京都市は2025年1月14日、宿泊税を引き上げる方針を発表した。現行で宿泊客1人あたり200~1000円を課しているところ、最高額1万円に引き上げる。この方針を盛り込んだ改正案は、2025年2月の市議会に提案して可決されれば、総務大臣協議による同意などを得たうえで、2026年3月1日以降の宿泊から新税額を適用する。宿泊事業者のシステム改修をはじめとする準備・周知期間も考慮した。
引き上げが決定した場合の想定税収額は約126億円で、過去最多となった2023年度の52億円の約2.4倍。京都市の松井孝治市長は、記者会見で「宿泊税収を活用し、京都のまちの持続可能な観光とまちづくりを進める。魅力が向上することは、観光客、市民の双方に帰益することになると考えている」と語った。背景にはコロナ禍が明けて京都の観光人気が再燃し、観光客の一部エリアへの集中、ゴミをはじめとするマナー問題などオーバーツーリズムが深刻化していることがある。
5区分に改正、宿泊料金により傾斜
現行の宿泊税の額は、2万円未満の200円、2万円以上5万円の500円、5万円以上の1000円の3区分。見直しでは新たに6000円未満と10万円以上を設けて5区分とし、6000円未満が200円、6000円以上2万円未満が400円、2万円以上5万円未満が1000円、5万円以上100万円未満が4000円、10万円以上を1万円に改正する。
宿泊料金によって低価格帯は据え置き、ボリューム層は2倍、高額帯は4~10倍と傾斜をつけたのが特徴。「京都では、ラグジュアリーホテルが増加しており、例外的ではあるが1泊100万円を超える部屋もある。負担の公平性に配慮し、能力に応じた負担をいただくために最高額を1万円とした」(松井市長)
市民・観光客双方の利便性向上へ、都市基盤整備への充当も
京都市は、宿泊税充当額の概算で約130億円規模の財政需要が存在すると試算。このうち、市民・観光客双方の利便性向上や安心安全につながる都市基盤整備として道路などインフラ整備や災害対策など60億円を見込んでいる。松井市長はこの点について「京都市は常に人口の1割を観光客が占める状況だ」と言及したうえで、「すべでではなく、観光客の受益に応じた割合分を宿泊税として充当したい」との考えを示した。
なお、修学旅行生の課税免除など税額以外は現行制度を維持する。また、宿泊税のキャッシュレス支払いへの対応や、税額引き上げに伴うシステム改修やパンフレット作成といった事業者の負担を支援するため、特別徴収補助金の補助率3%は2025年度交付分から5年間は3.5%に引き上げる予定。交付上限額200万円も撤廃する。