JTB総合研究所は「平成25年度都道府県・政令指定都市における観光関連予算調査」を行った。回答のあった都道府県・政令指定都市における観光担当部課の予算総額は534億2863万円で、うち都道府県の総額が403億7678万円、政令指定都市の総額が130億5183万円となった。一般会計予算に対する観光担当部課の平均予算額は、8億7588万円、予算比率は平均0.093%だった。前回実施した平成21年度の調査では平均額が6億6001万円、平均比率が0.097%。4年前より平均額は上昇したが、平均比率は下降している。
▼一般会計予算に対する観光予算比率、トップは沖縄県
観光事業費は宮城県、沖縄県、島根県が大幅増加
都道府県の平均予算額は8億9726万円、平均比率は0.085%、政令指定都市の平均予算額は8億1574万円、平均比率は0.130%だった。予算比率のトップ5は、沖縄県の0.99%、鳥取県の0.42%、高知の0.30%、香川県の0.29%、静岡市の0.22%の順。
観光担当部課予算の内訳は、「観光関連事業費」が75.9%、「施設関係費」が24.1%。多くの都道府県・政令指定都市でプロモーションや調査費用などを含む「観光事業費」が、観光トイレ整備、公園整備などを含む「施設関係費」の割合を上回っている。都道府県と政令指定都市別に全体平均をみると、都道府県の平均施設関係費は21.4%、政令指定都市の平均施設関係費は32.0%となり、政令指定都市の方が施設関係費の割合が高い傾向にある。
観光事業費の全体平均額は6億4417万円で、特に沖縄県、東京都、福岡市、香川県が多かった。全体平均額は前年より10.3%下回ったが、調査で比較可能な41都道府県でみると4年間で2.69億円増加している。なかでも宮城県(727.9%)、沖縄県(492.8%)、島根県(366.4%)、香川県(337.0%)、広島県(306.1%)では大幅に増加している。これは、「日本再生戦略」の中でアジア・太平洋地域の玄関口として期待される沖縄県、東日本大震災からの復興に関連する予算が増えた東北各県、瀬戸内地域での広域連携が進む中国・四国地域などの増加が寄与していると考えられる。
▼インバウンド経費の割合、沖縄、茨城、長崎で高く
東南アジアからの招致が加熱、国際線チャーターも
今回の調査では、注目度の高いインバウンド(国際観光)とMICEにかかわる予算についても焦点を当てた。平成25年度の国際観光にかかわる経費の全体平均額は9223万円で、前年より33.9%減少した。ただし、4年前との比較では大幅な増加傾向が見られる。前回調査との比較が可能な36都道府県のうち、28都道府県で予算が増加し、平均額は1億2814万円と、平成21年度の3904万円から3倍強に増加している。観光事業費に占める国際観光にかかわる経費の割合では、沖縄県が最も高く、32.9%となった。次いで茨城県(32.7%)、長崎県(26.4%)、奈良県(24.5%)、鹿児島県(24.3%)となった。
インバウンド招致のターゲットとしては、東南アジア市場が有力で、たとえば北海道の新千歳空港/バンコク空港間定期便就航に伴うタイ向けプロモーションの強化、熊本県が新規事業として取り組む東南アジア誘客戦略強化事業などの施策が行われている。
回答を得た61都道府県・政令指定都市のうち、訪日外客の誘致を目的とした国際チャーター便誘致にかかわる予算を計上しているのは、20都道府県・政令指定都市で、平均予算計上額は平成24年度が1億3616万円、平成25年度は1億199万円といずれも1億円を超えた。台湾、香港、韓国、ロシアなど近隣諸国への招致活動が多い。
▼MICE関連予算の計上は7割
予算上位は福岡市、横浜市、沖縄県、富山県
MICE関連の予算においては、回答した道府県・政令指定都市全体の7割弱が計上している。平成24年度、25年度の2年度平均では、28道府県(63.6%)、14政令指定都市(84.5%)と、割合では政令指定都市が20ポイント以上高いことがわかった。同様に平均予算額についてみると、道府県は約4000万円、政令指定都市は約1億9000万円と、1億5000万円政令指定都市が高くなっている。
MICE振興にかかわる予算額の上位は、福岡市、横浜市、沖縄県、富山県、北九州市と続くが、上位5県市の顔ぶれは前年度と変わっていないようだ。また、観光事業予算に占めるMICE振興予算の割合をみると、福岡市が86.2%、横浜市が76.2%と他に比べ高くなっている。両都市は観光庁から「グローバルMICE戦略都市」に選定されている。
2017年から2020年にかけて、毎年韓国と日本で国際的なスポーツイベントが開催される予定であることから、日本にとってインバウンドとMICEは取り組むべき分野だが、今調査では、「観光面でのグローバル競争が激化するなかで、制度や環境面での改善などさまざまな課題に取り組みながら、複数年にわたる創造的な活動により、21世紀の産業として、観光やサービス財を日本の強みとして世界に示さなくてはならない。他の地域にはない魅力をどのように掘り出し、磨き、時には創り、発信することが選ばれるための差別化戦略の鍵」と指摘している。
この調査は2013年6~7月の間、47都道府県・20政令指定都市の観光担当課へのアンケートを実施。45都道府県、および福島県、大分県、千葉市、京都市、神戸市、広島市を除く16の政令指定都市から回答を得たもの。