国連世界観光機関、持続可能な観光に向けて「京都宣言」を採択、国際会議で「京都モデル」の推進を明記

第4回「国連世界観光機関/ユネスコ 観光と文化をテーマとした国際会議」が12月12日と13日の2日間、京都市の国立京都国際会館で開催された。国連世界観光機関(UNWTO)とユネスコの主催のもと、世界約70ヶ国から各国の観光・文化大臣をはじめ関係者延べ約1500人が参加。「将来世代への投資 〜観光×文化×SDGs〜」をテーマに、「文化の継承」「地域コミュニティ」「人材育成」などに焦点を当て、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた観光と文化の力ついて議論が交わされた。

会議では,閣僚級会合や分科会のほかに,門川大作京都市長が特別講演を実施。「地域コミュニティ」「文化」「観光」の理想的な関係を築き,SDGsの達成につなげていく「京都モデル」を紹介した。そのうえで、今後の各国・地域における観光と文化に関する取組指針となる「観光・文化京都宣言」が採択された。

「観光・文化京都宣言」は、この会議の京都開催にあたり設置した専門部会において,宣言に盛り込むべきポイントを取りまとめ,実行委員会の承認を経て,国連へ提案した内容を踏まえて作成されたもので、以下の4つの項目で構成される。

  1. 最先端の文化観光プロジェクトにおける革新的な政策とガバナンスモデルの実践
  2. 文化の伝播と相互理解による観光の質の向上
  3. 地域コミュニティの強化と責任ある観光の推進に向けた観光マネジメントの再構築
  4. 文化観光の持続可能な発展と共有価値のより良い理解に適した能力強化

このうち、3においては、京都の取り組みが評価され,「京都モデル」として活用を推進するべきことと明記された。

この会議に合わせて、京都迎賓館で歓迎レセプションが開催されたほか、二条城や「とっておきの京都プロジェクト」指定エリアの伏見、大原などの各コースに分かれ、エクスカーションツアーも実施された。また、京都市観光協会、京都文化交流コンベンションビューロー、国立京都国際会館で構成する京都世界遺産文化観光促進委員会は、持続可能な文化観光を促進するためのシンポジウムを主催。文化財保護の専門家や世界文化遺産の社寺関係者らによる議論が行われた。

以下に京都宣言の全文を掲載する。

観光・文化京都宣言(全文・仮訳)

1 以下の方法により,最先端の文化観光プロジェクトにおいて,革新的な政策とガバナン スモデルを実践すること

1.1 観光地,企業及び地域住民に測定可能な効果をもたらすために,SDGsに沿った戦略を 取り,革新的な技術を活用するとともに,観光からの利益が文化資源とコミュニティの福祉の 向上に確実に還元されるようにする。

1.2 異文化間の対話,文化の多様性への理解,社会的結束の強化のために,国の枠を超えたパ ートナーシップを促進し,観光部門と文化部門の間で共通の目的を定める。

1.3 有形及び無形の文化遺産を守り,文化的表現の多様性と各文化の固有の価値を促進し,保 護するための措置を強化する。

1.4 文化・自然資源,特にユネスコ世界遺産リストに登録されている遺産の利用における,観 光の成長による悪影響を緩和するための政策を展開するとともに,オーバーツーリズムに関連 した懸念と圧力の高まりに対応するために,季節,地域,時間における観光客の分散化を促す 戦略的な観光地マネジメントシステムを適用する。

1.5 UNWTO世界観光倫理憲章の実行,及びその関連施策,行動規範,ガバナンスシステム の採用により,観光部門における倫理意識を強化する。

1.6 観光,文化及び地域コミュニティの関係を適切にマネジメントすることに関する「京都モ デル」の活用を推進する。

2 以下の方法により,文化の伝播と相互理解による観光の質の向上を図ること

2.1 文化が観光地にもたらす付加価値や,観光商品の多様化,社会経済的発展及び持続可能な 成長を強化するうえでの,歴史的文化遺産と創造性の役割について,ステークホルダーの意識 を高める。

2.2 祭りや教育,意識喚起,文化施設や精神的な施設を通じて,文化の多様性と異文化間の対 話を高く評価する。

2.3 観光の成長の継続,都市化や移住の進展が,文化の伝播にどのように影響しているかの知 見の不足に対処する。

2.4 将来世代に向けて,観光を通じて文化を伝播するシステムを強化するために,伝統的な知 識の実践者や担い手が集う,コミュニティ中心の戦略を創出する。

2.5 UNWTOによる「先住民族観光の持続可能な開発に関する勧告」を実践し,コミュニテ ィ,観光地及び観光事業者間のパートナーシップを拡大し,観光客の責任ある行動を導く。

3 以下の方法により,地域コミュニティの強化と責任ある観光の推進に向けた観光マネジ メントの再構築を行うこと

3.1 最新のノウハウ,デジタルソリューション,包摂的なアプローチを組み合わせたマネジメ ントシステムを確立し,観光客の体験の向上とともに,コミュニティのニーズ,適切な解説及 びフェアトレードを尊重する。

3.2 文化の付加価値,観光客の流れ,利益の公平な分配を図りつつ,文化的投資が成功する環 境を創出するための測定システムを構築する。

3.3 特に女性と若者に関して,イノベーション,地域の起業家精神,創造性,ものづくり及びコ ミュニティの強化を可能にするという観点で,観光地に適した戦略的フレームワークを強化す る。

3.4 地域コミュニティ及び官民の参加を通じて,観光地全体が都市計画及び観光地マネジメン トに関わることにより,日々の生活に根差した伝統と文化的表現の担い手である住民の意見が 確実に反映されるようにする。

3.5 観光事業者や観光客を対象とする,地域の文化的価値及び財産を尊重することを目的とし た,豊富かつ教育的な情報を普及させる。

4 以下の方法により,文化観光の持続可能な発展と共有価値のより良い理解に適した能力 強化を図ること

4.1 持続可能性,起業家精神,スキルマッチング及び総合的な文化観光の競争力へ大きく貢献 する,人材を育成し,人材の維持を奨励する。

4.2 文化観光の魅力と競争力を多様化するために,能力開発のための新しい技術の活用を行う 官民のパートナーシップを支援する。

4.3 クリエイティブ産業と遺産に関する教育,育成及び研究を強化し,それによって新たな雇 用を創出し,文化に通じた専門家を育成するために,観光地,学術界及び民間部門の間の連携 を図る。

4.4 異文化間の対話や,国際協力,平和に貢献する,文化的なテーマに沿った観光ルートに関 する育成課程を提供することにより,観光客の少ない地域における人材と持続可能な開発に投 資する。

4.5 博物館などの文化施設を活用して,観光客と住民の双方を,地域の文化と伝統により深く 関与させる。

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