国文学研究資料館(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国文学研究資料館)と凸版印刷はこのほど、日本文化に関する資料のデジタル化と、そのデータを活用した日本の魅力発信プロジェクトの推進で合意した。両社はこのプロジェクトを通して、デジタル化した古書や美術品などに国内外の人々のアクセスを可能にし、地域創生や観光の促進などにつなげていく考え。将来的には、地域や観光事業者と連携し、観光産業での活用を目指す。(写真右から、ロバート・キャンベル氏、凸版印刷 文化事業推進本部本部長 矢野達也氏)
発表記者会見の場で、国文学研究資料館 館長のロバート・キャンベル氏は、文学や古書をデジタル化していく過程で、様々な発見があることを指摘。「地域の隠れた魅力が掘り起こされ、地元のストーリーと結びつけることができる」として、地域の観光資源とすることができる可能性の広がりに期待した。
今後は同資料館が持つ学術的知見と凸版印刷がもつ高精細データのアーカイブ技術を生かし、ARやVRなどを活用した新たなデジタル表現を展開。例えば、和歌や物語などの原本は、現代語に置き換えるだけでなく、その背景にある日本文化までを含めたコンテンツの制作を進める。現代と過去の異なる生活背景や時代の前提では、現代語への置き換えだけでは不十分という考えで、キャンベル氏は「翻訳作業に似ていること。情報を差し引きしながら制作することで、臨場感が出てくる」とその意義を強調した。
凸版印刷の矢野達也氏は、「地史などが2次元のものがたくさんある。そういったものを思い描けるような可視化を目指せたら面白いと思っている」と話し、過去の料理レシピを再現したり体験できるところまで進めたい意欲を示した。
第一弾として、同資料館で開催中の特別展示「祈りと救いの中世」で両社共同開発によるデジタルコンテンツを展示。11月3日には、同資料館主催の「平成30年度『古典の日』講演会」でも活用する。
また、デジタルコンテンツを用いた展示・イベント「デジタル発 和書の旅」をシリーズ化。2018年12月には京都・有斐斎弘道館にて、2019年2月には東京の日本ギャラリー「旅道」丸の内(TABIDO NIPPON GALLERY)で開催する予定。