ホテルコンサルタントの堀口洋明です。
今回はベストレートギャランティー(最低価格保証)について改めてご紹介します。
ベストレートギャランティーとは、ホテルや旅館など宿泊施設の公式ホームページが一番安くなっていることを保証する制度です。保証されているわけですから、いろいろな予約サイトで一番安い料金を探し回る必要がないので、安心して公式ホームページから予約してくださいと、そういう事です。
楽天トラベル や じゃらんネット といったインターネット予約サイトから予約が入ると、宿泊施設は手数料を払うことになります。契約条件で手数料は異なるのですが、概ね予約額の8~10%程度と思っていただいて結構です。JTB や 日本旅行 などの旅行会社からの予約には、更に多くの手数料が必要となります。こちらも概ね予約額の15%程度です。
手数料がかかるのに、宿泊施設がインターネット予約サイトや旅行会社などの予約経路を利用するのは、その分多くのお客様を集めてくれるだろうという期待からです。ですが、やはり手数料がかからないほうが企業経営を考えるとありがたい訳で、そこで生まれたのが「ベストレートギャランティー」なのです。
インターナショナルホテルチェーンが始めたベストレートギャランティーは、日本国内でも主要なホテルチェーンはもちろん、独立系のホテルや旅館までに広がってきています。
▼ インターナショナルホテルチェーンの例
▼ 国内ホテルチェーンの例
▼ その他のホテルの例
▼ 旅館の例
少々ご面倒かもしれませんが、ぜひリンクからそれぞれのベストレートギャランティーの内容をご覧ください。よく見ると、「価格に違反があった場合に宿泊施設側がペナルティを払う」タイプのものと、「最低価格を宣言するだけ」のタイプのものがあることがわかります。
便宜上、ペナルティを払うものを「保証型」、最低価格を宣言するものを「宣言型」と呼ぶことにしてみましょう。
【保証型】
- スターウッド 最低料金から10%値下げ または 2000ポイント付与
- ハイアット 最低料金から20%値下げ
- ヒルトン 最低料金から50米ドル相当値下げ
- ソラーレ 無料宿泊券提供
【 宣言型】
- ワシントンホテル
- 東急ホテルズ (※ただし対象は会員料金)
- ホテルピエナ神戸
- 鳥羽国際ホテル
- 箱根湯本温泉の旅館 | ホテルおかだ
- 霧島温泉 優湯庵
※ 公式ホームページの情報をもとに筆者独自調べ
ベストレートギャランティーに対する取り組みで面白い事例があります。
Plan・Do・Seeのホテル「オリエンタル」と「ルイガンズ」では、公式ホームページの予約機能(ブッキングエンジン)に、楽天トラベルや一休といったインターネット予約サイト、JTBや近畿日本ツーリストといった旅行会社の料金を同時に表示することで、自社サイトが最も安い料金であることを明確に表示しています。
>>> http://www.orientalhotel.jp/allrates/
何と比べて「最低価格」とするかは微妙に書き方がそれぞれ異なっていますが、概ね下記の条件となっています。
- 同一ホテル
- 同一プラン
- 同一宿泊日(到着日・出発日)
- 同一人数
- 同等客室
- 同一チェックイン・チェックアウト時間
- 同一精算方法
また、クローズドマーケット用料金(企業契約料金等)や旅行会社向けの料金などは対象外となります。
ベストレートギャランティーは、実は「チャネルコンバージョン」という「予約にかかる費用がなるべく小さい予約経路に誘導する」という戦略の一部です。
予約にかかる費用は「ディストリビューションコスト」とも呼ばれます。代表的なものは手数料ですが、電話予約にかかる人件費や公式ホームページの維持管理費用なども含みます。
この点から、電話予約の方が公式ホームページの料金より高く設定する宿泊施設もあります。沖縄にあるLCCのホテル版がコンセプトの「かりゆしLCH泉崎県庁前 」は、電話予約の場合は1泊毎に220円の手数料が必要になるそうです。
ベストレートギャランティー以外のチャネルコンバージョンの代表的な手法には以下のものがあります。
- 最後まで予約できる (ラストルームアベイラビリティ)
- 最も早く予約できる (プライオリティリザベーション)
- ここしかない商品(部屋)がある
導入している宿泊施設は増えているのに、ベストレートギャランティーはなかなか一般消費者に浸透していないように思えるのは何故でしょうか。
それはインターネット予約サイト各社の予防策の影響もあるでしょう。
例えば、海外のインターネット予約サイトであるエクスペディアは、実際に最低価格保証を提供しています。
http://www.expedia.co.jp/corporate/best-price-guarantee.aspx
インターネット予約サイトのポイント制度の影響も大きいでしょう。
宿泊施設も独自のポイント制度を持っていることがありますが、ポイントをためる機会やポイントを何に使える汎用性という点では、インターネット予約サイトには及びません。結果、多少の料金の差よりもポイントがたまるほうが嬉しいというお客様もいらっしゃるわけです。
*参考:オンライン販売の強みとなるポイントサービスが語られている記事
これからベストレートギャランティーがどのように広がっていくのか、お客様・宿泊施設・旅行会社の3者にとって良い方向に普及していくことを願っています。