【秋本俊二のエアライン・レポート】
乗客の“つぶやき”からトラブルを解決
デルタ航空のアクティブ・サポートを解説
ある航空会社を乗り継いで目的地に向かう予定が、悪天候などの理由で到着が遅れ、予約していた次の便に間に合わない。よくあるケースだ。乗り継ぎ便を変更するには、どう手続きすればいいのか? その手続きは、経由地の空港のどこで? 電話で助けを求めることはできないか? 困り果ててしまう人も多いだろう。
そんなトラブルを迅速に解決している事例がある。デルタ航空の通称「ソーシャルメディア・ラボ」と呼ばれるチームだ。搭乗予定の便が欠航したり、到着便に遅延が生じて乗り継げなかったりすると、最近はTwitterなどに不満を書き連ねる人が増えてきた。そうでもしないと、怒りが収まらないのだ。乗客のそうした“つぶやき”を素早くチェックし、対応しているのがソーシャルメディア・ラボである。
リアルタイムで顧客サポートを行うTwitterアカウント「@DeltaAssist」をデルタ航空が開設したのは2010年10月。そこに専門スタッフを配置し、乗客のトラブルなどの解決に当たっている。以下は、米国アトランタで実際にあった例だ──。
乗客: フライトが遅れていて、アトランタからの乗り継ぎ便を逃しそうだ。何としてでも今日中に移動しなければならないが、どこへ電話していいかもわからない。
DeltaAssist: フライトの遅延、誠に申し訳ありません。予約課の電話番号は○○○○ですが、お客さまの航空券番号(予約番号)をダイレクトメールで送っていただければこちらで担当させていただきます。
乗客: ありがとう。いま乗っているフライトは4092番で、乗り継ぎ便は3929便です。
DeltaAssist: お客さまのご予約を1378便に変更しました。こちらでご移動いただけますでしょうか。
乗客: 助かった。いまEメールで予約確認書も受け取りました。迅速な対応をどうもありがとう。
先日、アトランタにあるデルタ航空の本社を取材した際に、私はこのソーシャルメディア・ラボを訪ねてみた。当初は1名の担当者で試験的に開始したサービスだったが、2015年1月現在では総勢30名にチームが増強されている。全員が過去に予約課に勤めたことのあるエキスパートだ(冒頭の写真がそのメンバー)。
なかにはカスタマーケアやグループ旅行部門、レジャー旅行部門での勤務経験者も。利用者からのつぶやきに対し、英語のほかスペイン語、ポルトガル語などで対応している。2013年11月からは「@DeltaAssist_JP」も開設して日本語でのサポートも始まった。
TwitterやFacebookなどのSNSを活用する航空会社は増えているものの、その運用は広報やマーケティング部門に任せているケースが多い。自社のPRや、投稿内容をチェックして顧客の声に耳を傾けるという程度の利用にとどまっている。デルタ航空のように顧客サービス部門が管理・運営している例は珍しい。専門チームでトラブルを解決し、その結果としてファンを定着。サポートを受けた当事者が実際にあった出来事をSNSで拡散させることで、ファンがさらに広がっていくという効果もある。
先ほどの事例の乗客もその後、Twitterで「@DeltaAssistのサービスを利用しました。素晴らしいカスタマーサービスに、涙が出そうです」と報告していたそうだ。
デルタ航空では現在、アメリカ国内線ではほぼ全便で機内Wi-Fiが使えるようになった。空港など地上にいる乗客だけでなく、最近はフライト中の機内からのツイートも増え、ソーシャルメディア・ラボのスタッフたちは忙しく対応に追われている。