米国の元大統領バラク・オバマ氏は在任中、旅行・観光業に多くの貢献をもたらしたことで知られる。業界での彼の人気は、政権交代後も高まるばかりだ。
先ごろスペインで開催されたWTTC(世界旅行ツーリズム協議会)の2019年グローバルサミットにオバマ氏が登壇。世界の観光業の未来に向けた課題や提言を語った。(写真はサミットの様子。左から、オバマ元大統領、インタビューをおこなったWTTC会長兼ヒルトンCEOのクリストファ J. ナセッタ氏)
※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
現トランプ政権では「国境」「壁」「移民規制」といった言葉が前面に出る機会が多く、オバマ氏とは異なる見解をもっているように見えるが、それは別に不思議なことではない。ポピュリズムや移民排斥、外来者嫌いが台頭する状況は、米国のみならずヨーロッパ中で、また他の地域でも散見される。
「英国のEU離脱、米国における政治の混乱、ヨーロッパ大陸でのポピュリズムの高まり――。これらすべては、経済の変化に対する反応であると同時に、自分たちの立場が脅かされているという不安感に起因するもの。同時に”自分たちの国が浸食されつつある”という思い込みがもたらす反応ともいえるでしょう。ですから、本物の壁や精神的な壁を立てることで、自分たちが持っているものや自分の存在を守ろうとするのです」(オバマ氏)。
しかしオバマ氏は、障壁を作ることは世界各地の経済的・文化的問題の解決とはならないと強調する。
「技術や情報がボーダーレスとなっている時代に国境や壁を強く主張すると、失敗するばかりか、人々の間の対立や衝突が激しくなる一方だと私は思うのです」。
旅行・観光業に求められることは?
旅行・観光業が世界各地の経済に多大な貢献をしているにもかかわらず、政府が業界の存在を無視する――。これは、旅行・観光業が抱える不満のひとつだ。
「政府関係者や指導者の関心を観光業に向けたいのであれば、観光業の利点や価値を示すことが最も簡単かつ明白な方法です。なぜなら、現在、世界中のすべての政府関係者の関心は、経済成長の方法や雇用問題の解決策に集中しているのだから」とオバマ氏。
「政府が何をすれば、経済成長の助けになるかをはっきり具体的に説明すること。そして逆に、政府が観光業の妨げとなることを行っている場合には、きちんと意見を述べることも重要です」。
さらにオバマ氏は自身の任期中、ブラジルや中国など経済成長の著しい国からのインバウンド政策としてビザ発給拡大を実践したことも説明。
「これは明確で具体的な例で、ほとんどの政府が取り組むべきこと。重要なのは、わかりやすく絞り込んで議論すること。『観光業を支援してほしい』と一般論を言うだけではいけないのです」と語った。
※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
※オリジナル記事:Barack Obama on Walls, Borders and Tourism
著者:パトリック・ホワイト(Patrick Whyte)氏