シンガポールを拠点とするLCCスクート(TZ)は、今年2016年7月21日から成田/バンコク(ドンムアン)/シンガポール線をデイリー運航で開設する。同社の日本・韓国支社長、坪川成樹氏は成田/バンコク/シンガポール路線について、「タイやシンガポールからの訪日需要が増えているが、他路線と同様に日本人旅客の比率は3〜4割を想定している。シーズンによっては5割近くになるのではないか」と話し、日本人のアウトバウンド需要にも期待感を示した。
今回の路線開設で、同社の成田路線は現在運航している成田/台北/シンガポール線と合わせてダブルデイリーとなる。新規開設される路線は、スクートとノックエア(DD)が設立したバンコクベースのLCCノックスクートが2015年3月に就航を目指していたもの。しかし、ICAO(国際民間航空機関)がタイの航空当局に対して「安全上の懸念(SSC)」を発出したことから、タイ国籍の航空会社はICAO加盟国への定期便の新規就航や増便ができなくなっていた。今回、シンガポール拠点のスクートが代わりにその路線に就航することになった。機材はボーイング787-8(335席)を使用する。
成田/バンコク・ドンムアン線には、同じLCCのタイ・エアアジアX(XJ)が就航しているが、坪川氏はこの点について、新造機であるボーイング787の利点を強調(XJはA330)。さらに、すべての機材にWiFiサービスを導入していることにも触れ、プロダクトでの競争力に自信を示した。
スクートは、今年5月から、SNSやメールに最適なデータ容量(20MB)を通信速度64kbpsで使用可能なWiFiサービスを$5ドルで提供する「ソーシャルライトプラン」を開始している。今後、20機までボーイング787を増やしていくが、全機にこのWiFiサービスを導入する計画だ。
直販比率は30〜40%に伸び、旅行会社との協業強化は継続
坪川氏は現行の成田/台北(桃園)/シンガポール間の日本人旅客需要についても言及。「就航当時は成田/台北間が多かったが、最近では成田/シンガポール間の旅客も全体の30%までに伸びてきた」と明かし、その要因として「旅行会社による商品造成の影響が大きい」と話す。
旅行会社のLCCに対する理解度も深まり、LCC利用の商品も増加。「TZでシンガポールに行き、ラグジュアリーホテルに宿泊する商品も売れている」ようだ。
同社の直販比率は「月によっては40%、平均して30〜40%にまで伸びてきた」。しかし、坪川氏は「旅行会社の存在は依然として大きい」とする。日本では現在のところGDSとしてはインフィニとアマデウスでの発券が可能。今後も旅行会社経由での予約にも力を入れていく考えだ。
札幌線も10月に開設、訪日需要に期待
新しい成田路線に加えて、同社は今年10月1日から札幌/台北/シンガポール線にも週3便で新規就航する。この路線については、訪日需要が強いことから、旅客構成も日本人3割、外国人7割を想定。冬期のピーク時には、チャーターを含めて増便を計画しているという。
現在、FSC(フルサービスキャリア:従来型の航空会社)の運賃が燃油サーチャージの廃止により下がっており、LCCとの運賃差が縮まっている。坪川氏は、この点について、「中型機787の利点を生かし、貨物輸送によって付帯収入を確保する。それによってFSCよりも3〜4割安い運賃を維持できる体制を取っている」と説明する。札幌線の新規開設には、北海道の物産を東南アジアへ運ぶ需要が見込めることも背景にあったようだ。
直近の日本路線搭乗率は85%、既存路線の増強を優先に
搭乗率では、1月〜4月までは成田路線が89%、関西/高雄、バンコク/シンガポール線が81%。日本路線全体では平均85%で、同社全路線の平均搭乗率83.8%を超えている。坪川氏は「日本を含む北アジアは今後も成長が見込めることから、資本投下を続けていくだろう」と明かす。また、2019年7月に20機体制が整った後のネットワーク戦略についても言及。「まずは、東京、大阪、札幌の既存路線の増強が先だろう」と話し、地方路線への展開には慎重な姿勢を示した。
このほか、坪川氏は先ごろ発表があったアジア太平洋地域のLCC8社で組織する「バリューアライアンス」についても触れ、ドンムアン空港でのノックエアとの協業で、タイ国内線への乗り継ぎの利便性が高まると強調した。たとえば、スクートのサイトで、ノックエアのドンムアン発着のフライトもワンストップで予約することが可能になり、フライトが遅延した場合でも、無償で次の便を保証されるようになる。ノックエアは、プーケットやチェンマイなど人気の観光デスティネーションにも路線展開しているため、日本人旅行者にとっても利用価値が高まりそうだ。