観光白書(2019度版)を発表、インバウンド効果で宿泊業従事者数や賃金が1割増、観光地整備はキャッシュレス化を重点

観光庁は2019年6月21日、2019年度(令和元年度)版の観光白書を発表した。2018年の観光動向や講じた施策、2019年度に講じる施策などをとりまとめたもの。今年度は「すそ野が拡がる観光の経済効果」と題したテーマを設け、地方を訪れる外国人旅行者の消費拡大や宿泊業の雇用・生産性向上、オーバーツーリズム(観光地の混雑)などの課題などを広く分析している。

「すそ野が広がる可能の経済効果」分析では、スキー・スノーボードや温泉入浴、各種体験ツアー参加など「コト消費」をおこなう訪日外国人にフォーカス。三大都市圏外の地方を訪れる旅行者(約1800万人)が、三大都市圏のみを訪れる旅行者(約1300万人)の1.4倍に拡大したことに伴い、地方部における訪日外国人旅行消費額のシェアが23.6%から28.5%に拡大し1兆円を超えた点が特徴的だとする。

また、インバウンドの増加に伴い、宿泊業の従業者数が2012年から14.5%増、平均賃金が11.%増、従業者一人当たりの売り上げ金額が13.8%増に拡大。一方で、人手不足のペースの高まりが大きな課題となっていることも明らかにした。

加えて、観光関連産業における投資の動向では、宿泊施設などの建築物工事予定額が大きく拡大し、6年間で9倍の1兆円超えを記録。特に、北海道、近畿、九州では2ケタ増の伸びを示しているとした。さらに、インバウンド需要は観光関連産業のみならず、幅広い業種において全国的な投資を創出している状況もとりまとめている。

観光庁:発表資料より

訪日外国人旅行者の増加が観光地に与える影響としては、各地が活性化する反面、混雑の発生や宿泊料金の上昇などのマイナス面も指摘。アンケート調査では、回答者の約半数が「観光施設の混雑」などを理由に日本人が国内旅行を抑制したとの結果が明らかになっていることから、観光庁ではオーバーツーリズムについて、長期的な視野に立った取り組みを進める方針を改めて明らかにしている。

2019年度の環境整備は「キャッシュレス環境の大きな改善」など

なお、2019年に講じる施策は、(1)外国人が真の意味で楽しめる仕様に変えるための環境整備、(2)地域の新しい観光コンテンツの開発、(3)日本政府観光局と地域(地方公共団体・観光地域づくり法人)の適切な役割分担と連携強化、(4)地方誘客・消費拡大に資するその他主要施策、の4項目で構成。

観光地における環境整備では、多言語対応や無料Wi-Fi整備のほか、キャッシュレス環境の大きな改善などを目指す方針。地域の新しい観光コンテンツでは、地域の文化財の保存・活用促進、美術館や博物館の来館者の満足度向上、国立公園の情報発信強化などを提示した。

一方、日本政府観光局と地域(DMO)の役割分担・連携強化についても主要施策を整理。DMOの役割は、地域における受け入れ環境整備や外国人が楽しめる新たなコンテンツの開発などの着地整備を主体とし、その周知を図る方針。地域の魅力発信やプロモーションについては、日本政府観光局が一元的におこなうことも目指すものとした。

そのほか、地方誘客・消費拡大に関する施策では、主要空港における顔認証ゲートの導入など出入国の円滑化、首都圏におけるビジネスジェットの受け入れ環境改善などを盛り込んだ。

観光白書の概要および要旨全文は以下から参照できる。

「平成30年度観光の状況」及び「令和元年度観光施策」(観光白書)について

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