JAL、アクセス株の過半手放しGDSブランドを統合、トラベルポートとの共同事業に活路

日本航空(JAL)とトラベルポートは、JALの100%子会社であるアクセス国際ネットワーク(AXS)とトラベルポートの100%子会社であるトラベルポートジャパン(TVPJ)の持ち株会社となる合弁会社を新たに設立することで合意した。持ち株会社の傘下に入った後もAXSとTVPJの両社はそれぞれ独立した法人として継続するが、今年後半には両法人の統合作業を開始する。2018年3月19日、両社は発表の記者会見を行った。

新合弁会社への出資比率は日本航空の33.4%に対しトラベルポートが66.6%を予定。JALは実質的にアクセス株の3分の2を手放すことになり、アクセスはJALの連結対象の子会社ではなくなる。一方で、JALは新合弁会社への出資者として「アクセスの経営に積極的に関与していく」(執行役員国際旅客販売本部長・柏頼之氏)との方針であり、トラベルポート側も「新合弁会社にJALが経営チームを送り込んでくれることを歓迎する」(チーフ・コマーシャル・オフィサー・スティーブン・シュロック氏)と、この方針を受け入れている。

両社の合意では、今後正式に契約締結した上で6月1日に合弁会社を設立することや、新たに日本に特化したカスタマーサポートチームの創設、年内の新たな技術投資、AXSとTVPJのオフィスの速やかな1本化、両社従業員全員の雇用の継続が決まっている。ただし新合弁会社の社名や、AXSとTVPJ統合後の存続会社をどちらにするかなどはこれから詰めることになる。

6月の新合弁会社設立に伴い、AXSとTVPJは統一ブランド「アクセス・トラベルポート(英語表記ではTravelport Axess)」のもとで、日本におけるGDSの運営を開始する。これによりAXSのGDS「アクセス」や、TVPJのGDS「アポロ」と「ガリレオ」のユーザーは各GDSを現在と同様に利用できるのに加えて、アクセス端末からはアポロやガリレオの操作が可能になり、グローバルに展開する業務渡航向け予約・精算管理ツールとの接続・連携や、NDC経由の予約取り扱いなどグローバルな機能を活用しやすくなる。

ただしGDSシステムそのものの統合については「将来はともかく、現時点では考えていない」(柏氏)と慎重な姿勢だ。なお旅行会社との契約は新合弁会社を設立する6月1日以降、順次切り替えを進め「年内には契約更改を終えたい」(柏氏)考えだ。

JAL執行役員国際旅客販売本部長・柏頼之氏

AXSは1991年に日本航空アクセスセンター部から分社独立。1995年からは米国セーバー社と提携関係にあったが、2012年に提携関係を解消。JALグループ100%出資会社に変更したうえで、同年にトラベルポートと技術提携しホストシステムの提供を受けることでアクセスの機能強化を図ってきた。しかし、世界の有力GDSが莫大な投資を行い次々と新製品・新機能を開発するなかで、「ローカルGDSのアクセスが行える投資に限界を感じていたところ、すでに協力関係にあったトラベルポートと一緒にやろうとの話が持ち上がり、今回の合意につながった」(柏氏)。

またトラベルポートは世界的な有力GDSの一つだが、日系航空会社のシェアが大きく言語の壁もある日本市場では、「JAL唯一の推奨GDS」を武器とするアクセスの後塵を拝しておりTVPJが展開するGDSの利用拡大には限界があった。そこで「トラベルポートのやり方を補完できる存在であり、また日本のパートナーとの強い信頼関係を築いている点で敬意を持てる相手だった」(シュロック氏)というアクセスとのジョイントベンチャー実現に動いた。

トラベルポート、チーフ・コマーシャル・オフィサー・スティーブン・シュロック氏

JALの柏氏は2016年の現職就任直後から、同じ年にトラベルポートに入社したシュロック氏と仕事を通じて個人的な面識があり、ロンドンや東京で情報を交換してきたが、そうした面談の中でジョイントベンチャーの構想が徐々に固まり、「1年ほど前から具体的な準備を開始した」(柏氏)。最終的にジョイントベンチャーに踏み切った直接的なきっかけについて柏氏は「Concurに代表されるグローバルな出張精算システムを導入する企業が増え対応を急ぐ必要があった」ことに加え、NDCの登場によりNDC経由のリッチコンテンツ提供に対する航空会社の関心が高まっていた事情を挙げている。

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