能登半島の5市町が「今、行ける能登」を発信、ツーリズムEXPO2024で観光の再開状況を聞いてきた

能登半島地震から約9カ月。2024年9月26日~29日に都内で開催された大型観光イベント「ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2024」では、能登半島の七尾市、中能登町、穴水町、志賀町、羽咋市の観光組織や自治体が現地の最新情報を提供をした。

震災後、9月21日には能登地方で大雨も発生。観光の状況は、被災状況や既存の観光インフラによって、各地の営業状況が異なる。

復興応援ツアーが設定されるなど、少しづつ観光が復興しつつあるなか、各市町では観光情報をどのように案内しているのか。今回は、奥能登エリアの入り口、ななお・なかのとDMO(七尾市・中能登町)と志賀町観光協会に現状を聞いた。

※編集部注:取材は2024年9月27日に実施したもの。以下の情報は、取材時の最新情報です。

七尾市・中能登町:和倉温泉の宿泊施設が徐々に再開

七尾市と中能登町の観光振興を推進する地域連携DMOの「ななお・なかのとDMO」。TEJに出展した目的は「今、来て、楽しめる場所がある現状を知っていただこう」(係長・吉水紀章氏)という思いだ。

中でも、同エリアで観光の起点となっている和倉温泉の宿泊施設の営業再開が周知されることは、エリア全体の観光にとって重要なことだ。同エリアを訪れてよいか、観光客の印象を左右することになる。

現在、和倉温泉では、日帰り温泉施設「和倉温泉総湯」のほか、「花ごよみ」「宝仙閣」「湯の華」の3旅館が営業を再開。「日本の宿 のと楽」も10月のプレオープンを経て、11月に再開する。

TEJブースでは、七尾市の観光スポットや飲食店、和倉温泉の施設の観光受け入れ状況をまとめたチラシを用意。フル稼働の施設ばかりではなく、部分営業だったり、「道の駅のとじま」や一本杉通りの「七尾仮設商店街」のように屋外営業や仮設営業のケースもある。観光案内所は、10月1日に再オープンする予定。

また、休業中の施設でも、団体の事前リクエストに対応可能なケースもある。例えば、同DMOが指定管理している「和倉温泉お祭り会館」は、旅行会社から日時指定での要望があると対応がしやすいという。

「自分たちの役割は、関心を持って来訪される方に、今何が提供できるか、ありのままに伝えること」と吉水氏は話す。完全再開になっていない現状では、通常期のような呼び込みをするには至らないが、「地域が前向きに進んでいることを知ってほしい思いはある」と話す。

志賀町:金沢拠点の日帰り観光へシフト

七尾市の西側に位置する志賀町。日本海の荒波が作り出した、数々の自然の造形美が楽しめる景勝地だ。地域DMOである志賀町観光協会の事務局長・岡本明希氏によると、現在、観光施設の多くが営業を再開している。TEJの出展は「震災はあったが、観光で訪れることができることを伝えたかった」と話す。

同地も地震で被災し、現在も一部で隆起した地面や崩れた部分にブルーシートを張る住宅も残る。能登半島国定公園の景勝地・巌門を周遊する「能登金剛遊覧船」は、津波で3隻のうち2隻が流された。その後、同遊覧船は1隻追加し、7月から2隻体制で通常運航を再開。「当地域に関しては通行止めの道路はない。街並みに震災の影響を感じるところはあるかもしれないが、観光は、ほぼ通常稼働になっている」(岡本氏)。

ただし、現在、宿泊施設は奥能登の復興支援での利用が多い。もちろん、観光客の利用も可能だが、今は金沢を滞在拠点に、日帰り観光がメインになっている。同協会も当面は、日帰り観光を中心に誘致をしていく考え。新たに「鼓動を感じる志賀町」を打ち出し、重要無形文化財であり、地域の人々が幼少期から親しんでいる「志賀の太鼓」や、冬の増穂浦海岸に打ち寄せられるさくら貝のクラフトなど、地域の暮らしに溶け込んでいる文化や自然を楽しむ体験コンテンツを作っていくという。

その先陣を切るのが、夕日の名所でもある増穂浦海岸を望む「世界一長いベンチ」のリニューアルイベントだ。同ベンチは1989年に890人のボランティアによって設置され、ギネスブックに掲載された。これを、2024年10月5日にギネスに再挑戦する。当日、ベンチに座った人数をカウントする際に「志賀の太鼓」のリズムを打つという。

石川県観光連盟、「今行ける能登」の情報を収集・発信

北陸3県では、2024年3月の北陸新幹線の敦賀延伸という一大イベントにあわせて新幹線効果を最大化する各種プロモーションを実施してきた。10月~12月には、JRグループと北陸デスティネーションキャンペーン(DC)を展開する。

被災地域の情報発信に関しては、被害の少ない地域と切り分けて実施している。石川県観光連盟では能登半島の入り口である口能登エリアや中能登エリアと、奥能登エリアとの観光再開の違いを踏まえ、正確な情報発信に努めている。TEJ2024では、石川県/石川県観光連盟の出展ブース内に能登の5市町を迎え、現地の最新情報を提供した。当初、輪島市も出展者に名を連ね、輪島塗の体験や朝市名物の試食提供などを予定していたが、残念ながら豪雨災害への対応のため当日の参加はかなわなかった。

また、公式サイト「ほっと石川旅ねっと」に「今行ける能登」のページを設け、道路の通行規制の情報や観光に関する営業情報を発信。各自治体やDMOと連携し、各地域が対象の施設の状況を毎週更新し、代表的な観光地の最新情報を把握できるようにした。復興応援ツアーの情報も、「今行ける能登」のページで案内している。その一環として、輪島朝市組合が震災後に開始した「出張輪島朝市」の情報も掲載している。

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