従来のGDSを超えたトラベルコマースプラットフォームを展開するトラベルポート。新たに「パワー・オブ・プラットフォーム」というコンセプトのもと、「チョイス」「パフォーマンス」「体験」「インテリジェンス」の4つを柱として、旅行流通マーケットをサポートしている。
そのうち、「インテリジェンス」では、オンライン分析ツール「Travelport Competitive Insight (TCI)」を提供し、マーケット動向の分析や未来の需要予測などで旅行ビジネスに貢献している。TCIとは何か。旅行会社がTCIを活用するメリットとは。トラベルポートのグローバル戦略担当責任者のギドー・ファーウェイ氏に聞いてみた。
統合されたデータで市場を分析するTCI
TCIとは、トラベルポートだけでなくセーバー、アマデウス、アバカスなど他のGDSから得られるMIDTデータや商品検索データを活用してマーケット動向を分析するBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールのことだ。
MIDTデータとはMarketing Information Data Transferの略で、GDS経由すべての予約記録をさす。すべてのGDSからの予約データは、どのGDSでも共有できる仕組みになっており、たとえば航空会社などは自社のマーケット分析のためにMIDTデータを購入している。
トラベルポートは今年6月に、まずヨーロッパでTCIをローンチ。すでに多くの旅行会社が導入しているという。現在、同社では日本を含めた他の地域での販売を強化しているところだ。
ファーウェイ氏はTCIの特長について、「最新データだけでなく、さまざまな角度からのデータを統合しているため、自社が展開するマーケットだけでなく、世界のマーケットがどのように動いているかも把握することが可能」と説明する。特定の航空会社、路線、デスティネーション、発着地、座席クラスごとの情報を分析することができるため、「世界での自社の立ち位置が把握でき、それに基づいてビジネス戦略、マーケティング戦略を立てることができるなど、旅行会社の競争力強化に貢献している」と強調する。
TCIで過去のアウトとインの市場を分析
では、TCIによってどういったデータ分析ができるのか。日本のアウトバウンド市場を見てみると、2016年の予約数は前年比3%増。2017年もこれまでのところ同12%増で成長しているという(10月取材時)。デスティネーション別では、韓国、中国、台湾、タイ、米国への予約が引き続き多い。米国については、2017年前半は前年比減だったが、その後その傾向は逆転し、同5%増に。タイは今年19%の成長を示している。
一方、「日本へのインバウド市場の成長は非常に大きい」(ファーウェイ氏)。予約数は2016年が同17%、2017年も同27%増で推移しており、特に台湾、香港、中国の成長率が高い。人数ベースでは韓国。TCIでは空港別の入国状況も把握できるが、それによると、大部分の訪日外国人は成田、羽田、関西から入国。次いで中部、新千歳、那覇、福岡が続く。
過去のデータについては、さまざまなソースから入手可能だが、TCIではMIDIデータから統合した情報として提供しているところに強みがある。
データ分析から来年GWのアウト需要を「洞察」
TCIの大きな特長は、その名が示すようにCompetitive Insight、つまり「競争力を高める洞察力」にある。これに基づき、2018年ゴールデンウィークの需要を予測してみると、2015年と2016年はホノルルが最大のデスティネーションだったが、2018年は同10%減になるという。また、人気が高まるデスティネーションは、英国、香港、フィリピン、韓国など。特に韓国は同7%増と予測している。
低迷が続いていたヨーロッパの予約も伸びると分析され、フランスはこれまでの低迷の反動で増加すると予測された。一方、北朝鮮問題を抱えるグアムの需要は半減。その後、デルタ航空の撤退やユナイテッド航空の大幅減便などが決定したことから、現在その予測はさらに悪化しているものと推察される。
こうしたデータ分析予測から、ファーウェイ氏は「日本人旅行者の趣向は少し変わってきている。旅行会社にとって、適切な旅行先を顧客に勧めるのが大切になってくるだろう。もし私が旅行会社であれば、チャンスを逃さないように、新しい予約が伸びると予想されるデスティネーションの販売を強化する」とコメント。将来への洞察力を使って、競争力を高めることの重要性を指摘した。
リアルエージェントからOTA、外貨両替、観光局まで高い汎用性
ファーウェイ氏は、TCIの活用例としてスペインの旅行会社を挙げた。その旅行会社は、TCIを活用してビルバオ/ドバイ線のマーケット規模と動向を分析し、ビルバオ/マドリッド/ドバイ線の仕入れでエミレーツとの交渉に生かしたという。また、最近では中国路線を多く扱う日本のOTAとも導入に向けて話し合いを持ったという。ファーウェイ氏は「特に他のマーケットにビジネスを広げようと考えているOTAにとって、そのマーケットで何が起こっているか知るうえでTCIは有益」と付け加えた。
TCIは、旅行会社や航空会社などの旅行産業だけでなく、トラフィック動向を知ることでビジネスチャンスにつながる一般企業でも利用価値は高い。また、ファーウェイ氏によると、空港での旅客動向を知りたい外貨両替会社が導入した実績があり、マーケティング活動に生かしたい観光局などからも問い合わせが増えているという。
急速に進むモバイル化に対応するためにもデータ分析は不可欠
このほか、ファーウェイ氏はTCIのデータから見えてくる予約行動についても言及。「世界的にモバイル化が急速に進んでいる。今では多くの消費者が旅行会社にわざわざ出向くことなく旅行の予約を行う。OTAでもモバイルからの予約が増えている」と説明する。特にインバウンド旅行者のあいだでその傾向は強く、「日本に行く前ではなく、到着した後にホテルを予約する傾向が強まっている」と話し、日本の宿泊施設、特に日本のユニークな施設として人気が高まっている旅館に対して、早急なモバイル対策の必要性を指摘した。
ファーウェイ氏は、モバイル対策に加えて、「日本はデータ分析をもっと重視すべき」と提言。「分析されたデータはビジネスを効率化させる。欧米の旅行会社はデータ分析を重視することで、コンバージョンを上げている」と強調する。特にモバイルにおいては、表示画面が限定的なため、PCのように選択肢を多く提案することができない。そのために、消費者は予約数トップの選択肢を求める傾向にあることから、さらにデータ分析が必要になってくるという。
アメリカにHopperというモバイル・オンライン・エージェンシーがある。TCIのユーザーではないが、検索データや価格データを自ら分析し、航空券の価格を予測。それに基づいて、ユーザーに買い時の航空券やデスティネーションをメールで知らせる。現在は英語のみのサービスだが、日本路線も検索予約可能。「多言語化は簡単。もしHopperが日本語化して、日本市場に参入してきたときのことを考えてみほしい」とファーウェイ氏。日本の旅行会社がデータ分析で乗り遅れると、黒船にマーケットを奪われてしまう可能性も低くはない。
トラベルポートはテクノロジー会社。多くのデータサイエンティストがMIDTデータをはじめさまざまなデータの分析を行い、分析後のInsight(洞察力)を旅行会社に提供している。「旅行会社がデータ分析のエキスパートになる必要はない」(ファーウェイ氏)。エキスパートはトラベルポート。そのTCIが旅行会社のビジネスをサポートする。
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記事:トラベルボイス企画部