トラベル懇話会は2025年1月10日、都内で第47回目となる新春講演会を開催した。主催者代表の挨拶に登壇した百木田康二会長は、今年、目指すべきことのひとつとして、「業界のステイタス向上」をあげ、人材不足の環境の中で、従業員の報酬とやりがいを改善し、誇りを持てる業界にしていくことが重要であると呼びかけた。
トラベル懇話会は旅行会社や航空会社・ホテル・ランドオペレーター・保険会社などの経営者から構成される旅行業界団体。
若者が海外旅行に行く意義、海外体験の重要性
百木田会長は、昨年、スローガンとして掲げた「観光完全回復の流れを実感できる年」の目標達成が持ち越されたと振り返った。海外旅行の回復が6~7割にとどまった要因について、為替や物価高などのほかに、若者の意識を指摘。「若者が海外旅行に行く意識を感じていない、若いうちにどれだけ経験して、成長後に家族を連れていくという連鎖を作ることが大事」との考えを示した。
来賓として登壇した観光庁次長の平嶋隆司氏は、昨年の好調な訪日、国内旅行需要を振り返り、「今年はこうした流れを確固たるものにすべく、しっかり取り組んでいく」と意気込みを示した。具体的な取り組みとして、観光庁が掲げる訪日客の地方への誘致、持続可能な観光地づくり、国内交流拡大の3点を提示。交流拡大では、双方向交流の促進の重要性に触れ、日本人が海外旅行をすることの重要性を改めて指摘。海外旅行の体験が改めて日本の魅力を再認識できる機会であることや、国際社会の変化に対応する感覚を養うベースとなることをあげた。
日本旅行業協会の会長、髙橋広行氏は、2024年の出国者数について1300万人前後でコロナ前の7割弱に着地するとみられるものの「着実に回復をしている」と言及。今年も海外旅行の完全復活が、JATAが最優先事項であることを強調した。
また、国内旅行活性化に向けてた施策のひとつとして、子どもが家族とともに旅行をする際に定められた日数が欠席扱いにならない「ラーケーション」制度の拡充が求められると提言。この制度が全国にひろがることで、旅行需要の平準化、分散化されることでオーバーツーリズム問題にも対応できるとして、「国内旅行の拡大への起爆剤になる」とうったえた。そして、講演会に参加するトラベル懇話会会員に対して「ラーケーションの意義を広め、それぞれの地域の首長への呼びかけもしてほしい」と呼び掛けた。
このほか、パンデミック後、各地で経験者の浅い従業員が増えている点を指摘。旅行者の安全確保が重要だとし、安全基準の厳格な評価や定期的な監査の必要性を指摘。JATAとして、旅行者の安全確保に向けた点検や研修を拡充し、安全への意識向上に取り組む方針を示した。
最後に、「今年こそは何としても海外旅行の完全復活を、三位一体(国内、海外、訪日)となったバランスの良いツーリズムを実現したい」と力を込めた。
その後の講演会では、ゲストとして高橋由伸氏(元読売巨人軍監督、野球解説者)と田中大貴氏(元フジテレビアナウンサー)が対談。『野球を通じて学んだ組織マネジメント』をテーマにトーク形式で対談がおこなわれた。