航空経営研究所取締役副所長の牛場春夫氏は、2014年2月に開催された「JATA経営フォーラム」で「今後50年の旅行ビジネス」についてのプレゼンテーションに登壇した。牛場氏は、そこに集まった旅行会社の経営者に向けて今後の航空需要予測など将来の航空関連の予測を紹介、そのうえで旅行会社が目指すべき方向性を提案した。
プレゼンテーションで牛場氏は、今後の航空・空港関連の環境変化として以下を紹介した。こうした変化は技術開発が現在進行しているもので、50年後には実現している可能性が高い。牛場氏はこうした例から「旅行業の予約発券手配は機械にとってかわられる。」と警鐘をならした。そして、旅行会社が今後50年後に生き残るキーワードとして「価値創造」を提起。「機械にできないバリューをつくることが重要」との考えを示した。
- 超音速輸送機( SST)によりフライトが2.5時間以内に
- 法人旅行における出張規定がなくなる
- 空港の無人化(IATA目標は2020年までの8割セルフチェックイン化)
- 生体認証による出入国管理の変化
- 技術向上による航空騒音軽減で空港夜間発着枠が緩和
- 発着枠の不足による機材の大型化
- 予約の完全ダイレクトオンライン化
▼2020年には首都圏空港の発着枠が不足
訪日旅行者3000万人の目標に警鐘
また、牛場氏は、まず今後の海外旅行市場を見通すうえで大きな問題となる首都圏空港の発着枠について「2020年頃には不足する」ことを指摘した。これは、国交省が発表している長期需要予測に基づくもので、国内線は日本人の人口減で大きくは増えないものの、国際線は3倍~4倍に増える見込みを立てているもの。国際線では2030年には日本人のアウトバウンドと訪日外国人の座席利用の比率が逆転。牛場氏は「発着枠の問題が解消しない限り、国が目標とする訪日3000万人も難しくなってくるだろう」と語った。こうした状況を受けて、羽田に新たな滑走路をつくる構想などがあるものの牛場氏は管制能力を挙げることを提案。これは、新空港や滑走路などのインフラ構築には時間がかかるため、首都圏上空の航空混雑を軽減することで発着回数を増やせるのではないかという考えだ。
▼数年後には「LCCの概念がなくなる」
2050年はLCCが50%を超える予測も
また、今後10年間で単通路機を利用したLCC路線が拡大していくと予測。LCCの比率は現在の1割弱から、2020年には25%、2030年には40%に、特にアジア路線の成長が著しく2020年には30%、2050年には50%となるだというと語った。そして、牛場氏はLCCという概念自体が「数年先でなくなるのでは」として、LCCとフルサービスキャリアの差がなくなっていく将来を予測した。
(トラベルボイス編集部:山岡薫)