JTB総合研究所は、「新しい技術やサービスの広がりとライフスタイルに関する調査」を行ない、結果を発表した。IoTが進行し、AI(人工知能)が身近な存在になる中、人々の行動パターンだけでなく、価値観そのものがどのように変わるのか、調査したもの。調査対象は首都圏、名古屋圏、大阪圏の居住者で、過去1年以内に宿泊を伴う観光旅行に出かけた男女18~79歳。
タビナカ、タビマエでの変化
デジタル化による旅行スタイルの変化については、情報収集の場面で増えたこととして「旅行中(タビナカ)の情報検索」(40.5%)が最多となり、「紙のガイドブックを持っていく」は減少。また、予約や購入の場面では、「スマホで予約をする」(33.2%)、「インターネットで旅行商品を買う」(28.9%)、テレビを観ながら、電車に乗りながらの「ながら予約する」(13.9%)が増加し、電話や旅行会社の店舗での旅行商品購入は減少した。
旅行形態では、「宿泊施設と交通手段を別々に自分で購入する旅行」(24.0%)、「数日以内など、間際に思い立っていく旅行」(15.6%)など、個人で自由に動く旅行が増えている傾向がうかがえる。
さらに、旅行商品の検討で最初に探し始める方法で最多となったのは、「検索エンジンでの検索」(国内旅行24.4%、海外旅行11.5%)、次いで「お気に入りのオンライン専門宿泊予約サイト」(国内旅行24.4%、海外旅行11.5%)。今後、利用が増えると思う購入場所は、「オンライン専門宿泊予約サイト」(35.7%)、「旅行比較サイト」(33.2%)の順。「旅行会社の店舗」(7.2%)は最も低い結果となった。
旅行会社の店舗で相談しない理由については、「ネットで十分」(50.9%)、「わざわざ行くのが面倒くさい」(44.4%)が上位で、「営業時間に行けない」(15.3%)、「行きやすい場所に店がない」(10.9%)といった、現実的な障壁がある理由を上回った。
また、ネットで予約しようとした旅行について、店舗に出向いた経験がある人は27.2%となり、4人に1人以上であることも明らかに。理由は、「旅行の内容について聞きたいことがあった」(12.6%)以外は、「複雑で予約できなかった」(7.1%)、「オプショナルツアーや保険を追加」(5.6%)、「希望の支払い方法が選べなかった」(4.6%)で、ネット予約で利用の仕方が分からないものについて、旅行会社を利用する姿が浮かび上がった。
AIが進化し、サービス制度が向上しても店舗(人)のサービスを利用したいと思うときについては、「良く知らない分野の商品やサービスを購入する時」(49.7%)、「自分のことを十分にわかってくれる人から自分では気づけない潜在的な要望などを提案してもらいたいとき」(25.4%)が多かった。ただし、3位には「AIの方が正確な判断や適切な対応をしてくれるなら必ずしも人からサービスを受けなくてもよい」(22.2%)が入った。店舗のサービスを利用したい商品・サービス別で見ると、車や電化製品、ファッションなどが高い傾向となった。
ライフスタイルの変化
日常生活の変化では、暮らしの中での購買行動について、「現金以外で買い物をする」(46.0%)が最多。「インターネットでの購入」はいずれも機会が増加し、「店舗での購入が増えた」を大きく上回った。コミュニケーション・プライベートの分野では、「メールでのやりとり」「電話でのやり取り」の減少が進み、LINEやメッセンジャー、SNSが増加。ただし、「対面で家族や友人と話す」のリアルなコミュニケーションも、増加が減少を上回った。
技術革新やサービスの広がりで便利・時短になったと思うことは、「わざわざ出かけなくても欲しいものが手元に届く」(58.3%)、「比較が簡単にでき、より安く買える」(46.0%)、「時間に縛られず、いろいろなサービスを利用できる」(36.1%)の順。便利・時短の代わりに増えたことでは、「スマホをいじっている時間」(42.8%)、「趣味など好きなことをする時間」(40.0%)、「家族と過ごす時間」(22.6%)などがあがった。
JTB総研では調査を踏まえ、店舗や人によるサービスの価値として、場面や個々人に応じて商品やサービスをきめ細かくカスタマイズする「ウルトラパーソナライズ」がキーワードになると展望。店舗は価格以外の質を伝えにくくなった面もあるとし、店舗はショールームとして、ブランドを作る拠点としての役割を担うべきと提言している。