世界2大OTAプライスライングループの旅行予約サイト「ブッキング・ドットコム(Booking.com)」が日本でのビジネス展開をさらに強化していく。このほど日本支社トップらが、日本における今後の戦略を発表。本年度中にも法整備が固まる予定の民泊の取込みや事業所の拡大、新たなキャンペーン展開などで日本への投資を継続する。
同社の北アジア地区リージョナル・ディレクターのジェームス・ホワイトモア氏によると、同社が注力する北アジア地区の中でも日本は伸びが突出している市場。2012年と2015年の売上の伸びを各市場で比較すると、首位は台湾の996%増、続いて日本市場が821%増で2位となっている。ホワイトモア氏は、同氏が同職に就任した4年前は日本市場が「新たな市場」としてのチャレンジだったが、この4年で成熟市場に成長したと評価する。
この伸びを牽引したのがインバウンド。世界から日本への渡航への意欲は高く、同社の実績による人気ランキングでは、2012年32位から2015年には10位、2016年上半期には8位と上昇。ホワイトモア氏は、「安定的に10位以内に入ってくることを目指していきたい」と話す。
実績による国籍別割合では、日本国内の外国人予約を除くと、首位が中国、台湾、韓国、タイと続いた。同氏は、今後はこうしたアジアの顧客がリピーター化しながら、さらに増加することを予測。日本の訪問先でも、「ゴールデンルートだけでなく箱根、沖縄の他、地方のスキーリゾートに向かうことになるだろう」と考えているという。
一方で、日本人の国内旅行利用も増加した点を強調。同社は昨年よりテレビCMや各種キャンペーンの展開などで、認知度向上に努めてきた。こうしたオライン広告キャンペーンでは、開始前と比較して認知度が2倍に増加したという。2014年までの人気都市はパリ、ロンドンなど海外都市だったが、認知向上に伴って2015年には東京、大阪、京都などの大都市が中心となった。
こうしたことから、今後も国内テレビCMなどの展開は継続していく考え。今年7月からは新たなテレビCMも開始、食(フード)にフォーカスしている。今後は、スポーツや温泉などをテーマに旅への情熱を表現していくという。
今後の展開については、7月1日付で日本統括リージョナルマネージャーに就任したアダム・ブラウンステイン氏が説明。日本における積極展開は以下の通りだ。
宿泊施設の拡充、2016年中に1万軒達成へ -民泊への参入も
2015年末の時点で、国内取扱い宿泊施設は6800軒。これを2016年中には、3割増の1万軒に増加させる。現段階では8800軒にまで増加しており、アダム氏は目標の達成に自信を示す。
一方で、施設数の増加だけでなく宿泊施設の選択肢も増やしていく方針。現在もホテル・旅館のほか、ゲストハウスや宿坊など個性ある施設タイプを掲載しているが、法整備が整った段階では民泊の取込みも行っていくという。同社は、世界においてはすでにバケーションレンタルなど、数多くの民泊の取扱いを行っている。こうした世界での展開も踏まえて、アダム氏は「ユーザーのニーズに合わせて施設の種類や質、ロケーションなどに対応していくことが重要」との考えを示した。
なお、同社は東京・大田区の国家戦略特区における民泊の取扱いを開始。民泊施設の取扱いでは日本の法令を遵守しながら進めていく方針を強調している。
営業拠点の拡大、季節限定の営業所展開などフレキシブルに
アダム氏は、日本市場において成長のカギとなるのは「人材」と話す。これは、宿泊施設パートナーとの関係性で、データやトレンドの理解を深めるためには同社営業職との密なコミュニケーションが欠かせないとの考えからだ。
こうしたことを踏まえ、契約宿泊施設の増加を目指すにあたり、営業拠点の増加も検討しているという。現在のところ、同社営業所は国内に5か所。ユーザー動向にあわせて、今後はスノーシーズンの需要が高い長野や新潟などに季節限定の営業所を開設するなど、フレキシブルな対応で拡大していくという。
体験の提供を模索、パートナー宿泊施設の知見を活かして
同社は宿泊施設に特化した旅行予約サイト。一方で、本社を置くオランダ・アムステルダムでは実験的に博物館・美術館のチケット取扱いを始めている。アダム氏は、ユーザーがより深い体験を求めているトレンドがあることをから、提供の可能性があることに言及。「パートナー宿泊施設の知見を活かしながら、パートナーとの連携も深めていきたい」と語った。
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世界2大OTA「プライスライン」副社長に聞く、ブッキング・ドットコムの戦略 ー 民泊からタビナカ事業までトラベルボイス編集部 山岡薫