楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、契約の宿泊施設を対象に開催した「楽天EXPO2015」のトークショーに登壇し、2030年に3000万人とする訪日外国人旅行者数の政府目標に対し、「2030年までに1億人は可能」との考えを示した。(写真右:三木谷氏、左:進行役の日経ビジネス編集委員・大西康之氏)
これは、三木谷氏が代表理事を務める経済団体「新経済連盟」の政策提言にも含めているもの。今回は、観光大国フランスの外国人訪問者数が年間1億人、米国が9000万人という現状や、年間30%強であるアジアの観光産業の成長率を踏まえ、「いろいろな障壁を取り除けば、1億人は個人的には楽勝だと思う」と言及。
現在、訪日外国人の1人当たりの国内消費額が15万円であるが、「あと15年のうちに(関連サービスを)充実させれば30万円に倍増することも可能。実現すれば30兆円産業になる」とも述べ、観光産業が国の抜本的な経済成長の中軸となるポテンシャルがあることも強調した。
そのために必要なこととして、交通手段の低価格化と通信環境を提示。交通手段では「アジアの観光産業の成長の源泉はLCCによるもの」とし、訪日時及び国内での移動におけるLCCの重要性を語った。また、通信環境については無料Wi-Fiインフラが整備されれば「翻訳や多言語、位置情報を活用したサービスがどんどん生まれる」とし、その“スマートルネッサンス”がもたらす効果も説明。特に旅行者と現地の人の意思疎通が向上すれば「旅行がより楽しくなり、もっと旅行をするようになる」とメリットを語る。
ただし、インバウンドの成長には「国内観光がきわめて重要」とも指摘。「日本人に人気の場所だからこそ、(外国人観光客にとって)価値がある」とし、国内観光を中心にインバウンドを増やしていくバランスの重要性を説いた。
また、2020年のオリンピックまでに行なうべきこととしては、「おもてなし(サービス)」「安全面の確保」「キャパシティ不足の解消」を提示。特にキャパシティについては、「自民家の活用がでてくる」とも述べた。
冒頭に語った訪日1億人時代に向けても「パリではホテルが取れなくなっている」状況を紹介しつつ、議論が必要とした上で民家活用の必要性に言及。ただし、「当然、ホテルが頂点になり、宿泊費はますます上がる。民家活用で裾野が広がって、頂点が高まる構造になる」との展望を示した。