日本旅行業協会(JATA)は訪日外国人旅行者2000万人の達成を目前に控えた現状を踏まえ、観光庁に「訪日外国人旅行次のステージに向けた提言書」を提出した。
観光立国の実現には、(1)訪日旅行の持続的な発展と質の向上、(2)地域分散化による地域活性化、(3)訪日客全体を幅広く視野に入れた戦略推進、の3点が重要と示しつつ、現在の実態として特に需要偏在と需給のアンバランス、質や安心・安全の課題などを指摘。需要分散に向けた具体的施策を中心に、以下の5項目を取りまとめた。
このなかで、供給不足問題への対応として「民泊」にも言及。時代の変化やマーケットニーズを的確にとらえ商品化を進めることも重要とし、安心・安全を確保する制度構築や違法行為の根絶を前提に、単に宿泊施設不足を補完するものではなく、旅行商品の多様化を図る観点から検討を進めることが適当との考えを示した。
また「安心・安全」を図る施策に、訪日旅行と関連地上手配取扱事業者の登録制度の確立も盛り込んだ。「質の向上」を担保するものとしてサービスのみならず、災害時に国による情報把握に資することも含め、「観光危機管理体制」を万全にする観点からも、早急な制度導入が必要だとしている。JATAの提言書の各項目とその概要は以下の通り。
【JATA 訪日外国人旅行 次のステージに向けた提言書】
(提言5項目と概要)
1. 需要分散に向けた具体的な施策
訪日需要の急増は制度や外部環境の後押しを受け、初来日者の増加とアジアの主要4市場への依存度を高める形で進んでいることに留意する必要があると指摘。市場環境が変化しても継続して来日するリピーターの拡大とともに「ソースマーケット」「訪問地域」「訪問時期」の3つの分散が必要とし、マーケット分析とそれに基づく情報発信や具体的提案、ローカル・エクスペリエンスなど地域の観光素材の商品化や旅館の利用促進、地域と空港を一体化して強化するアクセス面の施策導入なども提案。
2.逼迫する供給不足問題への対応
安心・安全の制度構築と違法行為の根絶を前提に、旅行商品を多様化する観点での「民泊」の検討や、貸切バスの臨時営業区域特例措置の恒久的な制度化、新たな通訳案内士制度の構築などに言及。
3.MI(ミーティング・インセンティブ)需要の開発
世界規模でのビッグイベント開催に向け、ユニークベニューの対応が遅れているとし、先進各国の活用事例について調査・研究を進め、国内での積極的な活用推進に言及。
4.「安心・安全」を図るための施策
訪日旅行と関連地上手配取扱事業者に対する登録制度の導入と、貸切バスの安全確保の徹底など。
5.「品質認証制度」の活用促進
ツアーオペレーター業界の品質向上と旅行商品の質の向上を目的とする「品質認証制度」のさらなる拡大に向け、国とJNTOの協力のもと、認証会社のメリット充実による活用促進を図る。
(現状認識・課題)
1.次のステージに向けたリピーターの拡大
2.訪日市場の変調と国内での需要偏在からの脱却
3.大都市・ゴールデンルート以外の地域における魅力創出
4.宿泊施設・貸切バス・通訳案内士における需給アンバランスの是正
5.インバウンド消費における持続性・発展性の確保
6.質(CS)の管理・維持