GDS事業をおこなうセーバートラベルネットワーク日本支社長の中里秀夫氏が、2019年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。
中里氏は、現在の旅行・航空業界において、個人に最適化されたサービスが求められており、その実現のカギとなるのがIATA(国際航空運送協会)が推進する航空の新流通通信規格(NDC)であると説明。同社独自の「Beyond NDC」プログラムなどを通じ、複雑かつ重要な課題を解決していきたいとの想いを明らかにしている。
発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。
2019年 年頭所感 ―NDCの活性化で最適なサービス提供を
新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
観光ならびに旅行産業においてITによるソリューションを提供しておりますGDSとしては、2019年にどのようなテクノロジーが業界に革新的な変化をもたらすのかを楽しみにしています。昨今、ITの進歩とネット販売の浸透に伴って、お客様への期待に応えることが逆に難しくなっています。旅行者は、よりカスタマイズされた旅行のご提案、特徴のあるロイヤルティープログラム、個人の特性に合った使い易いモバイル旅行管理ツールなど、各個人に最適化されたサービスの提供を旅行業界に求めているからです。
旅行業界において、このようなサービスを最適化するためのカギとなるのがIATA(国際航空運送協会)が推進する新流通通信規格(NDC)です。航空会社はこのXMLベースのデータ転送規格により、幅広く豊富なコンテンツをより簡単に表示し、エンドツーエンドの小売および流通プロセスを向上させることによって、旅行商品の販売方法を変えられるようになります。
NDCは、旅行業界に多大な影響を与えることになるでしょう。2020年までには、リーダーボード航空会社(IATAにおいてNDCを推進する航空会社)における間接販売の20%がNDC APIを介して販売されると予測しています。しかしながら、それは間接販売の80%が従来の技術を利用することを意味しています。では、NDCは思ったほど重要ではない、ということなのでしょうか? それはまったく違います。NDCは、旅行業界により良い影響を与える大きな効果をもたらすとみられています。それはまた、従来のGDSとNDCによるマルチ・コンテンツのハイブリッドな世界の実現と、利用についての重要性を意味深いものにしています。
NDCコンテンツがよりパーソナルなサービスを実現する一方、複数のPOSインターフェイスで利用できるようにするためには、コンテンツの集約と利用に関しての標準化が必要になります。今日、いくつかの航空会社がNDC利用の準備を進めていますが、近い将来、デュアル・コンテンツ戦略を準備する必要があります。航空会社のコンテンツが複数のソースを経由してGDSに流れるハイブリッドな環境では、旅行会社や企業にとって、シームレスなコンテンツの集約と統合されたワークフローの構築が不可欠です。また、NDCコンテンツは、予約や集計業務に利用されている旅行会社のシステムにおいても取り扱われる必要があります。
これらが何を意味しているかと言うと、取り扱いの複雑さです。しかし、この複雑さは同時にチャンスをもたらします。航空会社は、旅行者にこれまでにないようなサービスや商品を造成することができ、それらの商品を新しい方法で販売することができるでしょう。また、航空会社は、旅行会社が様々なサービスや商品を組み合わせたり、または単独で販売したりすることを可能とします。このことはシステム連動などの技術面において、その取り扱いに複雑さが増すことを意味し、業界にとって大きな課題だと思われます。
航空会社、旅行会社、GDSなど旅行バリューチェーン全体でのコラボレーションは、業界内での技術的な標準化を可能とし、NDCの導入とスケーラビリティを促します。セーバーでは、“Beyond NDC”というプログラムを立ち上げ、プログラムの参加パートナーと協力してこの複雑さに取り組む中、いくつかの重要な課題が明らかになりました。
- 「NDCによって私のお客様である旅行者が享受する新しい、差別化されたコンテンツとは何であろうか?」
- 「そのために必要なインフラストラクチャーが準備されているか?」
- 「顧客にNDCを利用したサービスを提供するため、現在のシステムに変更を加える航空会社、旅行会社に追加投資ができるだけの余裕があるか?」
NDCという統一規格自体には真の価値がある訳ではありませんが、航空会社、旅行会社、企業、旅行者に価値を提供するために、例えばセーバーが「どのようにNDCを使用するか」に真の価値があると思われます。航空会社は、自社商品のマーケティングと販売のより良い方法を求めるでしょう。旅行会社は、顧客の要求に応えるため、顧客サービスに集中して旅行者にさらに多くのオプションを、しかもシームレスに提供することを望むでしょう。企業は、より高い透明性をもって、自社の出張規定を完全に最適化したいと考えるでしょう。旅行者は、より適切な旅行オプションに関する案内を求めるでしょう。
具体的には、NDCコンテンツの予約、管理、標準化などの複雑なタスクが今後の課題として考えられます。我々セーバーとしては、“Beyond NDC”プログラムでそれらに対する解決策を見出してまいります。
セーバートラベルネットワーク
日本支社長 中里秀夫