中華人民共和国訪日観光客受入旅行会社連絡協議会(中連協)は2023年6月27日、第24回中連協会総会を開催し、新会長にJTBグローバルマーケティング&トラベル代表取締役社長執行役員の石田恒夫氏を選任した。中連協は2000年、中国から日本への団体観光旅行が開始されたのを機に、観光庁が指定した、日本側の身元保証人となる身元保証書を発行できる旅行会社で構成する組織。2022年度の総会員数は281社。
好調な中国人向け電子ビザ発給
総会で会長に新任された石田氏は、「中国人観光客の志向もアフターコロナでどう変わるのか。スノーツーリズム、アドベンチャーツーリズムといった新たな市場にも着目していきたい。旅行会社は、他の市場と同様、急に多くの方が訪れてもパンクしないよう準備しておくことが重要だ。一人でも多くの中国人の人々が日本の観光、交流を経験して中国に持ち帰り、日中の友好のきっかけになる体制を整えるよう尽力したい」などと、中国人の訪日旅行本格再開に向けて意気込んだ。
2023年は日中平和友好条約45周年の節目であり、中連協は公式ホームページの刷新、身元保証書発行システムルールをはじめとした会員向けセミナー実施など、受け入れ体制再構築に力を入れる。コロナ禍で3年間実施できなかった、相互交流のための訪中団派遣事業も実現にこぎつけたい考えだ。
また、総会に出席した中国駐東京観光代表処首席代表の欧陽安氏は、「中国はコロナ禍からのリベンジ旅行の需要が、直近の労働節(4月29日~5月3日)をはじめ、一気に顕在化している。日中間の観光交流が盛んになるよう、団体観光が早く解禁されることを願っている」と挨拶。外務省領事局外国人課首席事務官の小林龍一郎氏は、日本が6月19日から、中国に居住する中国旅券所持者向けに30日以内の観光を目的とする短期一次電子ビザの発給を開始したことに触れ「(初日は)1000件ほどでスタートした。訪日旅行の本格再開に向け、受け皿は用意できている」などと語った。
2023年1~5月累計の訪日中国人客数は38万6100人。徐々に回復しているとはいえ、韓国の258万3400人、台湾の138万1600人などとは大きな乖離がある。訪日中国人市場は、日中双方で水際対策が緩和されたものの、中国政府が海外旅行に対する制限の措置を継続しているため、中国側の旅行会社がまだ日本向けの個人・団体のツアー(募集型企画旅行)を販売できない現状がある。
観光庁が描く、中国市場新ターゲット像とは?
中連協の総会後は、観光庁国際観光課アジア市場推進室係長の瀧口賀子氏が「アフターコロナにおける中国市場の動向」について説明した。
コロナ前の2019年には、約959万人が訪れ、訪日外国人観光客全体の約3分の1を占めていた中国マーケット。団体旅行が中心といわれてきたが、2019年はリピーター率が50%、個人観光が70%、居住省市は上海市、北京市、広東省、江蘇省をはじめとした沿岸部が8割を占めていたといったデータを紹介したうえで、「旅行トレンドも、よりディープで自分だけが知っている日本のスポットを好むといった形で大きく変化してきた。今後は四川省など内陸部からの旅行者も増えるだろう」との見方を示した。
中国人観光客は、2015年頃には「爆買い」ブームで湧いたことで知られるが、コロナ前はモノからコト観光への移行が顕著に進んだことも指摘した。
また、今後の中国向けプロモーションの方向性として、一般観光は「訪日経験者、20~40代、夫婦・パートナー」「訪日経験者、20~40代、家族」、「訪日旅行未経験者、20~40代、夫婦・パートナー」、高付加価値旅行は「20~40代、世帯可処分所得上位20%、1月あたり世帯年収215万以上」をターゲットに掲げていることを明らかにした。
訪日中国人の宿泊動向はゴールデンルートと北海道が中心で、課題である地方分散を図るため、リピーター層を中心に自然、文化、食を中心とした訴求。プロモーション活動は海外旅行に積極的な20~30代向けを先行する。整備が進み、コロナ禍で評価が見直されている中国国内の観光地も意識するという。
なかでも、関心が集まる中国人富裕層については、食を基軸に自己研鑽のための文化・建築、リラックスできるリゾートを好み、北京五輪を契機にウィンタースポーツへの関心も高まっていると分析。高付加価値旅行を取り扱う旅行会社とのネットワーク形成、専用サイトへの誘引を強化するとした。