世界のクルーズ市場、2027年までに4000万人達成の予測、注目は「若年層のおひとり様」や「3世代の家族旅行」

国際客船協会(CLIA)はこのほどクルーズ市場の現況と将来展望をまとめた。

CLIAが2024年春に実施した調査結果などをまとめた最新報告によると、2023年の世界のクルーズ利用客数は、コロナ禍前の2019年に比べて6.8%増の3170万人とプラスに転じた。CLIAでは、クルーズ利用者数の回復ペースが、海外旅行者数を上回る勢いである点にも注目している。2023年の世界の海外旅行者数は、2019年比で12%減だった。

主な地域別では、最多を占める北米市場が同17.5%増(1810万人)となり、成長のけん引役となった。欧州、南米もそれぞれ同6.5%増(820万人)、6.6%増(99万6000人)とプラス成長だったが、アジア市場は同37.7%減の230万人。オーストラリアはほぼ横ばいの同1.0%減(1340万人)となった。

世界のクルーズ旅客数はコロナ禍で激減し、2019年の2970万人から2021年には480万人まで落ち込んでいた。CLIAでは、2024年は3470万人となり、2027年までに約4000万人に届くと予測している。

世界のクルーズ旅客数の推移(公表資料より)

クルーズの客層で特徴的なのはリピーター層。2024年3月のクルーズ旅行者意識調査では、「年に2回、クルーズに出かける」と回答した人が全体の12%、「年に3~5回以上」との回答は10%を占めた。またクルーズ経験者の82%は、「再びクルーズに参加するつもり」と答えている。

一方、過去2年間に「初めてクルーズに参加した」という回答者は全体の3分の1近く(27%)を占め、それ以前の2年間と比較して12%増となった。クルーズ未経験層からの関心も高く、海外旅行者の71%が「初めてのクルーズ旅行を検討中」と回答している。

若い世代のトレンドは「ひとり旅」

今後のクルーズ市場の成長については、若い世代の利用増がカギを握るとCLIAでは指摘している。同調査によると、過去2年間のクルーズ客平均年齢は46歳。40歳以下は全体の36%となっている。若い世代で、クルーズへの関心が最も高かったのはミレニアル世代で、過去2年間にクルーズを経験した同世代旅行者の81%が、またクルーズに乗りたいと回答。これに対し、Z世代で同様の回答は74%にとどまった。

また、ミレニアル世代とZ世代で特徴的なトレンドとして、CLIAでは一人旅でのクルーズ利用を挙げている。クルーズ全体に占める「おひとり様」の比率は、世界全体では8%。米国発クルーズでは10%、同カナダ発では13%だった。

2~3世代が集まった家族旅行でのクルーズ利用も目立つ。家族旅行でのクルーズ参加者のうち28%は、3~5世代旅行となった。

クルーズを選んだ理由では、「複数デスティネーションを訪問できること」と「バリュー・フォー・マネー」の2つが最多。クルーズの内容別では、氷河を見に行くなど、探検型の旅程が最も高い増加率を示しており、2019年と2023年を比較すると旅客数ベースで71%増となった。

世代別・クルーズ利用者数(公表資料より)

新規投資が活発、排出ガス対策も

マーケットが回復するなか、新しい船の就航も相次いでいる。CLIA加盟各社による2024年の新規就航クルーズは計7隻・2万室以上で、エリアはすべて欧州。なお、非加盟各社を含めた2028年までの新規就航予定は計56隻・12万7200室。総投資額は398億ドル(約6兆1700億円)となる見込み。

この結果、2028年までの4年間で、供給ベッド数は10%以上増加し、計74万5000台に達するとCLIAでは予測している。

自社所有のプライベートアイランドやビーチクラブ施設への投資も活発になっており、今後2年以内の新しい島やビーチ施設の新規オープン・拡充計画は5件ほどが明らかになっている。

流通関連では、クルーズに関する知識と経験が豊富な旅行会社のトラベルアドバイザーの重要性をCLIAでは指摘している。今回調査では、クルーズ参加者の73%が「旅先選びを決める際は、トラベルアドバイザーの助言を重視した」と回答している。

アクセシビリティもますます重要な要素になっており、現在、車いす利用者などが参加できる寄港地でのツアーは100以上(Sage Inclusion調べ)。「アクセシブルな寄港地ツアーを実際に予約したことがある」との回答は、全体の45%と半分近くを占めた。

2050年までの温室効果ガス実質ゼロ化を目指して、次世代テクノロジー開発への投資、オペレーションやインフラ施設の刷新への取り組みも進んでいる。船体の駆動技術やサステナブルなエンジン開発に向けたパイロットプログラムや共同研究が多数、進行中で、燃料電池や再生可能バイオ燃料を取り入れたクルーズ船もすでに登場している。CLIAによると、2028年までに、クルーズ船の15%が蓄電池や燃料電池を搭載したハイブリッド型になるとしている。

※ドル円換算は1ドル155円でトラベルボイス編集部が算出

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