米国の旅行産業関連組織「USトラベル・アソシエーション」は、感染拡大が続く新型コロナウイルス(COVID-19)の旅行業界に与える影響についての最新の分析を発表した。それによると、旅行自粛によるアメリカ経済への影響は8090億ドル(約86兆7000億円)にのぼり、今年約460万人の旅行関連の雇用が失われる恐れがあると推計した。
この推計はツーリズム・エコノミクスが算出。USトラベル・アソシエーションのロジャー・ダウCEOが17日、トランプ大統領、ペンス副大統領、ロス商務長官との会談で明らかにした。
ダウCEOは、「旅行業界ではすでに悲劇的な状況は起きており、ますますその状況は悪化している。アメリカの旅行業界では約1580万人の雇用を生み出しているが、今後の事業の見通しが立たなければ、雇用を維持できなくなる。大胆な措置を即座に打ち出さなければ、回復には時間がかかり、事態はますます困難になる」とコメント。特に、ダウCEOは、旅行業界の83%が中小企業であることを強調した。
分析結果によると、輸送、宿泊、リテール、アトラクション、レストランなど旅行関連ビジネスの2020年の消費額は、前年比31%減、3550億ドル(約38兆500億円)を喪失すると試算。その規模は実に9.11同時多発テロ時の6倍になるとしている。
旅行業界単独で見込まれる損失は深刻で、アメリカの景気を後退させるだけの影響がある。2020年第2四半期で底を打ち、その後少なくとも3四半期は続くと見込まれる。また、旅行業界で見込まれる460万人の雇用喪失は、アメリカの失業率(3.5%〜6.3%)の倍にあたる。
こうした深刻な状況から、ダウCEOはホワイトハウスでの会談でアメリカ政府に対して1500億ドル(約16兆800億円)の支援を要請。旅行関連雇用の安定化を図るための基金の創設、旅行事業社に対する緊急資金支援、中小企業とその雇用を維持するためのSBAローンプログラムの最適化を求めた。
※円換算は1ドル107円でトラベルボイス編集部が算出