2017年2月24日に初めて実施される予定の個人消費刺激策「プレミアムフライデー」の認知度や経済効果について、みずほ総合研究所がこのほど調査結果を明らかにした。
同経済調査部の主任エコノミスト、宮嶋貴之氏のレポートによると「今の段階では導入企業は少なく、経済効果はあまり期待できない」ものの、消費押し上げ効果が最も期待される産業分野は、時間的な余裕が不可欠になる「旅行」という。特に1~2泊の国内・海外旅行で、効果が期待できるとしている。またプレミアムフライデーの過ごし方としては「家族と一緒」「ゆっくり」などがキーワードとして浮かび上がった。
プレミアムフライデーは、毎月、月末の金曜日の早帰りを奨励する取り組みで、2017年2月24日が初の実施例となる。2014年の消費税導入後、弱含みとなっている日本の個人消費を刺激することを狙い、「日本再興戦略2016」の官民戦略プロジェクトの一環として決定。旗振り役は経済産業省で、賛同企業は月末の金曜日、遅くとも午後3時までに社員が仕事を終えられるよう労働環境を整備するとしている。
プレミアムフライデー導入は「予定なし」「わからない」が大多数
みずほ総研では、プレミアムフライデーに関するアンケート調査を行った博報堂、日本生命、日経ビジネス、DeNAトラベル、OZmallのデータをもとに現状を分析したが、同制度の認知度はまだ低い。例えばDeNAトラベルの調査では、「プレミアムフライデーを導入済」「導入予定」は全体のわずか2.2%。OZmallの調査でも「実施される」は3%といずれも低調。どちらの調査でも大多数は「予定なし」「わからない」との回答だった。
また、月末金曜日の早帰りが可能になったとしても、それが消費意欲の向上に結びつくかどうかは未知数だ。「プレミアムフライデーの過ごし方」に関するアンケートでは、上記5社調査のいずれも「自宅でゆっくり」「自宅でのんびり過ごす」「家族と過ごす」などの回答が圧倒的多数を占めた。こうした結果から、みずほ総研では、個人の消費創出効果を狙うには、導入企業の増加と、サービス供給側のキャンペーン実施の拡大が必要と指摘している。
各種アンケートの結果は以下のとおり。
期待される旅行支出増、1~2泊の国内外旅行の好機
一方、「自宅で過ごす」以外の回答例を見ると、「外食」「スポーツ」「旅行」「映画などの娯楽」といったサービス消費に関連する項目が多く、中でも「特に期待が大きいのは旅行」(みずほ総研)としている。例えば博報堂の調査では「旅行」は2位、DeNAトラベル調査では1位だった。旅行は、ある程度、まとまった時間が必要となるため、「プレミアムフライデーにより時間に余裕が生まれることが、旅行意欲を高める一因になりうる」(みずほ総研)と分析する。
博報堂とDeNAトラベルが実施した「旅行の行き先」に関する調査結果では、「1泊1.5日の国内旅行(北海道や沖縄など)」、「2泊2.5日の海外旅行(韓国や台湾など)」を希望する回答が多かった。
普及が進んだ場合は5000億円規模の押し上げ効果も?
みずほ総研では、アンケート結果から想定される旅行パターンに加え、観光庁「旅行・観光消費動向調査」などのデータを使い、一人当たり旅行支出と年間の旅行創出人数を試算。その結果、プレミアムフライデーによる年間の旅行消費押し上げ効果は、普及が進まない場合で2195億~2637億円、進んだ場合で4975億~5976億円となった。
旅行消費押し上げ効果の試算は以下のとおり。
みずほ総研はこの数字について「旅行消費のみの押し上げ効果としては小さくはない。プレミアムフライデーが日本全国で浸透すれば、旅行消費が個人消費を一定程度、下支えする可能性はある」と分析。しかし全般的に、さらなる消費効果を生み出すためには、プレミアムフライデーの認知度アップと、それに伴う働き方の見直しが不可欠としている。
なお、今回の調査に用いられたアンケート実施時期、対象などは以下の通り。
- 博報堂:2016年10月、20~50代の男女800人
- 日本生命:同12月、全年齢の男女9283人
- 日経ビジネス:同12月、全年齢の男女1787人
- DeNAトラベル:2017年1月、25~69歳の男女509人
- OZmall:同1月、全年齢の女性1300人