世界大手タビナカ予約「ゲットユアガイド」、来日したトップにその狙いと日本への注目度を聞いてきた

2009年にスイス・チューリッヒで設立されたタビナカ体験予約プラットフォーム「ゲットユアガイド(GetYourGuide)」。2012年にベルリンに本社を移し、欧米市場を中心に事業を拡大するとともに、アジア市場を視野に入れたグローバル展開への歩みを進めている。特にコロナ後は訪日市場の急回復を受けて、日本市場でのビジネス拡大に注力。今年10月には東京と京都でサプライヤー向けイベントを開催した。ゲットユアガイドは日本および世界のタビナカ市場をどうみているのか。共同創設者のヨハネス・レック氏とタオ・タオ氏に聞いてみた。

グローバル展開で日本は重要なマーケット

ゲットユアガイドの事業はコロナ後、世界的な旅行再開ブームに乗って、急速に回復した。レック氏は「現在の事業規模は、2019年水準の4倍以上になっている」と手応えを示す。約2年にわたる困難な時期を経て、まず主要マーケットである欧米の立て直しに注力し、グローバル展開の一環として、アジアでのビジネス拡大に乗り出した。そのなかで、最も注目している市場が日本だ。

レック氏は「ゲットユアガイドのプラットフォームで、日本はナンバーワンの旅先になっている。コロナ前と比較して、日本への旅行者は5倍に増加している」と明かしたうえで、「今後も日本には大きなビジネスチャンスがある」と強調した。

ビジネス拡大に向けて注力しているのが「本物の日本体験」(レック氏)。訪日リピーターが増えている中で、その傾向はより強まっているという。また、東京、京都、大阪から地方への旅行も増加。それに合わせて、ゲットユアガイドでも、地方での体験コンテンツの掲載にも力を入れているという。

さらに、チケットやスポットツアーだけでなく、最近では宿泊ツアーの販売も増やしているという。リック氏は「日本は、食、文化、温泉、自然などバラエティに富んだ体験が楽しめるデスティネーション」と評価する。

サプライヤーとの関係構築を重視

一方、タオ氏は、東京が訪日旅行のハブにならざるを得ないとしながらも、「特定の場所に人が集中している」とオーバーツーリズムの課題について指摘。そのうえで、「東京でも、東京タワー、スカイツリー、チームラボなどこれまでの定番とは違う体験を紹介し、分散化を進めていきたい」との考えを示した。

さらに、タオ氏は「東京のアトラクションは常に進化している。数年前に話題になった『ロボットレストラン』は、もうない。タビナカでは、小規模のオペレーターも多く、多様な体験を提供することで、彼らの経済的支援にもつながるし、たとえば、日本舞踊の体験などを提供すれば、日本文化の保護にもつながる」として、分散化の必要性を説いた。

タビナカ体験予約プラットフォームにとって重要な取り組みは、サプライヤーとの関係構築だ。リック氏も「最も大切なポイントで難しい点でもある」とする。この領域では、スタートアップ企業も多く、浮き沈みも激しい。

「おそらく、今人気の体験も5年後には無くなっていることも十分にありうる」とタオ氏。そのうえで、「ゲットユアガイドは、ビジネスの知識が不足している事業に対して、価値の付け方やより良いサービスの提供の仕方などを支援している」と話す。その一環として、日本のDMOとの連携も進めているとともに、サプライヤーとの信頼関係の構築やサプライヤー同士のネットワーク構築にも力を入れているという。今回の東京と京都でのイベントもその取り組みの一つだ。

(左から)共同設立者兼CEOのレック氏、日本オフィス代表の仁科貴生氏、共同設立者兼COOのタオ氏AIなど技術革新への投資を拡大

ゲットユアガイドは2023年、新たに1億9400万ドル(約300億円)の資金調達を行なった。この資金で技術革新などを進めている。

タオ氏は「ゲットユアガイドは過去5年以上にわたって、機械学習やAIに投資してきた。過去2年でそのソリューションはさらに拡大した」と明かす。現在、データサイエンスなどに携わるスタッフは30~40人、半数以上がテクノロジー関係のスタッフだという。

ビジネスのグローバル化を目指す中で、AIはパーソナライゼーションにつながるセマンティック検索(自然言語から検索結果を出す技術)のほか、多言語化、リアルタイム翻訳、チャットや自動応答などカスタマーサービスの進化を手助けしているという。また、サプライヤーに向けには、コンテンツの標準化や改善を支援。さらに、AIを社内オペレーションにも導入することで、業務の効率化も進めている。

タオ氏は「ゲットユアガイドは、タビナカ体験分野で、最も早くAIを取り入れた会社の一つ」と胸を張る。

一方で、競合他社もテクノロジーへの投資を拡大しており、タビナカ市場は群雄割拠の様相だ。ただ、リック氏は「テニスやサッカーのように、どちらかが勝って、どちらかが負けるといった競争ではないと思う」と話す。

リック氏によると、世界のタビナカの市場規模は2500億ドル(約38兆円)から3000億ドル(約46兆円)、全OTAが扱っているのはそのうち年間200億ドル(約3兆円)から300億ドル(約4.6兆円)に過ぎないという。

「タビナカ市場は、他の旅行分野とは異なるビジネス環境」であることから、ゲットユアガイドにとっても、サプライヤーにとっても伸び代は大きいとの考えを示した。

※ドル円換算は1ドル153円でトラベルボイス編集部が算出

トラベルジャーナリスト 山田友樹

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