ついに始まったバスの完全自動運転、本格運行は全国展開を、運転手不足で日本バス協会が要望

日本バス協会は20025年1月17日、通常理事会と新年賀詞交歓会を開催した。通常理事会の挨拶で会長の清水一郎氏(伊予鉄グループ社長)は、運転士不足による影響や改善に向けた取り組みとともに、国への要望を続けていた自動運転レベル4(特定条件下での完全自動運転)の本格営業運行や、完全キャッシュレスの実証実験が2024年末に開始されたことを説明。(人手不足・人口減のなか)「未来を切り開くのはテクノロジー」と述べ、バス事業が新時代へ歩みを進めていることを印象付けた。

完全無人運行が可能な自動運転レベル4の営業運行は、2024年12月に愛媛県松山市に本社を置く伊予鉄バスの松山観光港/高浜駅間の連絡バス往復1.6キロでスタート。清水氏は「モデルとして本物を育て、全国で使えるように広げていきたい」と意欲を示した。自動運転レベル4の本格運行についてはかねてから、国家プロジェクトでの推進を訴えており、令和6年(2024年)度の補正予算では関連事業に対し、予算額が従来の60億円程度から100億円に拡充されたという。

一方、深刻な運転士不足の解消に向けては「抜本的な対策は、待遇改善。これは賃上げをしていくほかない」と言及。その原資となる運賃の引き上げを定期的にできるよう、今後も要望していく考えを示した。

会長の清水一郎氏(伊予鉄グループ社長)

通常理事会では、各種取り組みやバス事業の業況などを説明。この中で、修学旅行の分散化について、従来から与党のバス議員連盟をはじめ、国土交通省や観光庁、文部科学省に要求をしてきたが、2024年12月には文科省が各都道府県の教育委員会等に向け、実施時期の柔軟な検討を促す通知を出したという。

このほか通常理事会では、バス運転者人材の相互受入れ制度「キャリアバス」を発足。運転士が家庭の事情等で転居をした際、転居先でも他社のバス運転士として就労する機会を確保しようとするもの。運転士の減少を少しでも食い止めることを目的に、業界全体で実施する。

その後、国土交通省の物流・自動車局旅客課課長補佐(統括)の村田智紀氏が、令和6年度補正予算、令和7年度予算案の概要を説明。完全キャッシュレスバス化については、大きな経営改善効果や運転士の負担軽減が見込まれると紹介した。主要バス事業者の場合、年間約86.3億円の経営改善効果(試算)があるという。

自民党バス議連会長、「公設民営」にも言及

新年賀詞交換会には、同協会会員のほか、多数の与党国会議員が駆けつけた。自民党バス議連会長の逢沢一郎氏(衆議院議員)は、運転士不足により路線休止・縮小などで国民の生活に影響が出ていることを言及し「運転士の確保には、やはり職場環境の整備、処遇改善が正しい。他の産業分野、職種に比べて遜色がない、むしろインセンティブが働くような状況を確保できるよう、努力を重ねたい」と話した。

自民党バス議連会長の逢沢一郎氏(衆議院議員)

さらに、逢沢氏は「バスは民間事業者が事業として運行している。公共交通の安定的で持続可能な体制を考えたとき、我々も知恵を絞らなければならない」と話し、国や地方公共団体が施設を設置して、運営を民間に委託する公設民営について言及。「バスは不可欠なインフラ。人口減少のなか、特に地方部の生活の利便を踏まえ、こういったテーマにも真剣に取り組んでいきたい」との考えも示した。

元内閣総理大臣の菅義偉氏(衆議院議員・自民党副総裁) や前総理大臣の岸田文雄氏(衆議院議員)など、祝電も多数寄せられた。

日本バス協会新年賀詞交換会の会場の様子

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