世界のホテル利用客の4人に1人が、いったん予約した宿泊施設を最終的にはキャンセルしているという。キャンセル増加の背景には、OTAによるセールス手法があるようだ。
当然、ホテル側にとっては大問題だ。レベニューマネジメント担当者は、稼働状況を正確に予測することが難しくなり、複数の流通チャネルに対して、どのように客室在庫を配するべきか、頭を悩ませている。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
キャンセルの増加傾向は、アコーホテルズ傘下のホテルテクノロジーグループ、D-Edge(Dエッジ)がこのほど行った調査結果で明らかになった。Dエッジグループ系列の企業には、AvailProやFastBooking などのプラットフォーム各社がある。
同社では、OTAなどヨーロッパの200以上の販売チャネル、ホテル680軒を対象に、流通動向に関する調査を実施。2014年から2018年までの変化を比較した。
その結果、2014年のキャンセル発生率は平均32.9%だったのに対し、2018年には39.6%まで上昇。キャンセル率が最も高かったのは2017年で、なんと41.3%に及んでいた。
OTAの中で、キャンセル率が最も高かったのはブッキングドットコムなどを展開するブッキングホールディングスで、2018年は50%、過去4年間で6.4%増となっている。
これに比較すると、エクスペディア・グループ(ホテルズドットコムやエクスペディアなど)のキャンセル率は、2018年で26.1%と低い数字だが、2014年比では6%増とやはり上昇傾向にある。
これに対し、ホテル直営ウェブサイトでの予約キャンセル率は最も低く、18.2%にとどまった。
Dエッジのレポートでは、「利用客側がキャンセル無料のポリシーにすっかり慣れてしまった。主にブッキングドットコム系列の販売チャネルやアプリがこの状況を促進してきた」と指摘している。ホテルがレートを下げると、それを見た利用者は抑えてあった予約をキャンセルし、値下げした方を予約する、というやり方が広まった。
「これ以外の理由も、キャンセル率上昇に影響はしているが、やはり一番大きいのは、“キャンセル無料”導入が拡がったこと。さらに、これをアピールするマーケティング効果だと考えている」(同レポート)。
ホテル側は、OTAに対してキャンセルされても返金をしない「払い戻し不可」とするか、それともリアルタイムでキャンセル状況を反映できる管理システムを備えるか、選択を迫られている。
意外なマーケットシェアの数字
同調査レポートによると、ブッキングホールディングスの市場シェア(ヨーロッパのホテル680軒が調査対象)は、2018年のウェブサイト経由予約の48.3%、OTA各社による売上全体に占める比率は68%。またウェブサイト予約に占める比率は、2014年比での伸びはわずか4.7ポイントほどで、2016年の52.2%をピークに、むしろ下落している。
同じ時期のホテル直営サイト予約を見ると、6.3%減少しているが、一昨年から昨年では、上向きに転じている点に、Dエッジでは注目している。
Dエッジの最高マーケティング責任者、ジャンールイ・ボス氏は「利益率の高い流通チャネルを重視するのはもちろんだが、少なくとも四半期に一度、流通ごとのマーケットシェアをチェックするべきだ。同じ顧客を、複数の流通チャネル間で奪い合う状況になっていないだろうか。適切かつ最も利益につながる流通の構成比率になっているか、確認する必要がある」とアドバイスする。
リードタイム、平均価格、滞在日数も要チェック
一方、上記の仲介販売チャネルの中で、予約のリードタイムと予約単価の両方で最も高い数字を示したのはBtoB旅行卸し「ホテルベッズ・グループ」だた。
特に予約のリードタイムは圧倒的に長く、例えばブッキングホールディングスが35日前なのに対し、ホテルベッズは60日前と、ほぼ倍だ。
調査対象となった流通チャネルすべての平均リードタイムは39日前、直販サイトでは41日前だった。
平均予約価格は、2018年実績で直販サイトが454ユーロと最も高かったが、次いでホテルベッズ・グループの422ユーロ。ブッキングホールディングスは339ユーロ、エクスペディア・グループが342ユーロだった。
ボス氏は「各流通に卸す客室数やレートの配分を考える際、それぞれの流通チャネルにおける平均価格は重要なファクターだ。総売上しかチェックしていないのは危険で、むしろ利益喪失につながりかねない」。
なおホテルベッズ・グループは、平均滞在泊数でも他を少し上回り、2.75泊だった。
これからの展望は
それでもボス氏は、大手OTA各社が築き上げてきたホテル流通への影響力が、弱まっていくような展開はありえないと考えている。もし変わるとすれば、グーグルやエアビーアンドビーなど「従来とは異なるビジネスモデル」の台頭により、既存の流通形態が全く違うものになる可能性はあるとの見方だ。
さらに、アマゾンが旅行業に参入すれば、これも激震になりうる、と同レポートは指摘している。
ボス氏は「2018年は直販サイトでの売上が順調に拡大し、ホテル側にとってはポジティブな展開となった。今後、さらに使いやすい予約手段(例えばブック・オン・グーグルなど)やテクノロジー系パートナーが登場し、同様の傾向が続く」と予測する。
「しかし、ホテルにとってリスク分散は常に必要だ。他社との提携、ホールセーラーとの各種契約、GDS、クーポンサイト、ニッチ市場に強いOTAなどの中から、必要な相手を見極めることが重要だ」としている。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
※オリジナル記事:Hotel cancelation rate at 40% as online travel agencies push free change policy
著者:ケビン・メイ氏(Kevin May)