サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は、2015年の春季生活闘争の妥結結果を発表した。これによると、36組合が実質的な賃金改善(賃金カーブを維持したうえでの賃金改善)で合意を得た。(2015年6月19日現在)
サービス連合では、中期的な賃金目標「35歳年収550万円」に向け、月例賃金の改善を焦点とし、昨年に続き全ての加盟組合で「0.5%以上の実質的な賃金改善」に取り組んだ。要求書を提出したのは180の加盟組合のうち138組合(観光・航空貨物業75組合、ホテル・レジャー業63組合)で、賃金改善要求は104組合、実質的な賃金改善要求は84組合。このうち24組合が、2014年春闘に引き続き実質的な賃金改善の回答を得た。サービス連合では全体の数からすればまだ少ないとしながらも、着実に改善回答を引き出していると評価する。
年間の賃金改善額は、集計できた45組合の平均で6338円。前年よりも32円低いものの、改善率は2.15%と前年並みを維持し、2013年春闘の5638円を上回る結果となった。実質的な賃金改善に限ると集計できた20組合の平均は2080円。改善率は0.7%で、目標の0.5%を上回った。ホテル・レジャー業では前年を下回ったが、これについては経営側が人材投資の必要性を認識しつつも、最終判断で設備投資を重視した宿泊業者が多かったためとしている。
一時金では、合意・妥結した27組合の平均で3.62か月、前年より0.34か月増。ただし、夏季一時金は1.62か月で0.05か月減となった。これについては、昨年夏季の伸びが良かったことの影響だとするが、リーマンショック以降のなかでは高い水準にあるとしている。※観光・航空貨物業とレジャー・ホテル業、それぞれの妥結状況は下記に記載。
このほかの要求内容では、契約社員やパートタイマーの待遇改善に取り組む組合が増加し、賃金改善は50組合中36組合が合意した。最低保証賃金では福島県と石川県を除く45都道府県で水準が引き上げるとなったなか、合意が6組合増加。要求水準は下回ったものの、最低保証賃金の協定化を実現した組合もあり、着実に前進していると評価する。今後も、魅力ある産業として働き続けられるよう、全ての加盟組合が協定化できるよう取り組みを強化していく方針だ。
また、勤務間に一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル規制の導入」に向けた合意など、サービス連合が目指す年間1800時間の総実労働時間実現への取り組みも進んでいることをアピール。合意に至らずとも、経営側から来年度以降の賃金制度改定や引き上げの考え方を行き出した組合もあったと成果を強調した。
なお、2015年度以降もこれまでの方針を継続。2015年秋闘では一時金を中心にベアにも取り組む。2016年春闘でも、2015年の取り組みをベースにしつつ、物価上昇や2017年に実施される消費増税を踏まえ、生活防衛の観点を強化し、取り組みを進めていく方針だ。
【観光・航空貨物業】
- 賃金改善額:31組合平均6865円(改善率:2.20%) ※2014年:6767円(2.20%)
- 実質的な賃金改善額:18組合平均2197円(0.75%) ※同:1664円(0.51%)
- 年間一時金平均月数:17組合平均3.94か月 ※同:3.68か月
- 夏期一時金平均月数:56組合平均1.81か月 ※同1.89か月
【ホテル・レジャー業】
- 賃金改善額:14組合平均4687円(改善率:1.95%) ※同:5735円(2.16%)
- 実質的な賃金改善額:2組合平均833円(0.26%) ※同:1214円(0.44%)
- 年間一時金平均月数:10組合平均3.08か月 ※同:2.72か月
- 夏期一時金平均月数:29組合平均1.25か月 ※同1.24か月