ドイツ拠点の大手旅行会社TUIグループは2018年9月14日、イタリアの現地ツアー・体験アクティビティのオンラインプラットフォーム、「ミューズメント(Musement)」の買収を発表した。ミューズメントは今後、TUIグループ系列企業で世界49か国のタビナカ市場を取り扱う「TUIデスティネーション・エクスペリエンス」傘下にて、独立したブランドとして存続する。
ミューズメントはミラノを拠点とする旅行テクノロジー・スタートアップで、創業は2013年。現在、世界1100都市で、博物館やイベントの入場券から自転車ツアーに至るまで、3万5000件のタビナカ素材を提供している。創業メンバーは4人だが、現在は社員130人規模に拡大。自社アプリやサイトのUX改良に加え、チケット発券ソリューションや在庫管理のセルフサービス機能、複数ツアーの組み合わせ、ダイナミック・プライシング(需給環境に応じた価格操作)など、サプライヤーとユーザー双方にとって便利なプラットフォーム構築に取り組んでいる。
TUIでは、かねてから現地ツアーや体験アクティビティについて「世界全体で1500億ユーロ、年率7%増のペースで拡大している有望なマーケット」と指摘。旅行業における戦略的セグメントとして取り組む意向を示してきた。
TUIグループのスペイン系子会社、TUIデスティネーション・エクスペリエンスに「ミューズメント」を加えることで、この分野への投資をさらに進める。ミューズメントのデジタル技術力と、年商100万ユーロ以下の小規模サプライヤーが大多数を占めるエクスペリエンス市場での知見を評価。
TUIグループのフリッツ・ユーセン最高経営責任者(CEO)は今回の買収について、「2000万人の顧客を抱える当社にとって、サービスのパーソナル化とビジネスのデジタル化は、今後の事業成功に不可欠な両輪であり、切り離して考えることはできない」とコメントしている。
一方、ミューズメント側は、TUIグループに加わることで、世界有数の旅行ブランドの信用力を獲得するほか、TUIグループが抱える顧客基盤にリーチすることが可能になる。同社のアレッサンドロ・ペタジーニ共同創業者兼CEOは、「我々のテクノロジーがより広く、より多くの利用者に活用してもらえるようになる新局面の到来であり、当社にとってのマイルストーン。TUI傘下に加わることで、将来的にはB2B2C展開も大きく拡大できると期待している」と述べている。