中国最大オンライン旅行会社「Cトリップ」の日本戦略を聞いてきた -旅行業登録で2016年が転機に

2015年の訪日中国人旅行者は500万人まであと一歩の499万人に達し、最大の訪日マーケットとなった。中国最大のオンライン旅行会社(OTA)シートリップ(Ctrip)の日本法人代表・梁穎希(レオ・リャン)氏は「日本は、まず取らなければいけない市場」と話す。

梁氏によると、中国本社サイドでも日本を最重要マーケットとして位置づけているという。現在の中国人アウトバウンド旅行者は約1億人。日本への旅行者も安定的に伸びていくと期待されているなか、シートリップ・ジャパンが進める戦略を梁氏に聞いた。

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2016年から日本でランドオペレーションを開始

1999年に設立されたシートリップは中国最初にして最大のOTA。歴史はまだ浅いが、中国が14億人といわれる巨大な旅行市場に拡大していくなかで、同社も大きく成長してきた。その日本法人、シートリップ・ジャパンは、初の自社投資による海外法人として2014年に設立。梁氏は2013年12月に同社に入社したのち、東京に移り、シートリップ・ジャパンの立ち上げで中心的な役割を果した。

年間500万人の中国人旅行者が訪れるようになった日本は、「まず取らなければいけない市場」と梁氏は強調する。本社サイドも昨年、海外デスティネーションのなかで日本を最重要マーケットとして位置づけたという。

その日本で、シートリップ・ジャパンは着々と事業基盤を整えている。設立当初は日本の旅行素材の仕入れ会社として機能していたが、2015年10月に第三種旅行業を取得。同月には日本旅行業協会(JATA)への加盟を済ませ、12月には中国人旅行者のオペレーションを管轄する中国連絡協議会(中連協)にも加盟。昨年末には観光庁関連の手続きをすべて完了した。

梁氏は「独立した旅行会社として、今年からは部分的だがランドオペレーターとしての機能を自社でやり始める。バス、レストラン、宿泊施設との直契約やガイドの育成のほか、自社商品の造成も進めたい」と明かす。

ただ、すべてのオペレーションを自社で行うには「中国人のインバウンド市場はあまりにもボリュームが大きすぎる」(梁氏)。すでに仕入れやオペレーションなどで日本のパートナーと関係を築いており、その関係も継続していく。本社の方針も同様で、梁氏は「現地のパートナーとの関係を大切にしていく」考えだ。


梁穎希(レオ・リャン)氏

中国人の訪日サービスの充実を最優先

現在、シートリップ・ジャパンの主戦場は中国から日本へのインバウンド市場。日本人向けに中国のホテルや鉄道などを予約する日本語サイトとアプリも展開しているが、規模はまだ小さく、「まずは中国人旅行者へのサービスをしっかり提供すること」を最優先する。

シートリップは昨年12月、プライスライングループと資本関係を強化。上海の投資会社からの投資も含め合計5億ドルを転換社債で受けることにした。これにより、プライスライングループはシートリップの発行済み株式のうち15%を保有することになる。

シートリップが、エクスペディアやブッキング・ドットコムのように、日本市場に参入し、日本人向けの予約サービスを始める可能性はあるのだろうか?

梁氏は「確かに日本は良い市場だとは思うが、今は中国のアウトバウンドだけで手一杯。日本市場に参入すると、これまでのパートナーが一気に競争相手になる可能性もあるので、慎重に考えていかなければいけない」とのスタンスだ。ただし、「将来は分からない」と含みも残した。

シートリップ・ジャパンは昨年8月、日本のレストラン予約で「一休」と提携。航空会社では、JAL・ANAとマイル提携している。「現地パートナーとは、競合関係よりも協力関係をつくっていきたい」とする一方、「シートリップ・ジャパンの成長のスピードや中国の本社の意向にもよるが、将来的に日本に関わるすべての業務をやることになり、独立採算となったら、売上のためにいろいろ考えていく必要があるだろう」とも付け加えた。


民泊は大歓迎、民泊会社との契約も検討

梁氏は、ルール作りで議論が進む民泊についても言及。出国から帰国までの旅程すべてがシートリップのターゲットになることから、「選択肢が増えることは大歓迎」との立場だ。そして、日本の民泊ベンチャー会社との契約を検討していることも明かした。

「ホテルが取れない、航空券が取れない国に旅行者は行かない。安いホテルも、高級ホテルも、そして民泊もあり、交通手段も豊富に選択肢がある国であれば旅行者は間違いなく増えていく」。自社の顧客だけでなく、訪日中国人市場全体のパイが広がることが、シートリップ・ジャパンのビジネスを拡大していくうえで重要という考え。そのためにも「民泊は大きな存在になる」と話す。

「Ctrip」 中国語版サイト

今年の目標は宿泊施設3000軒を掲載へ、スタッフは2年で3倍に

シートリップ・ジャパン立ち上げ時には2人だったスタッフは昨年末で22人に増えた。今年は35人まで、今後2年以内には60人くらいまで増やし、仕入れと営業を強化していく。

「多くの宿泊施設で中国人受入の理解が進んできた。時間と人は必要になるが、それほど仕入れが難しいとは思わない」と梁氏。宿泊施設との契約は2014年で約1000軒。今年の目標として3000軒を掲げる。同じく外資OTAのブッキングドッコムや、エクスペディアと比べると規模はまだ小さいが、梁氏は宿泊施設の在庫を増やしていくことに自信を見せた。


聞き手 トラベルボイス編集部 山岡薫

記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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