今後50年の海外旅行ビジネスとは? 「課題」「チャンス」「変わらないこと」

2014年2月に開催されたJATA経営フォーラムでは、「新しい価値創造への挑戦」という総合テーマのもとに海外旅行、国内旅行、訪日旅行、女性社員、若手社員の4つの角度で分科会が開かれた。今回のレポートでは、そのひとつ「今後50年の海外旅行における旅行ビジネスを考える」で発表された旅行3社のプレゼンテーションを紹介する。

この分科会では、海外渡航50周年の節目を迎え、旅行を取り巻く環境が激変するなかでの今後50年間を旅行会社、航空、ランドオペレーター、IT各社が各分野の立場から現状を踏まえて展望を語った。今後50年を展望するうえで、注目が集まったのはIT、ICT技術が進化するなかで劇的に変わっていく消費者、航空業界の動きや旅行手配の実務にどう対応していくかという点。また、世界の新興市場が成長する中で日本市場のポジショニングに変化が起きている現状を認識する必要性だ。

【モデレーター】

  • エヌオーイー 代表取締役会長 林田建夫氏

【パネリスト】

  • ワールドトラベルシステム 専務取締役 神田貴寛氏
  • ミキツーリスト 代表取締役 檀原徹典氏
  • クラブツーリズム 海外旅行部長 手塚秀一氏
  • 航空経営研究所 取締役副所長 牛場春夫氏
  • Google 広告営業本部 統括部長 陳内裕樹氏


▼航空券流通の変化、中小旅行会社にが知識を問われる時代に

ワールドトラベルシステム 専務取締役 神田貴寛氏

ワールドトラベルシステム 専務取締役 神田貴寛氏

ワールドトラベルシステムの神田氏は、航空券の流通の近年の変化について触れ、この変化が中小の旅行会社にとってチャンスになるポイントを紹介した。航空券の販売においては、旅行会社が大小を問わず「知識は力なり」を実践することで「大手と戦うことができる旅行素材となった。」という。

旅行会社における航空券の取扱いは、航空会社の流通施策の変化で大きく変化している。神田氏は大きな変化のポイントを、2001年の発券コミッション自由化、燃油サーチャージの導入、ITC規制緩和などを挙げ、旅行会社にとって厳しい時代が続いていることを指摘。商品規制やルールが厳格化していることや旅行会社による事前仕入のモデルが限界にきている点で「中小規模の旅行会社は変化の局面」とコメントした。

神田氏はこうした局面が中堅規模の旅行会社にとって「チャンス」となっている点にも注目。会社やスタッフの力量、知識からくる提案力によって「顧客が受ける満足度の旅行会社間の格差がなくなってきている。」。例えば、繁忙期の航空座席はルールの厳格化によって旅行会社の大小を問わず確保することができるように。また、航空アライアンスが進化してきたことでフレキシブルな旅程の提案が可能になっている点だ。神田氏は、今後の旅行業では旅行会社スタッフが「知識」を重要視して仕事をすすめることで旅行者の満足度をあげられることを強調した。


▼グローバル化で仕入れ環境が悪化、成長の3つの提言

ミキツーリスト 代表取締役 檀原徹典氏

ミキツーリストの代表取締役、檀原徹典氏

ミキツーリストの代表取締役、檀原徹典氏は、ランドオペレーターの立場から今後50年を語る上で、現状の「仕入の状況は悪化している」と言及した。この理由として、同市は世界的にホテル稼働率が上昇していること、サプライヤー側の供給流通が変化している点を指摘。「サプライヤー側が売り手を選ぶ時代になっている」として、アロット自体の確保も難しい状況を説明した。

同氏は、こうした仕入現場を放置しては、旅行者に提供する素材が不足することも懸念され、商材確保を見直す必要性を強調。旅行会社とサプライヤーがともに成長するための提言として以下を挙げた。

  1.  グローバル水準の需要
  2.  仕入責任を果たすための販売努力
  3.  地域経済貢献への意識

同氏は、さらに「大量発注が仕入強化にならない時代になっている。」と指摘。サプライヤーの直販化は避けられないもので、パートナーをリスペクトし「サプライヤ―に対する価値の創造を提供することも重要」と旅行会社の経営者に呼びかけた。


▼旅行会社に求められるのは「高い知識とコンサルティング機能」

クラブツーリズム 海外旅行部長 手塚秀一氏

クラブツーリズムの海外旅行部長、手塚秀一氏

クラブツーリズムの海外旅行部長、手塚秀一氏は、今後50年でテクノロジー向上に伴い旅行スタイルが変化するだろうと独自の予想を発表した。これは、超音速機(HST)や次世代リニアモーターカーによって移動時間が大幅に短縮されることが要因で、「旅行日数の短縮」と「目的重視の現地滞在」が顕著に。また、ITを活用することで言語の壁がなくなり、AR(拡張現実)の世界が広がり遠隔地の体験がバーチャルで可能になる時代が訪れれば海外旅行自体が「特別なことではなくなる」と指摘した。

こうした生活スタイルの変化で、手塚氏は旅行者が必ず「宇宙旅行にたどり着く」時代がやってくるという考え。一方で、技術が発達した50年後でも旅行者が「未知の場所を訪れるワクワク感」と「期待を超えたときの感動」を持ち続けるであろうという点を強調した。こうした考えから、旅行会社が50年後に生き残るキーワードを「高い知識の専門家集団とコンサルティング機能」であるとまとめた。

また、手塚氏は紙媒体を中心に展開したクラブツーリズムでも「この数年のウェブ化でお客様が相当変化していることを感じている。」と言及。こうした傾向から同社はウェブへのシフトに取組んでおり、2013年11月に顧客データ部門とウェブ部門を統合。従来は支店ごとの販売体制だったが、統合された部署が各箇所を横断的に一元化しているという。

なお、同会場で紹介された他プレゼンテーションは以下の通り。

なお、冒頭のプレゼンテーションでは、林田氏が50年間での「海外旅行マーケットの変遷」について解説。海外渡航が始まってからの50年を振り返りつつ、旅行会社の商品提供が増加するにともなって海外旅行市場が伸びてきた実績を示し、「旅行会社が果たしてきた役割は大きい」と旅行会社の役割を強調。今後50年間も変わりつつある環境に対応しながら、業界全体として同じくこの役割を果たしていく必要性を語った。

トラベルボイス編集部:山岡


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