外務省は2016年10月5日、10月11日から12日頃まで予定されるイスラム教シーア派の宗教行事「アーシューラー」に伴う注意喚起を発出した。欧米諸国やスンナ派アラブ諸国などを含め、イスラム教シーア派教徒が多く居住する地域で、テロに対する注意強化を促すもの。
「アーシューラー」とは、シーア派イスラム教徒が正統な指導者とする預言者ムハンマドの孫フサインが殺害されたことを悼む行事。同教徒にとって最大の宗教行事のひとつで、期間中は、教徒が泣き声をあげたり自分自身の身体をたたくなどしてフサインの「殉教」を想起するといわれる。
現時点でテロの実行呼びかけなどの声明は確認されていないものの、過去には「アーシューラー」に伴いイラクやパキスタン、バングラデシュなどで複数のテロが発生。昨今、サウジアラビアなど湾岸諸国ではシーア派関連施設を狙うテロ事案が増加しているほか、ISILがシーア派の攻撃を煽る主張が確認されている状況でもある。
このような状況を受け、外務省では「アーシューラー」期間の海外渡航・滞在予定者に対し、従来以上に安全に注意する必要性があることを認識してほしいと注意喚起。「アーシューラー」関連の行列や集会などには不用意に近づかないようにするほか、報道や外務省の海外安全情報などを通じて渡航・滞在先の最新情報入手に努めるよう促している。また、特にテロの標的となりやすい宗教関連施設や政府・軍・警察関連施設、不特定多数が集まる場所などを訪れる際には、周辺状況に注意してほしいとしている。