GDSアマデウスは、旅行産業の未来展望をまとめたレポート「The Future of X」を公表した。このレポートは、今後10年間の旅行者ニーズや動向の変化、進化するテクノロジーの影響などについて、世界のOTAや総合旅行会社、航空会社、一般企業、スタートアップなどのリーダーへの聞き取り調査をもとにまとめたもの。このほど、日本の旅行・テクノロジー系メディア向けに発表会を行った。
アマデウスは66億ユーロのR&D投資(2004年からの累計額)を行い、5000人以上のエンジニアを抱えるテクノロジーカンパニー。同社オンライントラベル担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント/アジア太平洋地域マネージング・ディレクターのミーケ・デ・シェッパー氏は、同社における1秒間のトランザクション数がグーグルを上回りアマゾンにも匹敵する規模に達するとして同社の規模感を強調した。
デ・シェッパー氏は、昨年までエクスペディア・グループで法人旅行を扱う「Egencia」のシニア・バイス・プレジデント兼最高コマーシャル責任者を務めていたオンライン旅行の専門家だ。同氏は、レポートで示しているオンライン旅行の現状について「モバイルの進化により旅行者は指先一つで簡単にコンテンツ情報を入手できるようになった。一方で情報過多に陥っている。したがって情報のキュレーション(整理)とパーソナライゼーションが必要だ。」と指摘。分散するコンテンツをつなぎ、情報を集約して旅行者に適切に提供するためにオンライン旅行会社(OTA)と総合旅行会社のいずれにとっても、他者とのパートナーシップを構築する重要性が増しているとの見方を示した。
続けてコンテンツの提供者側の状況にも触れ、「旅行プロバイダーは提供する情報をコントロールしようとする傾向がある。これに対して旅行会社はコンテンツを統合し、他の情報ソースと組み合わせることによって商品提供しようとしている。そこでアマデウスはすでに欧州においてGDS、CRS、NDCの情報の統合を図り幅広いコンテンツを統合的に提供できる体制を実現している」と説明した。
総合旅行会社はテクノロジー導入が不可欠、特にAI
アマデウス・ジャパンの竹村章美社長は「総合旅行会社」の現状ついて「旅行手配だけでなくレストラン予約や旅先の観光情報など多岐にわたる情報が求められ、なおかつ直前の変更などにも即応できるスピードが求められている。総合旅行会社はこのようなトラベルビジネスの厳しい現実や時間との戦いを強いられている。」と説明。「しかしながら、アマゾンやアリババが実店舗を展開しているように、総合旅行会社が提供するヒューマンタッチの重要性は最終的にテクノロジーでは代替できないことも明らかだ」と、総合旅行会社の課題だけでなくその可能性にも言及した。
そのうえで「総合旅行会社が勝ち抜いていくには旅行会社自身が変化を受け入れ、テクノロジーを導入していくことが不可欠だ」と指摘。なかでも重要なテクノロジーとしてはAIを挙げ、「今後はAIが旅行者はどこへ行き何をしたいのかを類推したうえで予約において何をオファーすべきかを教えてくれる時代になる」とした。アマデウスは、AIを利用した20以上のプロジェクトに取り組んでおり、空港における搭乗者の動きをAIで把握するプロジェクトでは70%以上の確率で動きを予測できている状況だという。また、竹村氏は、チャットボットの『アマンダ』は1日1000件以上の問い合わせに対応しており、日本語への対応も検討していることも明かした。
「ビジネストラベル」については、企業と出張者の双方のニーズを満たすために「出張にかかわるすべてのプロセスを一つのプラットフォームで提供し管理できることが重要だ」(竹村社長)とし、「アマデウス・トラベル・プラットフォーム」ではすべてのコンテンツを集約して提供していることを紹介した。
さらに、「法人出張」では音声認識テクノロジーの重要性を解説。「出張者からの電話を瞬時に識別し、どの会社の誰からの電話かを音声認識することで、すぐに出張手配を開始するといったサービスが求められるようになる」(竹村社長)と予測した。
今回発表されたレポートは、「オンライン旅行」「総合旅行会社」「ビジネストラベル」「法人出張」「ホテル&ホスピタリティ」の5分野について。このうち「オンライン旅行」「総合旅行会社」「ビジネストラベル」「法人出張」の4分野は日本語でも閲覧できる。