韓国観光公社(KTO)は、2019年11月21日に東京支社の開設50周年記念イベント「韓国観光の夕べ」を開催した。韓国からは駐日韓国大使、日本からは国土交通大臣らが来賓としてあいさつを行い、現在起きている日韓政府間の厳しい現状を踏まえつつ、両国の未来を見据えた人的交流の重要性を訴えた。
駐日大韓民国特命全権大使の南官杓(ナム・ガンピョ)氏は、「韓国と日本は観光において真のパートナーだ。今後50年の交流が拡大志向になることを心より願っている」と、両国間での観光の重要性を強調。「両国関係について非常に心配している人が多いと思う」と、日韓関係の現状に触れつつ、季節の変化に例えて「冬は必ず春になる。韓日関係も近いうちに観光交流をもとに春の花のように色鮮やかに咲くようになると信じている」と述べ、関係改善に観光が果たす役割に期待を示した。
国土交通大臣の国土交通大臣の赤羽一嘉氏は、一度は中止となった旭川市と韓国・水原市の高校生交流事業が再開となったことに言及。「多くの地域で交流を継続する努力が続けられている。日韓両政府に課題があるときこそ、草の根の民間交流を絶やさない努力が大切」とし、国土交通省と観光庁としても、両国の人的交流の拡大に向けて全力で取り組む考えを話した。
日本旅行業界(JATA)会長の田川博己氏は、これまでの日韓の観光交流を「山あり谷ありの50年。谷の時は民の力で頑張り、山になった時にはさらに盛り上げてきた。今はちょうど谷間にあり、いまこそ民間交流の力強さを発揮する時」と呼びかけた。日韓親善協会中央会会長の河村健夫氏(衆議院予算委員長・日韓議員連盟幹事長)は、「危機を突破し、新しい時代を迎える50周年」との期待を込めた祝辞を述べた。
韓国観光公社は1969年に東京支社を設立。以来、50年間で相互の交流人口は当初の年間6万人から2018年には約1000万人にまで拡大。累計では約1億5000万人が往来し、そのうち日本人は7800万人が韓国を訪問した。
しかし今年は、両国政府の関係悪化で両国間の渡航需要は減少し、航空座席数も縮小。月間100万席~120万席(片道ベース)から、9月には15%減、10月以降も減少が続き、すでに訪日韓国人旅行者数は直近10月で65.5%減の19万7300人に。2か月続いての約6割減という大幅減、1月~10月の累計では18.1%減の513万1600人となっており、2019年通年の着地は2018年の754万人には大きく届かない見込みだ。
一方、日本人の訪韓旅行者数は直近9月には1.3%増の25万1119人、1月~9月までの累計では19.5%増の250万9287人。プラス推移となっているが、前年に北朝鮮のミサイル危機で減少した反動もある。KTOでは今年の日本人訪韓旅行者数は320万人超とみている。
KTO社長の案榮培(アン・ヨンベ)氏は、観光産業の環境変化にも触れつつ、「これまでの50周年を足掛かりに、日韓両国の旅行業界とともに新しいトレンドを踏まえた持続可能な観光を目標に、力強く羽ばたくための基盤を作っていく」と、次の50年に向けた相互交流への意欲を示した。