ホテル予約サービスの最前線で、新たな火種が浮上している。にらみ合っているのは、OTA(オンライン旅行会社)とエアビーアンドビー(Airbnb)だ。2018年2月末にAirbnbが自社プラットフォーム上でのホテル取り扱い開始を発表して以来、世界の旅行関係者の間には波紋が広がっている。
そして、Airbnb側は間髪を入れず、さらなる攻撃の一打を展開。このほどスタートした広告キャンペーンでは、OTAがホテルから徴収するコミッション金額について、真正面から挑戦状を叩き付けた。昨今、ホテル各社は直接予約を増やそうと、あらゆる方法を使って積極的に動いているが、今回のテーマは、特に小規模ホテルの流通のあり方に一石を投じている。
Airbnbの広告メッセージは、 “大手OTA”への依存を減らす手段の一つとして、Airbnbを検討してみませんか? というもの。特に強調しているのは、同社の販売手数料、いわゆるコミッション率が3~5%程度と、非常に安価で済むことだ。従来よりも低いコミッション体系の登場は、OTAのビジネスモデルを揺るがす脅威となる。
AirbnbがブティックホテルやB&B向けに発表した“公開レター”の内容によると、ホテルとの間で長期間の契約は不要。検索の際は、ホテルは一般のリスティングで表示される貸し部屋や一棟貸しなどと区別して扱われることや、海外市場からの需要喚起に役立つ機能もアピール。さらに「新しいツールが間もなく利用可能となる」と付け加えている。
一方、OTA側はさらなる価値をホテルに提供できるのか、その手腕が問われている。昨年12月、エクスペディアは、ホテル向けのテクノロジー・ソリューションを拡充する計画を発表。ホテル流通の一つと見られがちな現状から脱却し、“ホテルのプラットフォーム”としての足場固めを進めている。
「ホテル側は(現状に)不満」との調査結果も
またAirbnbでは、ホテルのOTAに対する意識調査も実施している。スポンサー企業付きの調査というものは、常に相応の見方をする必要はあるものの、OTAの問題点などを示唆する内容は、一読に値する。
この調査結果が正確で、ホテル側の本心を反映したものなら、流通の現状において、新しいプレイヤーを受け入れる余裕は、まだたっぷりある。競争の促進は、基本的に歓迎されるべきだ。質の向上と値下げにつながり、ホテルにとっても、旅行者にとってもありがたい。
調査のサンプル数は小さく、中小規模の宿泊施設オーナー49人のみ。回答者の大半(74%)はB&B経営者で、ブティックホテル経営が20%、残りはホテル、イン、モーテルなど様々。回答者の中には、オーナーではない総支配人も入っている。
このカテゴリーの宿泊施設にとって、大手OTAの予約・登録手数料は、全く論外ではないものの、高額すぎることが明らかになった。
以下の表は、「予約サイト各社が徴収するコミッションや登録手数料について、どう思うか?」という問いに対して「高すぎる」と回答した人数の割合だ。
さらに、カスタマーサービスについても、回答者の4人中3人ほどが「問題がある」と答えている。小規模な宿泊施設の要望に沿うことは、なかなか難しいようだ。Airbnbがこの市場での成功を目指すならば、約束した通りのサービス実現に向けて、かなりの努力が求められるだろう。
調査結果を踏まえつつ、Airbnbでは、自分たちは他とは違う、もっとよいカスタマーサービスが提供できるとの考えだ。だが、世界中に各地域を担当するマーケット・マネジャーを配し、ホテル対応を行うには相応のコストがかかる。簡単ではない。
以下の表は「予約サイト各社のカスタマーサービスに対する満足度は?」という問いに対して「とても満足している」と回答した人の割合を示している。
コミッション率が下がり、その分、資金的な余裕が生まれたら、ホテルは何に投資するのだろうか。施設の拡充、賃金アップ、雇用人数の拡大、あるいは利益として計上することだって、もちろん可能だ。
以下の表は「もし予約サイトに支払うコミッション率が3~5%になった場合、その分の余剰資金を何に投資しますか?」という問いに対する回答だ。「改装や施設のアップグレード」は61%、「賃金の値上げや雇用条件の改善」は45%、「従業員数を増やす」は33%との結果になっている。
コミッション料の低下で浮いた資金が、そのまま施設やサービス改善に充当され、宿泊客の恩恵につながるとは限らない。
とはいえ、Airbnbからホテルへの問いかけは、今後、大きな議論を呼びそうだ。同社の論点はこうだ。「我々と組めば、支払い金額は少なくなり、その分の資金をゲストの滞在向上に充てることができる。顧客満足度がアップし、ロイヤルティが高まり、好循環が生まれる」。
調査結果の全文は以下から参照できる。
※編集部注:この記事は、当社が提携している世界的な観光産業ニュースメディア「トヌーズ(tnooz)」に掲載された英文記事を、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。