国際航空運送協会(IATA)は、航空機排出物による気候変動影響を軽減する目的で検討中の「航空課税」や「環境税」について、EUに対する提言を公表した。同協会が実施した調査結果にもとづき、乗客への負担や使途の再検討を求めるもの。この背景には、2019年2月、EU理事会でオランダがEU規模の航空課税を提案、欧州各国がそれに同調している状況がある。
IATAの調査によれば、航空機に関する環境問題について旅客が政府に期待する優先課題は、「持続可能な航空燃料の開発」(64%)、「環境問題解決のための新技術の研究開発や運用向上」(62%)。それと対照的に、用途が不明瞭な「環境税の課税」の支持者は22%にとどまった。
さらにEU各国でおこなった調査によれば、「政府が『環境税収』を環境対策に活用すると信じているか」との問いに対し、フランスでは81%が「信用できない」と回答。同様に、ドイツでは66%、オランダでは53%、スペインでは73%、英国では66%が懐疑的に感じていることが判明した。
IATAはこのような結果を受け、政府は市民の声に耳を貸すべきであり、航空税を課すことが解決策ではないと提言。航空各社はすでに、CO2排気量削減のための様々な措置を講じ、乗客1人あたりの排気量を半減する新機材に数十億ドルを費やしているとして、新たな航空燃料の開発に投資を求める考えを示している。
なお、IATAは2019年7月、航空運賃に新税を課す計画を発表したフランスに対して抗議の声明を発表。課税によりフランス経済と雇用のリスクが発生すると説明している。
EU理事会でオランダが提案した「航空税」に関する提案書(英語、PDFファイル)IATA フランス政府に対する抗議文(英語)