トリップアドバイザーがこのほど発表した2019年第4四半期決算は、売上が前年同期比3%減の3億3500万ドル(約368億5000万円)、純利益が前年比114%増の1500万ドル(約16億5000万円)だった。この結果、2019年通年での売上は同3%減の15億6000万ドル(約1716億円)、純利益は同12%増の1億2600万ドル(約138億6000万円)となった。
引き続きホテル部門の売上が低迷しているものの、旅先での現地体験(エクスペリエンス)・飲食部門は2桁成長と好調。一方、経費の半分弱を占める営業マーケティング費を第4四半期は同11.5%減、通年では同13.6%減の6億7200万ドル(約739億2000万円)とし、通年での経費合計は4.1%減の13億7300万ドル(約1510億3000万円)に縮小したことが奏功した。
売上の主な内訳は、ホテルおよびメディア・プラットフォーム部門が第4四半期は同6%減、1億9400万ドル(約213億4000万円)、通年決算では同6%減の9億3900万ドル(約1032億9000万円)。これに対し、エクスペリエンス・飲食部門はそれぞれ同16%増の1億900万ドル(約119億9000万円)、同23%増の4億5600万ドル(約501億6000万円)に拡大した。第4四半期では、エクスペリエンス・飲食事業が、売上全体の半分近くを占めた。
ホテル不振の要因として、同社ではグーグルの施策を指摘。検索エンジン経由での顧客獲得において、「想定以上の逆風」(同社)が吹いており、この傾向は今年も続くとの見方を示した。対策として、ピークシーズンには4億6300万人のユニークビジター数を誇るトリップアドバイザーのプラットフォームにおける顧客エンゲージメント強化や、より旅行意欲の高いユーザー層の獲得を目指す方針を示した。
成長分野の飲食・体験にフォーカス
米・観光産業メディア「スキフト」が公開しているトリップアドバイザーの従業員宛のレターによると、純利益は2017年度に1900万ドル(約20億9000万円)の赤字に落ち込んでいたが、翌年は1億1300万ドル(約124億3000万円)に回復、昨年度は12%増とさらに上向いた。同様に調整後のEBITDA(諸費用・税引き前利益)も過去3年間右肩上がりとなり、2019年は前年比4%増の4億3800万ドル(約481億8000万円)だった。
こうしたなか、トリップアドバイザーでは、成長分野へのフォーカスと、全社的なコスト構造の見直しをさらに進めることで、高収益体制を目指す。具体的には、2019年度に好調だったエクスペリエンス、レストラン、ディスプレイ広告、ホテルB2Bソリューションをフォーカス領域として挙げている。
なかでも昨年下半期に売上高が、ついにホテルと並んだエクスペリエンス&飲食について、2020年度は最大の売上シェアに達すると見込んでおり、最優先の戦略分野と位置付ける。昨年第4四半期には、1億1000万ドルを投じ、レストラン関連で2件の買収を完了。まず欧州のレストラン市場に強い予約サイト、「ブック・ア・テーブル」を買収したことで、既存の傘下ブランド「ザ・フォーク」と併せた取扱い店数は、1万4000件ほど拡大する見込み。
さらに米国のメニュー管理プラットフォーム「シングル・プラットフォーム」を獲得したことで、飲食業界におけるトリップアドバイザーのB2Bパートナーが倍増した。
2020年は、同社にとって創業20周年となるが、こうした成長分野については、さらに複数の投資やM&Aを進められる財務体制を整えている。5年前に買収したビアターでは昨年、予約取扱いプロダクト数は前年比116%増、取引パートナーは約3倍となった。現在、旅先でのアクティビティ市場規模は世界全体で1830億ドル(フォーカスライト推計)だが、このうち8割はまだオフラインでの取引となっている。この分野ではライバル企業も増えているが、ビアターの先行ブランドとしての強みを活かし、様々な可能性を探っていく。
また2020年第3四半期には、モバイルアプリをリニューアルする計画だ。特に若年層世代を意識しており、旅行中のユーザー向けの旅程プランニングや予約サービスを大幅に拡充することが狙いだ。
スキフトは、トリップアドバイザーのこうした動きによってグローバルでの組織再編を報じている。一方で、トリップアドバイザー広報は、従来から重点市場のひとつとされてきた日本市場では事業体制に大きな影響を受けないとしている。