観光立国推進協議会は、2025年1月14日、第11回協議会を開催した。観光産業の各業界の取り組みが説明されたほか、4月13日の開幕を控える大阪・関西万博についての進捗状況とともに、各パビリオンの概要、未来社会ショーケース事業、関連イベント、万博を契機とした地方への観光客誘客などの取り組みが紹介された。
観光立国推進協議会とは、観光関係企業・団体が集い、民間セクターとしての方針の策定などおこなう組織。交通、鉄道、宿泊、旅行のほか幅広い産業が連携し、約100団体・企業が参画している。日本観光振興協会が2014年に立ち上げた。
冒頭、協議会の委員長で日本観光振興協会会長の菰田正信氏が挨拶。大阪・関西万博に加えて、2025年は9月に「東京2025世界陸上」、11月に「東京2025デフリンピック」が開催されることから「こうした機会をとらえて、国内需要とインバウンド需要の恩恵を確実に日本各地に行き渡らせるために、国の政策と歩調を合わせて取り組んでいく」と、今年の抱負を話した。
また、菰田氏は日本の観光産業における課題にも言及。「深刻な人手不足に加えて、インバウンドの急増による一部地域での混雑によって地域住民の生活に影響が生まれている」と指摘したうえで、協議会として諸課題について意見交換をおこないながら、さらに観光産業を発展させていく考えを示した。
各業界から、課題解決への提言
協議会では、各業界団体が2024年の状況を説明。日本百貨店協会会長の好本達也氏は、インバウンドの売上が前年比80%増の6000億円超と過去最高になったことに触れたうえで、免税取り扱いのシェアが主要10都市に偏っている点を指摘。地方部のシェアが極端に低かったことから、「地方へのインバウンド誘客が課題」との認識を示した。
日本旅館協会会長の桑野和泉氏は、二次交通の課題やオーバーツーリズムへの懸念をあげたうえで、「宿泊施設が地域と一緒に街づくりをしていく。そのためのルールづくりと検証が大切」と話した。
日本民営鉄道協会会長の原田一之氏は、観光人材について言及。「将来観光を担う若者の育成が重要な取り組みになる。協議会で議論すべきこと」と問題提起した。
日本温泉協会会長の多田計介氏は、能登半島地震で甚大な被害を受けた和倉温泉の復興計画を説明したほか、温泉文化のユネスコ無形文化遺産への登録を改めて提案。「そうなれば、短期間で、インバウンドの地方誘客にもつながる」と強調した。
JAL会長の赤坂祐二氏は、「万博に向けて、交通事業者として安全な輸送を提供していく」としたうえで、航空業界として、訪日6000万人の目標に向けた基幹空港のキャパシティ拡大、万博を契機としたインバウンドの地方誘客に向けた取り組みを加速させていく考えを示した。
大阪関西万博、会期前半に来場を呼びかけ
2025年日本国際博覧会協会副事務総長の髙科淳氏は、大阪関西万博の準備状況について、夢州駅が2025年1月19日に開業するなど「工事はほぼ軌道にのって着々と進んでいる」と説明した。
また、公式参加国パビリオンのテーマも紹介。米国は「共に創出できることを想像しよう」、イタリアは「芸術は生命を再生する」、ウズベキスタンは「知恵の庭」、カタールは「伝統が革新を刺激する」、カナダは「冬が春に変わるとき」、サウジアラビアは「より良い未来のために一緒に」、スペインは「黒潮、二つの国をつなぐ一つの海の中へ」、中国は「自然と共に生きるコミュニティの構築」、ドイツは「循環経済『サーキュラーエコノミー』を体感」、フランスは「愛の讃歌、大胆さとコミットメントへの招待」などとなっている。
未来社会ショーケース事業では、「スマートモビリティ万博」として、会期中、35台の小型EVバスを終日運行するほか、会場アクセス船として水素燃料電池船が旅客輸送をおこなう。また、会場内にモビリティエクペリエンス・エリアを設置し、「空飛ぶクルマ」のデモも実施する。
さらに、会期中、ほぼ全ての参加国がナショナルデーを開催。それに合わせて、各国からビジネスミッションも来日する予定だという。
万博を契機とした地方への観光客誘致については、観光ポータルサイト「Expo 2025 Official Experiential Travel Guides」を通じて取り組みを強化。地域の観光事業者、DMO、旅行会社などからの商品登録は840件ほどに達しているという。
また、ポータルサイトへの登録者数は現時点で2820万人。そのうち350万人が外国人。商品検索だけでなく、予約・決済までおこなえるため、「地域に足を伸ばしてもらえるきっかけになる」と期待する。
このほか、髙科氏は、過去の万博の傾向から、後半から終盤にかけて混雑すると予想されるため、余裕を持って見学するには「前半に来場してもらえれば」と呼びかけた。
観光関係者の新春交流会、菅元首相らが登壇
協議会後に開かれた「観光関係者新春交流会」では、来賓として自民党副総裁の菅義偉元首相が登壇。「インバウンドが日本の経済にとって欠かすことのできない産業に育ってきた」と話したうえで、大阪・関西万博への期待を示すとともに、2027年に横浜で開催される「国際園芸博覧会」についても触れ、「行政、地域、業界が縦割りを超えて、今後の成長にしっかりと取り組んでいかなければならない」と呼びかけた。
また、公明党代表の斉藤鉄夫前国土交通大臣は、「観光は平和産業。観光が産業としての力を発揮すればするほど、みんなが幸せになる。今後、観光を日本一の基幹産業にするべく取り組んでいく」と挨拶した。
さらに、公明党副代表で観光立国推進本部長を務める赤羽一嘉衆議院議員は、6000万人の目標に向けた観光財源に関連して、一人1000円の国際観光旅客税について「日本人がデメリットを受けている」として、その是正を提案した。
このほか、日本旅行業界(JATA)の髙橋広行会長は、国内旅行の活性化に向けてラーケーションについて言及。観光産業の大きな起爆剤になるとして、「各地域でより一層強化してもらえるように働きかけていきたい」と意欲を示した。