に近いサービスを提供していくという。

 

東京のタクシーが目指す姿、個々のニーズに応える存在に

川鍋氏は「東京のタクシーは2020年までに3つの進化を遂げたい」と述べ、(1)初乗り料金を400円台に減額、(2)ユニバーサルデザイン(UD)車両の増加、(3)タブレット端末の全車搭載、の3つの目標を示した。

(1)の初乗り料金については2017年4月1日に実現する見込み。料金は下げるが、距離は現行の2キロから短縮し、“チョイ乗り”需要に対応する。(2)のUD車両は日中走る車両3万台のうち1万台を、車いすや大きな荷物運搬に対応できるワゴン車にする予定。(3)のタブレット端末では、多言語対応や位置情報等の活用で「素晴らしい乗車体験を提供する」とする。

さらに「そう遠くない将来に目指すもの」として、環境・車両資材委員長の根本克己氏が「IoT社会におけるタクシーの位置づけ」と言及。多様化するニーズに応えられる存在となるべく、メニューや車両種類の拡充からカスタマイズ化やマイドライバー、世界主要都市での同一アプリでの利用、他の交通モードとの連携など、少数多品種でもマッチングできる仕組みを構築する考えだ。

加えて、エリアを面でカバーするタクシーだからできることとして、交通渋滞や災害時の不通か所などリアルタイムでの道路状況の情報提供や、徘徊老人やペット、盗難自転車の捜索など、地域の見守り・見回りの役割となる可能性にも言及した。


IT活用は人間力の向上がポイント

会長の川鍋一朗氏

川鍋氏はこうしたIT活用によるタクシーの進化と同時に行なうべきこととして、ドライバーの人間力の向上をあげた。特にアプリの浸透によって訪日外国人をはじめとする観光需要が増加するとし、多言語や観光案内などに対応できる研修も進めている。

観光ではすでに「東京観光タクシー」の認定制度を開始しており、現在1610人の認定ドライバーが誕生。2020年までに3000人に増やす予定だ。今後は旅行会社との連携やスマホdeタッくんでの観光連携なども検討の範疇にあるが、「ノウハウがない」ので一緒に取り組んでいきたいところだという。

一方、記者発表では他の配車アプリとの競争についての質問も及んだ。これに対して川鍋氏は「まずはタクシーをスマホで呼ぶ活動を促す必要がある」との課題認識を示した。タクシー利用の9割以上が“流し”での乗車で、TELやアプリなどによる無線配車は10%未満だ。同協会によると、スマホdeタッくんのダウンロード数は6万4000件弱で、無線配車の数は月間約120万回~130万回。このうち月間のアプリ利用数は、1万1000回~1万2000回だという。

川鍋氏は、「各タクシー会社でもアプリを提供しており、地域性もある。アプリからの利用率を高めあっていきたい」と述べ、“諸外国からの舶来もの”についても同様に「お互いに切磋琢磨したい」と述べるにとどめた。

記者発表会には多摩地区4市のキャラクターも参加

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