みずほ総合研究所は2019年11月29日に発表したみずほリポート「2020年東京五輪開催年のホテル需給の試算」で、2020年の訪日外国人数は3400万人とする予想を発表した。政府目標の4000万人を大きく下回る見込みだ。
みずほ総研ではこれまでも2020年に向けたホテル需給バランスに関する試算を行なってきた。今回の試算では(1)訪日外国人の予測数のほか、(2)日本人需要の増加による宿泊者数全体の増加、(3)供給増によるホテル不足は発生しない、の3点で、昨夏からの試算を変更している。
懸念されてきたオリンピック開催年のホテル不足については、2018年にホテル客室数が大幅に増加したために2020年の予想客室数を昨年試算から上方修正。それ受けて、複数シナリオにおいて「ホテル不足は発生しない」としている。さらに、供給増の影響で東京、大阪における客室稼働率は低下幅が大きくなると予測している。
東京都内では、宿泊需給の試算、ホテルの供給増によって五輪効果による8月の客室不足発生の可能性が昨年試算よりも低下した。一方で、マラソン・競歩が開催される札幌市の夏場の宿泊需給がひっ迫するリスクがあると指摘している。
また、これまでのインバウンド客数試算では、需要関数の推計および国際線航空便数とクルーズ船寄港回数を考慮した双方のモデルで試算し、2020年の訪日外客数は政府目標と同じ4000万人と推計してきた。
しかし、今回は足元の動向を踏まえて、昨夏に行なった試算から想定を変更。インバウンド需要関数による推計は行なわず、供給側データの交通インフラのみを用い、航空便とクルーズ寄港回数が現状と同じペースで増加する仮定で予測した。
特に訪日韓国人客については2019年8月以降に日韓摩擦が激化した状況を考慮し、航空便の減少や一便あたり客室数(稼働率)の減少を考慮して別個に試算した。みずほ総研では、航空会社が減便させていることを踏まえると、韓国人客が早期に持ち直す見込みは低いと想定している。
東京オリンピックの開催効果については、開催地の宿泊料金の高騰や混雑を回避する「クラウディングアウト効果」が要因となり、訪日外客数が大幅に加速する可能性は低いと予測。一方で、オリンピック翌年の訪日外国人客数が激減するという世間一般の見方については、過去の開催国で開催翌年に減少したのは、ITバブル崩壊とリーマンショックによる世界の景気後退が要因とし、東京五輪後に訪日外国人客数が激減する事態が起こる可能性は低いとも予想している。
詳細は、下記リンクのみずほリポートへ。
[みずほリポート]2020年東京五輪開催年のホテル需給の試算(PDFファイル、1.1 MB)