楽天は、宿泊施設対象のビジネス戦略共有会「楽天トラベル新春カンファレンス」(東京会場)を開催し、執行役員トラベル事業長の山本考伸氏が「2016年は顧客満足度向上と、そのための宿泊サービス品質を上げることに注力する」との方針を発表した。
まず短期的には、宿泊サービスの品質改善のため、前年から対策を開始したノーショーや直前キャンセルに対する取り組みを実行。キャンセル料金の取扱ポリシーを変更し、第1四半期中にはオンラインでのカード決済予約に対して楽天が代行徴収を開始する。現地決済の予約にはキャンセル料を徴収するメッセージと決済手段を提示し、予約者が楽天を通して支払えるサービス機能も導入する。カード決済に関しては3月から、事前決済に一本化する予定だ。
宿泊施設と消費者に対するサービスも拡充する。すでに宿泊施設に対してはサポートデスクの電話時間を午前9時から午後9時までに拡充しているが、4月からは予約者向けに24時間のコールセンター対応を開始する。
さらにIT企業として、テクノロジー面でのサポートも強化していく。執行役員トラベル開発部長の星野俊介氏は、2016年のポイントとして(1)シンプルデザイン ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス、(2)総合トラベルサービス、(3)簡単便利な管理画面の3つを提示。
このうち、(2)総合トラベルサービスでは今春、場所や観光地などから行きたい旅行先を探せる観光アプリをリリース。宿泊施設の情報も盛り込む予定で、まずは日本語とインバウンド向けの英語版で開始する。世の中にあるすべてのパンフレットが閲覧できるサイト「PATW」も、同時期のサービス開始を予定している。
また、(3)簡単便利な管理画面では、「毎日見たい管理画面」をキーワードに、様々な機能を盛り込む。その一つとして直近在庫の状況など各種データを様々な見方で可視化するほか、ユーザーの評価の可視化も図り、楽天のみならず、ネット上のすべてのクチコミも一括管理できるようにする予定だ。
こうした戦略は、山本氏がこれまでも示してきた「ベストマッチング」の実現を目指すもの。「ベストマッチング」とは、ユーザーに最適な宿泊施設の情報を提供して最高の旅行を実現することで、「満足度の高い旅行をすれば、次の旅行意欲が高まり、友人にも勧めたくなる。継続的な成長に欠かせない」とその重要性を説明した。実際、楽天のレビューで1~2つ星を付けたユーザーは3~5つ星を付けたユーザーと比べ、その宿泊施設のみならず楽天トラベルの次の利用率が3割ほど減少するという。
そのため、中長期的には旅行意欲を喚起するコンテンツ制作やその拡散にも力を入れる。また、楽天市場を含むグループ全体の利用履歴などのデータも活用。例えば、楽天市場でワインの注文が多いユーザーには、ワインを購入者の利用が多い“自家製ワインが自慢の宿”を紹介するなど、より個人にカスタマイズされたサービス提供に繋げる。このほか、レビューの評価が低いユーザーに対するフォローアップも行ない、改善を図っていく考えも示した。
楽天20周年、エコシステムで複合的価値を提供
代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏はビデオで登壇し、楽天として「2016年は顧客満足度の最大化を目指す」と述べ、品質とサービス向上の施策を強化する方針を示した。特にロイヤルカスタマーに対する付加価値を高め、恒常的なポイント還元を行なう。マーケティング施策については、(1)データ戦略、(2)インバウンド戦略、(3)ユーザー高還元戦略、を中心に説明。このうちインバウンド戦略では海外の楽天トラベルで、予約に対して楽天市場で利用可能なポイント付与などを行なっているほか、中国では訪日前に楽天で購入した商品を訪日中に受け取れるサービスをホテルモントレの3施設と試験的に行なっているという。グループの各サービスで複合的な価値を提供し、利便性と満足度の向上を図る考え。楽天は2016年が20周年の節目であることから、「楽天市場を中心に新しい挑戦をしていく」との意気込みも示した。