ランニングブームが浸透するなか、世界各地で行われるマラソン大会への参加ツアーが人気だ。例年1万人以上の日本人がエントリーするJALホノルルマラソンをはじめ、ボストンやバンクーバーなど、一定数の参加が見込まれ、一つのマーケットとして定着しつつある。そんな中、最近注目の「ドバイマラソン」へのツアーに参加してみた。砂漠の中の大都市で行われる大会は、国際色豊かで、景観も見事。ひときわユニークな体験となった。 (取材協力:カタール航空)
*写真は折り返し地点のモスク。コースはバージュ・アル・アラブの元を走り抜ける。
▼大会前日にドバイ着、さっそくレジストレーションへ
2015年1月23日開催の大会にむけ、参加したのはカタール航空利用のツアー。大会前日にドバイに入り、翌日ドバイマラソンに参加、その後1日自由に観光を楽しんだのち帰国という、3泊4日のスケジュールだ。
マラソン大会参加といっても、記者がエントリーしたのは、実は4キロのファンラン。歩いても1時間もあればクリアできる距離なので、いたって気楽。全く気負うことなく、まさに観光気分で羽田を出発した。
カタールのドーハ経由で、ドバイに着いたのは大会前日、1月22日の午前。他の参加者と共に空港からバスに乗り込むと、その足で大会のレジストレーション会場に向かった。開発が進むマリーナ地区に設けられた特設会場で、名前を告げ、ナンバーカードをはじめとする参加者用のキットを受け取る。スタッフがてきぱきと処理してくれ、手続きはいたってスムースだ。
この日は午後早くから自由となったため、早速巨大なドバイモールでショッピング。フルマラソンを走る参加者たちは、早めに食事を済ませて就寝と、体調管理に努めていたようだ。
▼150ヵ国から2万4000人が参加
国際色の豊かさが突出、地元参加者は3%
大会当日、参加者はそれぞれのコースに合わせて送迎バスに乗りスタート地点へ。コースは42.195キロのフルマラソンのほか、10キロ、4キロの3種類。いずれもドバイきってのリゾートゾーンともいえる、ジュメイラ・ビーチに沿ってまっすぐ伸びる道路を走る。フルマラソンと10キロは7:00、そして4キロファンランは11:00のスタートだ。4キロコース参加の記者はゆっくり起きて、朝食もしっかりいただき、のんびりと現場へ。
スタート地点はかなりの人だかり。大会スポンサーの様々なブースが並び、無料サンプリングなども行われ、賑わっている。すでに10㎞やフルマラソンを走り終えた人々がくつろぐ姿もあり、お祭りムード全開だ。
集まった人たちを見ると、とにかく国際色豊か。人口約200万人のドバイだが、そのうち地元出身者は1割程度で、あとは外国から働きに来ている人で占められているという。この大会も、中東各国やヨーロッパ、アフリカ、アジア、北米など世界150以上の国の人々がエントリーしており、参加者約2万4000人のうち、ドバイのローカルは3%にも満たない。多くはこの街で仕事をしている在留外国人と思われるが、それにしても、これだけ国際的なマラソン大会は、他にはないのではないだろうか。
▼涼しく快適、コース周りの景観も象徴的
さて、4キロのファンランは、まさに散歩感覚で楽しめた。他の参加者も、記者同様にいかにも気軽な様子。ユニークなコスチュームをまとった人、お揃いのチームユニフォームで走るグループ、ベビーカーを押しながらぶらぶらと歩いているカップルもいる。小学生くらいの子供を連れたファミリーも多く、みんな途中で記念写真を撮ったりしながら笑顔が絶えない。
空は雲一つなく晴れ渡り、気温は17℃くらい。記者は走るというより早歩きをする感じで臨んだが、この涼しさはとても心地よかった。砂漠の中にあり、暑いイメージがあるドバイだが、この時期は想像以上に快適だ。ちなみにフルマラソン参加者が早朝に集まったときには、気温はかなり下がっており、むしろ寒いほどだったという。涼しい午前中の走行で、湿度もほどよく、マラソンには最適な気候のよう。
ビーチ沿いのコースも美しい。街路樹のヤシの木が整然と並ぶ広い道路を進むと、目の前に7つ星ホテルといわれるバージュ・アル・アラブ、そしてジュメイラ・ビーチ・ホテルの姿が現れる。2㎞の折り返し地点には、ピンク色の優美なモスク。 ドバイを象徴するような景観に出会えるルートで、まさに観光を兼ねて楽しめる。フルマラソンでは、さらに王族の豪華な邸宅が並ぶエリアや、豪華リゾートホテル専用に作られた人工島パーム・ジュメイラを望むなど、ドバイのビーチ満喫コースとなる。道路はアップダウンが全くなく、いたって平坦。マラソン初心者にもおすすめできる。
▼4キロ、10キロなら、だれでも参加可能
大会終了後、何人かの日本人参加者に感想を聞いてみた。4キロのファンランに参加した女性は、「友達が走ってみたいというので、参加しました。日頃マラソンとは無縁なのですが、観光ついでに走ってみていい思い出になりました。普通の旅よりちょっと自慢できるかも」と満足そう。女性参加者の多くは4キロや10キロのコースにエントリーしており、気負わずに気楽に参加するスタイルが人気のようだ。
もちろん、フルマラソンに参加した人もいる。多くはホノルルなどほかの大会の参加経験もある人のようだ。たとえば42.195キロを完走した60代の男性によると、「ホノルルよりもおとなしいというか、整然としていますね。文化の違いなのでしょうか。道路は平坦で、日本の多くの大会より走りやすい。気候も良くて楽しかったです。」とのこと。ちなみにこの男性は夫婦でツアーに参加。奥様はファンランにエントリーし、のんびりと散歩感覚で歩くのを楽しんだそうだ。
▼観光プラスαで、ドバイを満喫
今回、日本人の参加は541人(フルマラソン127人、10キロ125人、4キロ289人)と、かなりの数となった。カタール航空が提供したスペシャル料金を利用したツアーが多数出ており、「通常のドバイツアーよりも手ごろ」という理由で、これを利用した参加者も多かったようだ。
マラソン大会自体は、23日の昼過ぎまでにはほぼ終了。このため、大会当日の午後にも、人気の砂漠ツアーなどオプショナルツアーを申し込んでいる人は少なくなかった。特に4キロ、10キロの参加者は、観光がメインで、ついでにちょっと走ってみるという人がほとんどの様子。マラソン大会というイベントに参加することが、旅の動機を後押ししたといった感じだ。実際、記者自身、4キロだけとはいえ自分で走ってみたことで、ドバイをより奥深く体験したような気分になった。これは、通常の観光旅行では得られない満足感かもしれない。
ところで、1月にイスラム国による日本人の人質をめぐる事件が勃発し、今回のドバイマラソンは、世界的にテロに対する緊張感が高まる中、開催された。2万人以上が集まるマラソン大会とあり、警備もかなり厳重なのではと思われたのだが、現場はごく平常モードで、セキュリティチェックで時間をとられるようなことも特になかった。空港や街の中も同様で、生活する人々の表情にも、大きな緊張感は感じられなかった。想像していた以上にのんびりとした雰囲気だったことも、報告しておきたい。
▼日本からドーハへ、1日3便運航のカタール航空
今回ドバイへのツアーで利用したのは、カタール航空。ドーハをハブに、世界125都市以上に就航しており、ドバイへの乗り継ぎも便利だ。日本からドーハへは、羽田、成田、関空の3空港からそれぞれ毎日直行便が運航しており、所要時間は9~12時間。いずれも深夜(早朝)出発し、現地に早朝着というスケジュール。またドーハからドバイへは、1時間10分程度のフライトで便数も多く、国内線感覚で利用できる。
今回のツアーでも、夜中の0:15に羽田を出発、同日10:10には、ドバイに到着。また帰国便は早朝5:30にドバイを出発し同日22:45羽田着と、4日間ながら中3日をたっぷり使える日程だった。
また羽田便利用者には、羽田空港の近くにある天然温泉「平和島」の深夜パックWELCOMEコース(朝食付き)を無料で提供している。とくに羽田から地方空港への乗り継ぎがある場合などは嬉しい特典だ。
- 取材・記事:トラベルライター吉沢博子